白昼夢の続き
思い出せ、あの刻を……。
最高の一瞬を!
さあ、また始めよう。
「おいっ、あれは何なんだっ?」
とは聞いたものの、きっとエジーネだろうな……! というか何なんだあの仮面は……?
猫のようなでかい目、口はギザギザの牙を剥き出しにして笑みを浮かべている……!
「……魔物憑きです」
聖女さまだ、魔物、憑き……?
「それは?」
「よくわからないのです。誰かがイジゲンの扉を開いてから現れたらしい、とは聞きますが……」
いじ……?
「イジゲン? ってなに……?」
「異なる次元で異次元、あるいは空想的な別世界を意味しますが、この表現が適切かどうかはわかりません」
「どういうこと……?」
「古来の文献からその存在は示唆されており、時の探求者が探ってはいるそうですが……ええ、あの子はそう、魔物憑きだった……」
「あの子……?」
「私たち、私とシュッダーレア共通の友人です。彼女は突如として魔物に取り憑かれ、ちょうどあのような姿になりましたが、あれはまだ未熟、それに位が低い……」
「それは?」
「どうにもあれには位があるらしいのです。いくらか判断材料があるとされており、位が上がると美麗な文様や衣装を身にまとっていたり、体重が異常な値であったり、理解不能な術を使用したりといった特徴が増えていきます。ですがあれはそれ以前の状態……」
「へえ……?」
まあ現状ですらヤバくないわけもなかろうが、いまならまだ……って感じか。
しかし、それがよりにもよってなぜエジーネに? まさかあいつ、そういう力を得るためにここへと来たのか……?
「ですが、シュッダーレアが去った今、私の存在もそう長くは保たないでしょう。そうなれば彼女も還ってゆくはず」
「えっ、そうなの?」
よくわからんが連動している感じ……?
「と、いっている側からお時間ですね。本当にごめんなさい。埋め合わせは必ずいたしますから。お赦し下さい……」
……と、聖女さまの姿が砂のように崩れて……。
よく見た顔が出てきましたねぇ……!
「黒エリ……!」
「むうう……」
やはりというか、当たり前だが、のっけから不機嫌顔ですねぇ!
「危機感はあまりなかったが、気持ちがいいとはいえない体験だったな……」
「……お前、ニプリャはどうした?」
「どうとは?」
「ちゃんと引っ込んでいるんだろうな?」
「ああ……私は私だよ」
本当かよ……?
「それより、あの女はいったい?」
「エジーネだろうが、かなり脅威的な状態らしい。とはいえ長続きはしないという話だが……」
なんか優雅そうに歩いてくるが……好戦的な雰囲気ではなさそうだな……っと、ああ……なんか仮面が溶け始めた……し、出てきた顔はやはりエジーネのものか……!
なんか肩をすくめているが……。
「……おいっ、なんでお前、こんなところにいるんだよっ?」
うっ! なんかカーテシーみたいな姿勢で滑ってきたぁっ? 魔術かっ?
「くるか」黒エリは構えている!「迎撃するぞ」
いや、しかし、そもそも俺たちは……。
「おい、待てっ……」
躊躇なし、光線撃ったぁ……! って、
「なんだとっ?」
黒い影……鳥っ? 輪を描いている、黒エリの光線が吸い込まれたっ……?
なにあいつ、なんでそんな熟練魔術師ですよみたいな感じになっているのっ?
「やめた方がいいわよーっ!」
なんか叫んでいるが……黒エリがやめるわけもない、しかし……!
「おいっ、やめとけ!」
無理にでも止めた方がいいだろう!
「む、なぜだ? やるならどさくさ紛れだぞ」
さらっと凶暴なこといいやがるなぁ……。
「……あいつの魔術だ、タネが割れるまで仕掛けない方がいい」
黒エリの光線が消えちまっているのはいかにもおかしいし、あいつが単なる防御魔術で済ませるはずがない。絶対に何か特異な効果が備わっているに違いない。
「ではどうする?」
「様子見だが、緩急に気をつけろ。あいつはお嬢様だが、突如として飛び膝蹴りをしたりするからな」
「なに? 肉弾戦が得意なようには見えんがな」
「ケンカか知らんが、友人らしい女生徒の顔面にくらわしていたからな。突発的に何でもしてくると思っておいた方がいい」
エジーネは優雅に滑ってきて……やや手前で止まったか。
くそっ、わけのわからんことの連続なのに、肝心のロッキーはどうしたんだ?
「……それで、なぜこんなところにいるんだ、お前は……?」
「なぜって、自身のルーツを探るのは当然でしょう?」
ルーツ……。
「ここに?」
「いろいろな場所に」
「ふん、この上なくきな臭いな」黒エリ?「帰ろう」
えっ、いまちょっと話が始まったばかりなんですけれどもよっ?
「でも、ロッキーを止めないと」
「ロッキー?」
「ろっきー?」
いや、二人して首を傾げるなよ!
「ロッキーを説得しようって話だろ、こいつに構ってもいいことないんだから。で、そうしたら栄光の騎士の弱点を教えてくれるって話だったよな?」
「ああ……そうだったな」
なんかすげぇどうでもよさそうだなお前……。
「そうそう、そうよ」
エジーネもまた、なんかわざとらしいし……。
「なんだかつけ狙われていてこわーい! のよ。助けてほしいわぅっ……!」
なんだっ? 光線、いやっ飛沫、水かっ?
狙撃だっ! とっさに防御したようだがっ……すげぇ炸裂音だった、直撃したら死ぬぞ!
「危ない! やるわね!」
黒い鳥ではなかった、見えない壁、のような……? こいつなんかいろいろ習得していないか?
「よくないでござるぅー!」
あれっ、なんかミズハだ? 無事だったか……こっちへすたすた歩いてくるが……。
「やはりここは危ないでござる……! ろっきぃ殿の様子もおかしく、拙者にはどうしたものか……」
「ど、どうした?」
「乱心しているようでござる……」
「わぅ!」
まただ、確実にエジーネを狙っているな……! いまは止めないとならんか……!
「待て、ロッキー!」
仕方ない、割って入るか……! どうか撃たないでくれよ!
「話を……おおおっ?」
……っと、なんだ、ぶん投げられた、黒エリか!
「何をしている、巻き込まれるぞ!」
「し、しかし……!」
「わうっ!」
このままでは……!
「見ろ、いまのところ防御できているではないか。それよりどうするか決める方が先だ」
「先って、すぐに仲裁しないと……!」
「それが難しいという話をしているのだ。そうだな?」
ミズハは、頷く……。
「止めるならば実力行使になろうが、ろっきぃは拙者の恩人であるし、貴殿らのともがらでござろう。いろいろと気が引けるのでござる……」
「わぅっ!」
それにしても次弾が早い! 姿は見えん、気配も……よくわからんな? かなり遠いのか? なのにあの威力、精度、連射力、ロッキーの実力のすべてを把握してるわけではないが、それにしても……!
「ふむ、だがそうなるとなるべく傷つけずに捕縛、という形となるだろうが……」
「あぅっ!」
「相手が相応のやり手、しかもこの地の影響を受けての暴走状態ともなれば……困難だぞ」
「わぅっ!」
「拙者は正直、傍観の姿勢がよいかと思うが……」
「あいたっ!」
「うむ、そうだな。そうした方がいい」
えっ、めちゃくちゃ撃たれている側で出した結論がそれぇ?
いや、エジーネとはいえ……眼前で見殺しってのも冷酷すぎるだろう……!
べつにその死を望んでいるわけじゃない。ただ……俺に構わないでいてくれたら……。
「わぅっ!」
しかし、あいつを敵とほのめかしたのは俺だ、それにミズハにとっても恩人の敵、か……。ロッキーの加勢に出ないだけ温情があるともいえるかも……。
「わぅうっ!」
「……いや、約束があるだろう、栄光の騎士を倒すヒントをもらわないと……」
「そうだが、奴を倒す方法はいくらでもある。手段を選ばなければな」
えええぇ……?
「いやいや、早くいえよ……!」
「いったろう、手段を選ばなければ、だ。つまり残酷に手を染めることになる。だがこの際だ、やむを得まい」
残酷……だが、やむを得ない? ここで見殺しにする価値があるって……?
「わぁうっ!」
……あっ、エジーネがすっ転んだ!
「やばいっ!」
「待てレク!」
黒エリの手を掻い潜ってまで前へと出てみたものの……!
やばいな……!
射線上に立つとわかる、すげぇ、濃密な気配だ……!
なにより……!
俺なんか関係ない……まとめて殺すつもりだっ?
かつてない一撃がくるっ……!
「レクッ!」
「くるなっ!」
水流だ、力を逃せばなんとかなるかも、シューターで対抗……って、ないっ?
そういやないか! シュッダーレアのやつ、どこへやったっ?
「あげるわ」
うっ、エジーネの手が俺の……手の先に黒い鳥が……!
こいつ、おかしいと思っていたんだ、なぜ、あの黒い鳥を使わないのか……。
だが、いずれにせよ……!
不要因子を、殺せ!
「うおおおォオオオッ……?」
黒い、光が……!
まっすぐに……!
なんだこの……威力、脅威力は……!
……違う、単なる破壊の力ではない……!
致命的な、あるいはそれ以上の、異様な力……!
しかし一瞬だ、脅威は瞬く間に消え去った……。
だが、あの明瞭な殺意が消えている……。
ロ、ロッキィイイイ……!
「ばかなことを!」
うおっ、引っ張られる!
黒エリ、か……。
「毒婦に絡め取られ味方を討つなど……」
だが……。
いや、しかし……。
エジーネが、笑っている……。
「うふふふ、あなたの味方は私だけよ……」
「ほざくな」
黒エリの手が輝く……! が?
「……なんだ?」
これは……!
「風……?」
静かに砂をえぐる一筋の風……が、速すぎることもなく、エジーネをめがけている、しかしかわされた、ただ、通り過ぎていった……が、
「うっ?」
なんだっ? 何も起こっていないが、何かが……?
通った空間に、何かが起こった、起こっている?
「ああら……なんだかまずいようね。約束の件はシュラッドに聞いてね。またねぇー!」
えっ、カーテシーみたいな魔術で滑り去っていった……って、シュラッド? って、誰だよっ?
「レクッ、くるぞっ……!」
なにっ?
「ああっ……?」
遠目に人影、しかし次の瞬間には側にっ?
誰だ、ロッキーだっ? しかし、誰だっ?
見た目が……そっくりだが違うぞっ……? いや、この姿はあのとき見た……!
「ロ、ロッキー……?」
「そう」
生きていた……無事だったか……!
しかしなんだっ……この気配はっ……?
気配の、次元が違うっ……?
なんなんだ、いったい……! この、輝くような威圧感は……!
「目を覚まそう」
なにっ、何かが、頭の横を通った?
う、撃たれた……?
ロッキーは、微動だにしていないが……?
「貴様……!」
動くな黒エリ……、ああっ……!
なんだっ? 何発、何十発? わからん、撃たれたらしい……!
「黒エリィイイイッ?」
すげぇ、吹っ飛んでいった、が……!
「いいよ」
ロッキーは一切、動いたように見えない……。
「それでいい。さあ、決闘を再開しよう」
なに……? 決闘……?
「な、なんの話……?」
「でもいまじゃない。然るべき時に」
ロッキー? は……投げキッスをし……ミズハの肩をぽんと叩いて、去っていった……が、黒エリが立ち上がった、おいおい戦闘が再開されたぁっ?
「おおいい! やめろっ、マジでやめておけっ!」
こ、声が届いたか? 目にも留まらぬ攻防があったようにも思えるが……ともかく二人、睨み合っている……!
「やめろ黒エリ! いまやりあってどうする!」
とはいえ、何か話しているようだが……? ああ、ロッキーが去っていく、戦いは中断したらしい、黒エリが戻ってくる。
……しかし、
しかしだ……、
こいつは厄介なことになった……。
エジーネだけではない……。
あいつの狙いは、俺をも含んでいる……!
そうだろうよ、あのとき、あいつは俺をも巻き込もうと……いや、
俺をこそ、狙っていた……!
「なんだか錯綜しているでござるなぁ」
ミズハだ……。
「なにやらろっきぃとはここでお別れのようでござる。となれば……」
「あ、ああ……パム、ネコビトの話な……」
「そうでござる! あてがなくなったゆえ、そなたについてゆくでござる!」
ああ……それはいい、好きにしろよ……。
そんなことはどうでもいい……。
問題は……。
『おい』
うわっと通信か、なんだこの!
「ななっ、誰だっ?」
『俺だ』
「俺って誰だよ!」
『青い髪の俺だ』
ああ、蒐集者のやつか……。
「ああ……生きていたか……」
『ちっ、油断したぜ……! あの野郎、あんな奴がいるとはな……!』
「それで……まだなんか用……?」
『ああ? ジャールトールとかいう奴の弱点を知りたいんだろ?』
ああ……そうだった、な……。
「そうだ、そのために来たんだ……」
なんとかロッキーを止めるだけの話だったのに……。
「……何だこのありさまはよ……! さっさと教えろよ……!」
『まあそう怒るな、俺だってこんな祭りになるとは思ってなかったんだ。それにしてもテメーは本当にゴッドスピードなのか? 死ぬほど弱そうだが』
まーたそいつか!
「知らねーよそんな奴よお……! 俺はレクテリオル・ローミューン、ただの冒険者だっ……!」
『わかったわかった。それで奴のことだが』
普通に流してんじゃねぇよ! とどのつまりすべて前世がらみって話じゃねーかっ……!
『結論からいえば奴は塩に弱い』
え……?
ええ……?
……いま、塩っていったよな?
「し、塩ぉ? 塩ってあの調味料の?」
『なめくじと同じだな』
「ま、まじでっ? そんな簡単な攻略法なのっ?」
『ああ。体細胞を破壊し、その分裂を阻害することができる。コアは塩だけでは破壊できんが、その強度が著しく下がるだろう』
「……海にでもつき落とせって?」
『有効ではあるが、その塩分濃度では足りんだろうな。直接ふりかけてやればいい』
味気ない料理じゃないんだからさ……。
『話は以上だ。さっさとゴッドスピードを呼ぶんだな。さもないと死ぬぞ』
「だからそんな奴しらねーってのよ……!」
『だが役割は同じだ。またな』
なにぃいい……?
通信が切れた、ようだが……。
「おい」おおっと黒エリだ「どうした?」
「そいつは俺のセリフだぜ! お前、無茶してんじゃねーよ!」
「ああ……あれは」なんか彼方を見ているが「尋常ではない。聞いたぞ、あれはあなたの客らしいな」
「ああ……そうらしい」
「詳細は知らんが、前世からの延長戦らしいな。あれに勝つには特別な何かが必要だ。尋常ではない力、知識、策略……。評価が変わった。いま、最大の脅威はあの女だ」
いや、でも、なんでぇ? まじで意味がわからんのだが……。
そして遠目に手を振っているルクセブラも意味がわからん……。なんでそんな楽しげなんだよ? あれで無事だったんだな……。アンヒ……なんだっけ? あいつもいる。いままでどこにいた?
「まあ……情報は得た。栄光の騎士は塩に弱いんだってさ」
「しお? ソルトか?」
「そうらしい。まあ、また何か起こっても嫌だし、グゥーを呼ぶか。あとシューターも回収したい」
「どこだ?」
そういやどこだろう……。
シュッダーレアになったとき捨てられたのかなぁ……。
「たぶん、あの辺かなぁ……」
それにしても、一転して辺り一帯静かになったな……。ストームメンだのインペリアルだのも撤退したか……。
あーあ、未知の場所に冒険にきたはずが、けっきょく人間同士のごたごたに巻き込まれてばかりだなぁ……。
いろいろ助けられたりもしているし、それに関してはとても感謝しているが、見返りを倍くらい要求されている感じ……。
「むっ!」
うん? どうした?
「あった?」
「ああ……」
ああ、あったあった……。
あった……?
えっ、これっ?
これええええええっ……?
おおお俺のシューターがっ?
超ぶっ壊れちまってるぅうううううっ……?
「うっそぉー!」
「もはや、ただのガラクタだな」
「諸行は無常でござるなぁ」
「ふざけんなよぉおおおおおおおぉ……!」
まじでふざけんなよぉおおおおぉ!
どーすんだよ、どーすんのよこれぇ!
俺の相棒がこんな無残な姿によぉ……! 相棒っていっても、わりとつくったの最近だけどよぉ……!
なんなんだよぉ……!
なんなの総じて、なんなんですかぁっ?
あーあ!
やってらんねっ!
あー……。
なんかほんと、やる気なくなってきた……。
「こんなところで寝るな」
あーあ、空が青いでやんの。
今日はここに泊まっちゃおうかな。
夜には飢えた獣がやってくるぞぉ。でもそのとき対抗手段ないんだもんね。めっちゃ笑える!
「気落ちするのはわかるが……起きないか」
「やだねー……」
……なんか襟を掴まれて、引き摺られていく……。
これはこれで楽チンだが……こうもしていられんか……。グゥーを呼ぼう……。
『おいおいおい、遠目でも地獄絵図だったが、まさか瀕死か?』
「いや、わりと無事だ……。俺はね」
『怪我人がいるのか?』
「俺のシューターが、死んじまった……」
『シューター? あーそう、わかった、いまいくよ』
お前めちゃくちゃ普通に流すじゃん……?
あーあ、俺のシューター、こんなガラクタになっちまって……。
はあ……なんで行く先々でこんな目に遭わないとならないんだ……。
俺が何かしたか? 前世の野郎が何かしたのか?
つーかお前ら総じて時空を超えて遺恨残し過ぎじゃねぇ……?
はあ……いつものギャロップがやってきた……。
今日はもうよくねぇ? 宿に戻って寝たいわ……。
「よう、思いのほか元気そうだな。さっさと乗れよ」
ギャロップは速やかに飛び立ち……空をゆく……。
「やややー! このような未来カラクリもあるとはー!」
ミズハは窓からの景色に大感激らしい。グゥーはうなり、
「また変なのを増やしたな……。というかロッキーだっけ? あの女はどうした?」
「変身して敵になった……」
「はあっ?」
状況を説明するものの、いっている俺からして何が何やらわからんからな……。
「……なんか、よくわからん展開だな」グゥーはうなる「そもそもどうしてその聖女は巨獣たちを呼んだんだ?」
「シュッダーレアたちが復活するとシン・ガードが飛んでくるから?」
「つまりはシュッダーレアに加勢したってわけだろ。態度はともかく、あまり敵対しているわけじゃあないみたいだな」
「どうだろう……?」
「あのシン・ガードは通称アレス。名前通り軍神の名を冠する」
名前通りって……知らねぇけれど……。
「だが実際は実働隊員だな。何かをしでかした奴らを始末して回ってるって噂だ」
あるいは復活がルール違反だってのか……? だとしたらエリは……。
それにルールっていっても、あのとき……。
「でも、なんか……ギマの部隊を屠ってもいたようだが」
「……へえ?」
「宿の近くでな。最初に出発したときだったから正直チビったよ」
「なに?」
なにって……なに?
真剣な眼差しだが……。
「……どういう部隊だ?」
「……いや、それこそなんかかっこいい感じの装備で……銃器のようなものを持っていたぜ」
「宿の側、外界へ? ラグワッチか……」
「なんだそれ?」
「ギマの外界調査部隊だ。姿を消して外界の様子を観察するのが任務だな。定期的に出入りしているらしいが、なぜシン・ガードが……」
「そりゃあ、なんか持ち出し禁止のやつを持ち出したんじゃないか?」
「なにを?」
「知るかよ」
「お前らは彼らに会ったのか?」
「会ったっていうか、姿を見た途端にやられていた」
グゥーはうなるが……。
「……なんだ?」
「わからん……」
ええ? けっきょくそれかよ?
「なんだってのよ!」
「なんなんだ、いったい何を……」
そりゃあこっちのセリフだ……。
でも疲れた……。
どっと疲れた……。
ちょっと寝るわ……。
……ああ、俺のシューター……。
シューター……。