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WRECKTHERION(仮題)  作者: montana
139/149

白昼夢の続き

 思い出せ、あの刻を……。

 最高の一瞬を!

 さあ、また始めよう。


「おいっ、あれは何なんだっ?」

 とは聞いたものの、きっとエジーネだろうな……! というか何なんだあの仮面は……?

 猫のようなでかい目、口はギザギザの牙を剥き出しにして笑みを浮かべている……!

「……魔物憑きです」

 聖女さまだ、魔物、憑き……?

「それは?」

「よくわからないのです。誰かがイジゲンの扉を開いてから現れたらしい、とは聞きますが……」

 いじ……?

「イジゲン? ってなに……?」

「異なる次元で異次元、あるいは空想的な別世界を意味しますが、この表現が適切かどうかはわかりません」

「どういうこと……?」

「古来の文献からその存在は示唆されており、時の探求者が探ってはいるそうですが……ええ、あの子はそう、魔物憑きだった……」

「あの子……?」

「私たち、私とシュッダーレア共通の友人です。彼女は突如として魔物に取り憑かれ、ちょうどあのような姿になりましたが、あれはまだ未熟、それに位が低い……」

「それは?」

「どうにもあれには位があるらしいのです。いくらか判断材料があるとされており、位が上がると美麗な文様や衣装を身にまとっていたり、体重が異常な値であったり、理解不能な術を使用したりといった特徴が増えていきます。ですがあれはそれ以前の状態……」

「へえ……?」

 まあ現状ですらヤバくないわけもなかろうが、いまならまだ……って感じか。

 しかし、それがよりにもよってなぜエジーネに? まさかあいつ、そういう力を得るためにここへと来たのか……?

「ですが、シュッダーレアが去った今、私の存在もそう長くは保たないでしょう。そうなれば彼女も還ってゆくはず」

「えっ、そうなの?」

 よくわからんが連動している感じ……?

「と、いっている側からお時間ですね。本当にごめんなさい。埋め合わせは必ずいたしますから。お赦し下さい……」

 ……と、聖女さまの姿が砂のように崩れて……。

 よく見た顔が出てきましたねぇ……!

「黒エリ……!」

「むうう……」

 やはりというか、当たり前だが、のっけから不機嫌顔ですねぇ!

「危機感はあまりなかったが、気持ちがいいとはいえない体験だったな……」

「……お前、ニプリャはどうした?」

「どうとは?」

「ちゃんと引っ込んでいるんだろうな?」

「ああ……私は私だよ」

 本当かよ……?

「それより、あの女はいったい?」

「エジーネだろうが、かなり脅威的な状態らしい。とはいえ長続きはしないという話だが……」

 なんか優雅そうに歩いてくるが……好戦的な雰囲気ではなさそうだな……っと、ああ……なんか仮面が溶け始めた……し、出てきた顔はやはりエジーネのものか……!

 なんか肩をすくめているが……。

「……おいっ、なんでお前、こんなところにいるんだよっ?」

 うっ! なんかカーテシーみたいな姿勢で滑ってきたぁっ? 魔術かっ?

「くるか」黒エリは構えている!「迎撃するぞ」

 いや、しかし、そもそも俺たちは……。

「おい、待てっ……」

 躊躇なし、光線撃ったぁ……! って、

「なんだとっ?」

 黒い影……鳥っ? 輪を描いている、黒エリの光線が吸い込まれたっ……?

 なにあいつ、なんでそんな熟練魔術師ですよみたいな感じになっているのっ?

「やめた方がいいわよーっ!」

 なんか叫んでいるが……黒エリがやめるわけもない、しかし……!

「おいっ、やめとけ!」

 無理にでも止めた方がいいだろう!

「む、なぜだ? やるならどさくさ紛れだぞ」

 さらっと凶暴なこといいやがるなぁ……。

「……あいつの魔術だ、タネが割れるまで仕掛けない方がいい」

 黒エリの光線が消えちまっているのはいかにもおかしいし、あいつが単なる防御魔術で済ませるはずがない。絶対に何か特異な効果が備わっているに違いない。

「ではどうする?」

「様子見だが、緩急に気をつけろ。あいつはお嬢様だが、突如として飛び膝蹴りをしたりするからな」

「なに? 肉弾戦が得意なようには見えんがな」

「ケンカか知らんが、友人らしい女生徒の顔面にくらわしていたからな。突発的に何でもしてくると思っておいた方がいい」

 エジーネは優雅に滑ってきて……やや手前で止まったか。

 くそっ、わけのわからんことの連続なのに、肝心のロッキーはどうしたんだ?

「……それで、なぜこんなところにいるんだ、お前は……?」

「なぜって、自身のルーツを探るのは当然でしょう?」

 ルーツ……。

「ここに?」

「いろいろな場所に」

「ふん、この上なくきな臭いな」黒エリ?「帰ろう」

 えっ、いまちょっと話が始まったばかりなんですけれどもよっ?

「でも、ロッキーを止めないと」

「ロッキー?」

「ろっきー?」

 いや、二人して首を傾げるなよ!

「ロッキーを説得しようって話だろ、こいつに構ってもいいことないんだから。で、そうしたら栄光の騎士の弱点を教えてくれるって話だったよな?」

「ああ……そうだったな」

 なんかすげぇどうでもよさそうだなお前……。

「そうそう、そうよ」

 エジーネもまた、なんかわざとらしいし……。

「なんだかつけ狙われていてこわーい! のよ。助けてほしいわぅっ……!」

 なんだっ? 光線、いやっ飛沫、水かっ?

 狙撃だっ! とっさに防御したようだがっ……すげぇ炸裂音だった、直撃したら死ぬぞ!

「危ない! やるわね!」

 黒い鳥ではなかった、見えない壁、のような……? こいつなんかいろいろ習得していないか?

「よくないでござるぅー!」

 あれっ、なんかミズハだ? 無事だったか……こっちへすたすた歩いてくるが……。

「やはりここは危ないでござる……! ろっきぃ殿の様子もおかしく、拙者にはどうしたものか……」

「ど、どうした?」

「乱心しているようでござる……」

「わぅ!」

 まただ、確実にエジーネを狙っているな……! いまは止めないとならんか……!

「待て、ロッキー!」

 仕方ない、割って入るか……! どうか撃たないでくれよ!

「話を……おおおっ?」

 ……っと、なんだ、ぶん投げられた、黒エリか!

「何をしている、巻き込まれるぞ!」

「し、しかし……!」

「わうっ!」

 このままでは……!

「見ろ、いまのところ防御できているではないか。それよりどうするか決める方が先だ」

「先って、すぐに仲裁しないと……!」

「それが難しいという話をしているのだ。そうだな?」

 ミズハは、頷く……。

「止めるならば実力行使になろうが、ろっきぃは拙者の恩人であるし、貴殿らのともがらでござろう。いろいろと気が引けるのでござる……」

「わぅっ!」

 それにしても次弾が早い! 姿は見えん、気配も……よくわからんな? かなり遠いのか? なのにあの威力、精度、連射力、ロッキーの実力のすべてを把握してるわけではないが、それにしても……!

「ふむ、だがそうなるとなるべく傷つけずに捕縛、という形となるだろうが……」

「あぅっ!」

「相手が相応のやり手、しかもこの地の影響を受けての暴走状態ともなれば……困難だぞ」

「わぅっ!」

「拙者は正直、傍観の姿勢がよいかと思うが……」

「あいたっ!」

「うむ、そうだな。そうした方がいい」

 えっ、めちゃくちゃ撃たれている側で出した結論がそれぇ?

 いや、エジーネとはいえ……眼前で見殺しってのも冷酷すぎるだろう……!

 べつにその死を望んでいるわけじゃない。ただ……俺に構わないでいてくれたら……。

「わぅっ!」

 しかし、あいつを敵とほのめかしたのは俺だ、それにミズハにとっても恩人の敵、か……。ロッキーの加勢に出ないだけ温情があるともいえるかも……。

「わぅうっ!」

「……いや、約束があるだろう、栄光の騎士を倒すヒントをもらわないと……」

「そうだが、奴を倒す方法はいくらでもある。手段を選ばなければな」

 えええぇ……?

「いやいや、早くいえよ……!」

「いったろう、手段を選ばなければ、だ。つまり残酷に手を染めることになる。だがこの際だ、やむを得まい」

 残酷……だが、やむを得ない? ここで見殺しにする価値があるって……?

「わぁうっ!」

 ……あっ、エジーネがすっ転んだ!

「やばいっ!」

「待てレク!」

 黒エリの手を掻い潜ってまで前へと出てみたものの……!

 やばいな……!

 射線上に立つとわかる、すげぇ、濃密な気配だ……!

 なにより……!

 俺なんか関係ない……まとめて殺すつもりだっ?

 かつてない一撃がくるっ……!

「レクッ!」

「くるなっ!」

 水流だ、力を逃せばなんとかなるかも、シューターで対抗……って、ないっ?

 そういやないか! シュッダーレアのやつ、どこへやったっ?

「あげるわ」

 うっ、エジーネの手が俺の……手の先に黒い鳥が……!

 こいつ、おかしいと思っていたんだ、なぜ、あの黒い鳥を使わないのか……。

 だが、いずれにせよ……!


 不要因子を、殺せ!


「うおおおォオオオッ……?」


 黒い、光が……!

 まっすぐに……!

 なんだこの……威力、脅威力は……!

 ……違う、単なる破壊の力ではない……!

 致命的な、あるいはそれ以上の、異様な力……!

 しかし一瞬だ、脅威は瞬く間に消え去った……。

 だが、あの明瞭な殺意が消えている……。

 ロ、ロッキィイイイ……!

「ばかなことを!」

 うおっ、引っ張られる!

 黒エリ、か……。

「毒婦に絡め取られ味方を討つなど……」

 だが……。

 いや、しかし……。

 エジーネが、笑っている……。

「うふふふ、あなたの味方は私だけよ……」

「ほざくな」

 黒エリの手が輝く……! が?

「……なんだ?」

 これは……!

「風……?」

 静かに砂をえぐる一筋の風……が、速すぎることもなく、エジーネをめがけている、しかしかわされた、ただ、通り過ぎていった……が、

「うっ?」

 なんだっ? 何も起こっていないが、何かが……?

 通った空間に、何かが起こった、起こっている?

「ああら……なんだかまずいようね。約束の件はシュラッドに聞いてね。またねぇー!」

 えっ、カーテシーみたいな魔術で滑り去っていった……って、シュラッド? って、誰だよっ?

「レクッ、くるぞっ……!」

 なにっ?

「ああっ……?」

 遠目に人影、しかし次の瞬間には側にっ?

 誰だ、ロッキーだっ? しかし、誰だっ?

 見た目が……そっくりだが違うぞっ……? いや、この姿はあのとき見た……!

「ロ、ロッキー……?」

「そう」

 生きていた……無事だったか……!

 しかしなんだっ……この気配はっ……?

 気配の、次元が違うっ……?

 なんなんだ、いったい……! この、輝くような威圧感は……!

「目を覚まそう」

 なにっ、何かが、頭の横を通った?

 う、撃たれた……?

 ロッキーは、微動だにしていないが……?

「貴様……!」

 動くな黒エリ……、ああっ……!

 なんだっ? 何発、何十発? わからん、撃たれたらしい……!

「黒エリィイイイッ?」

 すげぇ、吹っ飛んでいった、が……!

「いいよ」

 ロッキーは一切、動いたように見えない……。

「それでいい。さあ、決闘を再開しよう」

 なに……? 決闘……?

「な、なんの話……?」

「でもいまじゃない。然るべき時に」

 ロッキー? は……投げキッスをし……ミズハの肩をぽんと叩いて、去っていった……が、黒エリが立ち上がった、おいおい戦闘が再開されたぁっ?

「おおいい! やめろっ、マジでやめておけっ!」

 こ、声が届いたか? 目にも留まらぬ攻防があったようにも思えるが……ともかく二人、睨み合っている……!

「やめろ黒エリ! いまやりあってどうする!」

 とはいえ、何か話しているようだが……? ああ、ロッキーが去っていく、戦いは中断したらしい、黒エリが戻ってくる。

 ……しかし、

 しかしだ……、

 こいつは厄介なことになった……。

 エジーネだけではない……。

 あいつの狙いは、俺をも含んでいる……!

 そうだろうよ、あのとき、あいつは俺をも巻き込もうと……いや、

 俺をこそ、狙っていた……!

「なんだか錯綜しているでござるなぁ」

 ミズハだ……。

「なにやらろっきぃとはここでお別れのようでござる。となれば……」

「あ、ああ……パム、ネコビトの話な……」

「そうでござる! あてがなくなったゆえ、そなたについてゆくでござる!」

 ああ……それはいい、好きにしろよ……。

 そんなことはどうでもいい……。

 問題は……。

『おい』

 うわっと通信か、なんだこの!

「ななっ、誰だっ?」

『俺だ』

「俺って誰だよ!」

『青い髪の俺だ』

 ああ、蒐集者のやつか……。

「ああ……生きていたか……」

『ちっ、油断したぜ……! あの野郎、あんな奴がいるとはな……!』

「それで……まだなんか用……?」

『ああ? ジャールトールとかいう奴の弱点を知りたいんだろ?』

 ああ……そうだった、な……。

「そうだ、そのために来たんだ……」

 なんとかロッキーを止めるだけの話だったのに……。

「……何だこのありさまはよ……! さっさと教えろよ……!」

『まあそう怒るな、俺だってこんな祭りになるとは思ってなかったんだ。それにしてもテメーは本当にゴッドスピードなのか? 死ぬほど弱そうだが』

 まーたそいつか!

「知らねーよそんな奴よお……! 俺はレクテリオル・ローミューン、ただの冒険者だっ……!」

『わかったわかった。それで奴のことだが』

 普通に流してんじゃねぇよ! とどのつまりすべて前世がらみって話じゃねーかっ……!

『結論からいえば奴は塩に弱い』

 え……?

 ええ……?

 ……いま、塩っていったよな?

「し、塩ぉ? 塩ってあの調味料の?」

『なめくじと同じだな』

「ま、まじでっ? そんな簡単な攻略法なのっ?」

『ああ。体細胞を破壊し、その分裂を阻害することができる。コアは塩だけでは破壊できんが、その強度が著しく下がるだろう』

「……海にでもつき落とせって?」

『有効ではあるが、その塩分濃度では足りんだろうな。直接ふりかけてやればいい』

 味気ない料理じゃないんだからさ……。

『話は以上だ。さっさとゴッドスピードを呼ぶんだな。さもないと死ぬぞ』

「だからそんな奴しらねーってのよ……!」

『だが役割は同じだ。またな』

 なにぃいい……?

 通信が切れた、ようだが……。

「おい」おおっと黒エリだ「どうした?」

「そいつは俺のセリフだぜ! お前、無茶してんじゃねーよ!」

「ああ……あれは」なんか彼方を見ているが「尋常ではない。聞いたぞ、あれはあなたの客らしいな」

「ああ……そうらしい」

「詳細は知らんが、前世からの延長戦らしいな。あれに勝つには特別な何かが必要だ。尋常ではない力、知識、策略……。評価が変わった。いま、最大の脅威はあの女だ」

 いや、でも、なんでぇ? まじで意味がわからんのだが……。

 そして遠目に手を振っているルクセブラも意味がわからん……。なんでそんな楽しげなんだよ? あれで無事だったんだな……。アンヒ……なんだっけ? あいつもいる。いままでどこにいた?

「まあ……情報は得た。栄光の騎士は塩に弱いんだってさ」

「しお? ソルトか?」

「そうらしい。まあ、また何か起こっても嫌だし、グゥーを呼ぶか。あとシューターも回収したい」

「どこだ?」

 そういやどこだろう……。

 シュッダーレアになったとき捨てられたのかなぁ……。

「たぶん、あの辺かなぁ……」

 それにしても、一転して辺り一帯静かになったな……。ストームメンだのインペリアルだのも撤退したか……。

 あーあ、未知の場所に冒険にきたはずが、けっきょく人間同士のごたごたに巻き込まれてばかりだなぁ……。

 いろいろ助けられたりもしているし、それに関してはとても感謝しているが、見返りを倍くらい要求されている感じ……。

「むっ!」

 うん? どうした?

「あった?」

「ああ……」

 ああ、あったあった……。

 あった……?

 えっ、これっ?

 これええええええっ……?

 おおお俺のシューターがっ?

 超ぶっ壊れちまってるぅうううううっ……?

「うっそぉー!」

「もはや、ただのガラクタだな」

「諸行は無常でござるなぁ」

「ふざけんなよぉおおおおおおおぉ……!」

 まじでふざけんなよぉおおおおぉ!

 どーすんだよ、どーすんのよこれぇ!

 俺の相棒がこんな無残な姿によぉ……! 相棒っていっても、わりとつくったの最近だけどよぉ……!

 なんなんだよぉ……!

 なんなの総じて、なんなんですかぁっ?

 あーあ!

 やってらんねっ!

 あー……。

 なんかほんと、やる気なくなってきた……。

「こんなところで寝るな」

 あーあ、空が青いでやんの。

 今日はここに泊まっちゃおうかな。

 夜には飢えた獣がやってくるぞぉ。でもそのとき対抗手段ないんだもんね。めっちゃ笑える!

「気落ちするのはわかるが……起きないか」

「やだねー……」

 ……なんか襟を掴まれて、引き摺られていく……。

 これはこれで楽チンだが……こうもしていられんか……。グゥーを呼ぼう……。

『おいおいおい、遠目でも地獄絵図だったが、まさか瀕死か?』

「いや、わりと無事だ……。俺はね」

『怪我人がいるのか?』

「俺のシューターが、死んじまった……」

『シューター? あーそう、わかった、いまいくよ』

 お前めちゃくちゃ普通に流すじゃん……?

 あーあ、俺のシューター、こんなガラクタになっちまって……。

 はあ……なんで行く先々でこんな目に遭わないとならないんだ……。

 俺が何かしたか? 前世の野郎が何かしたのか?

 つーかお前ら総じて時空を超えて遺恨残し過ぎじゃねぇ……?

 はあ……いつものギャロップがやってきた……。

 今日はもうよくねぇ? 宿に戻って寝たいわ……。

「よう、思いのほか元気そうだな。さっさと乗れよ」

 ギャロップは速やかに飛び立ち……空をゆく……。

「やややー! このような未来カラクリもあるとはー!」

 ミズハは窓からの景色に大感激らしい。グゥーはうなり、

「また変なのを増やしたな……。というかロッキーだっけ? あの女はどうした?」

「変身して敵になった……」

「はあっ?」

 状況を説明するものの、いっている俺からして何が何やらわからんからな……。

「……なんか、よくわからん展開だな」グゥーはうなる「そもそもどうしてその聖女は巨獣たちを呼んだんだ?」

「シュッダーレアたちが復活するとシン・ガードが飛んでくるから?」

「つまりはシュッダーレアに加勢したってわけだろ。態度はともかく、あまり敵対しているわけじゃあないみたいだな」

「どうだろう……?」

「あのシン・ガードは通称アレス。名前通り軍神の名を冠する」

 名前通りって……知らねぇけれど……。

「だが実際は実働隊員だな。何かをしでかした奴らを始末して回ってるって噂だ」

 あるいは復活がルール違反だってのか……? だとしたらエリは……。

 それにルールっていっても、あのとき……。

「でも、なんか……ギマの部隊を屠ってもいたようだが」

「……へえ?」

「宿の近くでな。最初に出発したときだったから正直チビったよ」

「なに?」

 なにって……なに?

 真剣な眼差しだが……。

「……どういう部隊だ?」

「……いや、それこそなんかかっこいい感じの装備で……銃器のようなものを持っていたぜ」

「宿の側、外界へ? ラグワッチか……」

「なんだそれ?」

「ギマの外界調査部隊だ。姿を消して外界の様子を観察するのが任務だな。定期的に出入りしているらしいが、なぜシン・ガードが……」

「そりゃあ、なんか持ち出し禁止のやつを持ち出したんじゃないか?」

「なにを?」

「知るかよ」

「お前らは彼らに会ったのか?」

「会ったっていうか、姿を見た途端にやられていた」

 グゥーはうなるが……。

「……なんだ?」

「わからん……」

 ええ? けっきょくそれかよ?

「なんだってのよ!」

「なんなんだ、いったい何を……」

 そりゃあこっちのセリフだ……。

 でも疲れた……。

 どっと疲れた……。

 ちょっと寝るわ……。

 ……ああ、俺のシューター……。

 シューター……。

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