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WRECKTHERION(仮題)  作者: montana
137/149

相席しても、よろしいですか?

 あの頃の私はまだいたいけな少女で、はにかみながら……何かを期待しながら、胸を高鳴らせて……そういった。

 青年たる、そのときのあなたはまるで春の湖畔のような雰囲気で……ええ、とても穏やかな表情で本を読んでいた。きっと、とても難しい本だと思う。

 ふと、あなたは私を一瞥した。

 不思議な色の、深い瞳だった。

 私は、私の心はそこに吸い込まれそうになった。

 そんなとき、あなたは僅かに首を傾げて、私にこういったのだ。

「失せろ」


 シュッダーレアという男は何者なのか? 俺の前世くさいが、勝手に入れ替わり、俺はといえば身体的因果が意図しないものに、動きの自由が奪われている、それとも俺があべこべな動きをさせられている? こうなってはもはや訳が分からない……! とにかく理不尽な目に遭っていることだけが確かだ……!

 この状況、シュッダーがぶっ倒されれば解除されるか? それともこいつもろとも俺もやられちまうのか? 蒐集者が現れたが頼っていいものか? 何もかもが分からないし如何ともし難いが……っと、遠目にだ、何やら人影が、こちらへと……?

『聖女さま、あんな輩に構っている場合ではないはず』ゼラテアか『いいえ、邪魔をしてはいけません。好きに戦わせましょう、我々はその隙を突けばよいだけです。他の戦力も現れたことですし、隙の生じる機会もあるのではないかと……』

「……私は戦いたいわけではないし、戦うにしても仲間は選びたい。なるほどあの大男は大した戦力だろうが、あやつの言動にはなんだかとても腹が立った。ゆえに邪魔をしてやろうと思うのだ。つまりはいじわるをするのだ。ふふふ……」

 巨漢はいまだに輝く獣たちを砕き続けている……あれほどの運動量でまだバテないのか。

『えっと、そのっ……あの大男の言動は確かにあれでしょうが、今はどうにか協力をして……』

「嫌だ。邪魔以外はしたくない」

 聖女さまは……なんか、本当に聖女なのか? けっこう自分に正直というか、変なところにこだわるというか、どことなく黒エリに似ているというか、まあ前世みたいだしな……。

 いや、それはいい、それよりこの状況だ、こいつをどう解釈する? この体は俺のものという感覚はある、しかし、なんというべきか動きが滑るんだ、体は自由に動かせるし声も出せるが、動きや言葉の内容がまったく違う、いったいどうすれば解放されるのか……っと、蒐集者が動いた! 気づけば光線がはしっている、しかしこの眼前で曲がったっ……?

「まあ、そうだろうな!」

 だがっ、奴の後方から二輪の車両が来ているっ、何かを発射したかっ、放物線を描いたそれは着弾とともに辺りを灼熱にしたっ……! がっ、炎の支配は一瞬、次の瞬間には消えたっ?

「魂の秘術は便利だが、帰魂の法に対しては無力だ。兵器を使用するならば横着せずに遺物を使用すべきだったな」

 うう……? こいつも野蛮超人のような力をっ……?

 だが、カオスらしい雰囲気もないようだが……?

「……なるほど? よく分からんが、どうやらてめぇ自身も同様らしいな。手榴弾の投擲に失敗して自爆するアホがいるように、てめぇも自らの有効範囲に巻き込まれれば無事じゃあ済まんと」

 なにっ? そうなのかっ?

 なるほど、こいつもないところから生み出された存在には違いない、原理的には今さっき消された攻撃と本質を同じくする……のか?

「おし、そういう作戦でいくからな」

 つーか、なんでいちいち口に出したんだあいつっ? そこは黙ってこっそり狙ってだな……って、上から来るぞっ! ストームメンのやつだ、そういやまだこっちは倒していなかったな! 大量の銃撃、ミサイル! そして蒐集者、二輪の方もだ、各所が展開! 武装が一斉に火を噴くっ……がっ?

 上から前から、しかし、どの攻撃も……こちらまで届いていない……! まるで蒸発したかのように……脅威が消えたっ! どころか飛行機の奴、急転直下! 真っ直ぐ墜落しやがったぞ!

「影響範囲は探れたかな?」

 シュッダーレアは笑うがこいつっ……やはり魔術を戻して無効化することができるらしいっ……? がっ、いつの間にか蒐集者が側まで来ているっ! しかもその姿が次々と増えていく! どんどん消えてもいくがっ……!

「ほう、多少は考えたな。だが……」

 本物は背後か! 高速の、拳が寸前を通り、と思ったらナイフが空を切っている、いやまた素手に戻っていて、この腕をとった! そのまま投げ込まれ! ないっ、この右足が接地している! 逆に勢いを利用、シュッダーが投げ返したぁっ? 蒐集者、地面に頭から真っ逆さま! いや受け身だ! そして構えを取る……って、またすげー数に増えている! 幻覚、幻の類かっ?

「見切ったらしいぜ、範囲は視界だとよ」

 マスクが崩れて顔が見えているが……視界だとぉ? それって見切ったといえるのかっ?

「だが、この体を戻すには相応に集中する必要があるらしいな。つまり、忙しなくしてりゃあ……」

 ……ああ、なんか跳躍してきた、さっきから近づいてきていた奴ら、見たことのない連中、また妙なことに……。騒がしくしていたせいで寄って来ちまったんだろう……。

「……何だてめえら? 邪魔だからすっこんでろよ」

「こう近場で騒がれてはな」六人、どれもがローブ姿だ「修行の妨げとなるゆえ早急に立ち去るがよい」

「知るか、てめえらが消えな」

「時間の無駄か」

 赤いローブの男! の手に炎をまとった剣が、辺りを一閃! 一気に蒐集者の幻が消えた、だが男はやや仰け反る、顔部分に小さな光の盾が……! 複数の幻を引き連れた蒐集者、銃を構えている……!

「……よかろう。では諸君、修行の成果を見せたまえ」

 ローブの連中が一斉に飛び立った、そして宙に浮いている!

「我々はインペリアル・サーヴァント。この地は聖帝の所有である」

 ……なに? インペリアルって、あの皇帝さんのあれだよな……とっ、青ローブの男だ、巨大な水のアーチを形成しつつある!

「運が悪かったねぇ」

 おそらく凄まじい水量の一撃だろうが……奇妙に安心してしまうものか、空から襲いかかる大津波は……こいつ、そして俺には一切、届かない!

「つまらん力だ」シュッダーだ「お前は脳みそを海に忘れてきたのか?」

「……ちっ!」

 今度は黄色いローブの奴、凄まじい放電っ……! 今度は強大な雷撃がくる……かと思ったが、やはりその力が消えちまった。

「なに……なぜっ?」

 奴らから動揺の声が広がる……。

「臆するな」赤ローブだ「発動を防ぐに特化した術者もいる。なるほど高等な使い手のようだが……」

 あっ……赤、ローブの奴が、もの凄い勢いで墜落した! さっき見た力かっ?

「よかったろう、時速二百キロの落下体験だ」シュッダーだ「以前ならば人がこれを体験するには高山に登るか、文明の力が必要だった。歴史を感じないか?」

 だがさすがに強者なのか、よろけながらも立ち上がった、スペシャルだろう、赤い鎧に身を包んでいる……!

「力には背景が必要だ」シュッダーは肩をすくめてみせる「絶大なる破壊力を誇示したがる者は多いが、そういう輩に限って天災の模倣の域を出ない二流に留まる。火山の噴火を、津波を、竜巻きを、超新星爆発の威力を実現してどうする? 何を成せるというのだ」

 妙な価値観だが……? まあ、前世だからか知らないが、いわんとしていることは分からないでもない……か?

「それとも弱者を脅かし、タチの悪い土着神でも演じたいのか? 見下し、見上げられることがお前の望みか? そのために血眼になって修行をしているのか? だがよく考えてもみろ、お前が力の王であることを世界が望んでいると思うのか? 民衆の白々しい眼がお前を迎えるとき、お前は必ず世界を憎むだろう。そういう奴らを俺はたくさん見てきたのだ」

 一瞬で! 赤鎧の眼前にいるっ? 打ち上げ、掌底が入った、敵は真上に吹っ飛ぶ……いや足を掴んだ、振り回す、そして放り投げた先には蒐集者、吹っ飛ぶ赤鎧をかわしこちらへ急接近! パンチか、何か握っている、銃を前後上下逆に握っているっ? スイングのような打撃、空振り直後に連射が! だがシュッダー、俺には当たっていない、いやまだ追撃があるぞ、返しの右裏拳! しかしシュッダーはその腕を取った! 投げるか極めるか、いやっ、握っていたはずの銃がない! 持ち替えたのかっ? 左手にあった、銃撃! は空を切る、蒐集者が宙で回転している、捻り投げで照準をそらしたかっ!

「でぇィイ!」

 シュッダーが吠え、凄まじい蹴り! 砕ける感触! 蒐集者がぶっ飛んで、いやまた足を掴んだ! 片手で地面に叩きつけぇ……ない、離した! 銃撃が地面に突き刺さる! 蒐集者は地面に転がって、構えた……!

「おおお、マジでやるじゃねぇか! あいつ並みの……」

「ぬおおおっ!」

 おおっとさっき吹っ飛ばした赤鎧が跳んで戻ってきている、周囲に火柱をまとっているがっ?

「サラマンダー……! 奴らはあまりに危険だ、いったい退がれ!」

 他の五人は及び腰か? しかしサラマンダーだと? 俺が知っているあいつじゃあもちろんないのだろうが……って、火柱がうねりながらこっちにくる……前に! なんか車両? 二輪のやつ、に赤鎧が弾き飛ばされた!

「邪魔だっつってんだろ、さっきから何なんだてめぇはよ!」

「まったくもって」

 うっ……おおおおおっ?

 デ、デヌメクゥウウッ……デヌメクネンネスかっ!

 側に、いきなり、いつの間に! 見て嬉しい顔じゃあないが、今だけは頼りになるかっ……?

「君に出てこられると困るんだ」

 一瞬だ! デヌメクが多数、いる、周囲を囲まれた! どれもが右手を突き出し、シュッダーは真上に跳ぶ、曲げられたのか光線があらぬ方向に向かっているが、また渦を巻くようにこちらへと追尾して……上っ!

 大きな影……! 獣、ドラゴン、ニーマナ、ティアッ!

「……楽しくなってきたぜっ!」

 シュッダー、真上を、ドラゴンの腹を両足で蹴り上げるっ! すげぇ音、大砲のような! ニーマナティア、バランスを崩した!

「しかし、詰みだ」

 背後から、デヌメクッ!

「お前がな」

 なにっ、鎖! デヌメクに絡みついている! 一瞬で、遠目にっ! 爆発する砂塵! 叩きつけられやがったっ? 対しシュッダーは優雅に着地する……!

 遠くのあれ、新手なのかっ? シュッダーを助けた? 人間かっ? 黒い人影、次は起き上がったニーマナティアにまで鎖が! あの鎖、続く先は、地面の、でかい、口? ドラゴンなのに、徐々に引き摺られている……!

「何だなんだ、次から次へとよっ?」

 蒐集者だ、黒いやつに銃撃したようだが……なんか出てきて盾になった、足の生えた四角い……機械? 丸い、ノコギリらしきものを大量に射出している、それが辺りをでたらめに走っている! さらに出てくるぞ、黒い変な機械? が地面から、液体、酸? 火球、鉄球? なんかいろいろ吐き出している、マジでありゃあ何なんだっ……?

「おいおいおいおい!」

 巨漢だ、まだ聖女さまが生み出した輝く獣たちを砕いているがっ?

「めちゃ面白いことになってんのになんでこんなんなんですかぁー? 俺も混ぜろやい!」

 おっ、逃れた! 獣の濁流より抜け出し、すげぇ速さでこっちへとくる!

「馬鹿野郎、俺の相手なんだよ!」

 蒐集者もだ! ついでに赤鎧までも、炎をまとった槍を携え、これまた突っ込んでくるらしい様子! いや、意地なのか知らないがお前はマジで関係ないだろう、危ねぇから関わるなってのよ……って、走り回っている何かよく分からない奴に翻弄されている、そうこうしている間に一番手は蒐集者だ!

「パーティ会場になっちまったな!」

 蒐集者、ナイフ、光る、伸び縮みするナイフの乱舞が続く、多少は見えるが疾くてヤバいなっ? かわしているのは俺じゃあないが!

「だから俺を混ぜろってよ!」

 次いで巨漢がっ、俺たちの間に腕が突っ込まれっ? 世界が加速しっ……いや! 無事に着地した……か!

「キミタチ……」

 巨漢のでかい手が俺たちの肩にのっている……が! 両者同時に巨漢を殴る、しかし額で受け止められたっ!

「そうそう、分かってんじゃん。おまたせっ!」

 ……でっ、一瞬で! 蒐集者が顔から地面に叩きつけられっ、こっちはこっちで……ぐううっ! 腹に強烈な何かを食らっている……! さっきの腕と違い、痛みがある……! 治癒が追いつかない次元の威力かっ……? しかしこれで判明した、今の状態はレクテリオラのそれとは違う……! 俺は、やはり実際にここにいる!

「よし。お前は本当に強いな」なんだ、遠くへと手を軽く振った?「無自覚なのだろうが、神人の極みに手をつけ始めているらしい」

「シンジン? あー、なんかそういうの聞いたことあるね。まあ、先はあるみたいだよ」

 さっきの黒い奴への合図? あいつはマジで何なんだ?

 胸がある、スタイルからして女? 黒い、禍々しい意匠のドレス、だが顔がっ……! 怪物、トカゲ、猫? そもそも仮面か……? い、いずれにしても……すげぇ造形だが……。

「まーたナオンかい?」巨漢はため息をつく「まあ俺の邪魔しねぇならいいけど……」

「させんさ。向こうは気にするな」

「あーそう、よかった! じゃあそろそろイキますかい!」

 くる、踏み込み、はっ……やいっ!

「オオオッ! 九、打、蹴ろォオオゞッ!」

 あのっ、連打っ? シュッダー越しだからか僅かに見えたぞ! 超高速九連打! 六発まで防御したがっ……! ぐああああっ、俺の、身体までぶっ壊れているっ……! すぐさま治癒はしているようだがっ……ダッ、ダメージはでかいぞ! おそらくだが、師匠のときのやつとは疾さが段違いかっ……!

 それに、五十メートルは吹っ飛ばされた……! ふざけんな、俺が先に死んじまうわっ……! つーか本当にあいつ生身なのかよっ……?

「やはりいいな、クゼツを思い出す」

 そのとき、巨漢がびくりと、したっ……?

「クゼツ……! へえ……そうかい。やっぱ昔の人なんだねアンタァ……」

 うっ……?

 巨漢の気配が……ぐちゃぐちゃなそれが……何か、薄まっていく……?

「さっきいった先の話なんだけどね、キワマラズっていうのがあるらしいんだ」

 そして構え……いや構えていない、両手をだらりと下げて……? 表情が……別人のように……穏やかとも違うが、異様な険しさがなくなっていく……それに、視線が、どこを見ている……?

「ああっ! 待てって、そいつは……!」

 巨漢の連れが慌ててやってきた、やはりヤバいのかっ? まさかカオスパワーとかいうやつっ? キワマラズはあれと相性がいいらしいがっ……?

 ……しかし、巨漢は動かなくなったままで……?

 ぴくりともしない……。

 しなくなった……。

「あーあ……」取り巻きは天を仰ぐ「これ、まーた戻ってこなくなるよ……」

 戻って、こない……? シュッダーはふんと鼻を鳴らした。

「おや、どうしたのだいったい?」

 聖女さまがなんか見物人のような手軽さで輝く獣たちを引き連れやってきて……なんか拾い……? 巨漢に向けてポイと放り投げた……。

 小さな石ころだ? 巨漢の頭にポンと当たったが……?

「あーやめてくださいぃいい!」取り巻きだ「無抵抗な人に攻撃しないでくださいぃいいい!」

 次の瞬間、聖女さまが走った! そしてぴょんと飛び上がりっ、巨漢の頭にチョップをくらわせる!

「ああっ!」取り巻きが立ち阻む!「あにすんだよこのアマ! 無抵抗だっつってんだろ!」

「ふふふー!」聖女さまはなにやら満足そうに笑み「では脱落ということでよろしいのですね?」

「はいはい、こっちは終了ですわ! あとはそっちで勝手にやっててね!」

「ではシッシ! ということですね! ふふー!」

 聖女さま……いや本当にあれ聖女なのかぁ? 意趣返しできてすげぇ満足そうだが……。

 そして取り巻きたちは巨漢を担ぎ……そのまま運んでいく。

「つーか地味にヤバいわこれ……。計画も延期かもなこりゃ……」

「だから本当にクソ強えのと戦わしちゃダメなのよ。すぐ奥義試しちゃうんだから。俺たちいっつも尻拭いだし」

「ちょっとセッキョーしねーとなー」

「いやマジマジ、さすがになー」

 なんか愚痴りながら……あっさり去っていったが……けっきょく何だったんだありゃあ?

「ふん、戻ってこれなくなったか」シュッダーだ「ようやく楽しめる相手かと思ったが……こんな幕切れとはな」

 それにしてもデヌメクとニーマナティアだが……まだ向こうで謎の黒い奴と戦っているらしい……が、言い換えればあのデヌメクとドラゴンが相手になってすら、すぐに決着がつかんということか……。

 そして、ここに残ったのは俺たちと聖女さま、ゼラテアのみ……。

「デヌメクネンネス、生きていたとはな」

 聖女さまも同じ方向を見やり、

「あれは、あの娘はまだ……」

 ふと、こちらを見た。

「なればなおさら、いつまでも顕現しているわけにもいくまい。我々はこの時代の人間ではないのだからな」

 聖女さまの気配が……でかい、などという規模ではない! 周囲、一帯に、広がっていく……!

『あのっ、これはっ! 聖女さまっ?』

「前世が来世へ影響を与えるように、来世の結果もまた、こうして顕現したる我々へと影響を与える。あなたが光源へと至らなかったのも、いいや、至れなかったのもそのせいではないだろうか」

『せ、聖女さまっ……!』

 光源……。

 光源? まさか、もしや、あのっ……?

 おい、あんたらいったい何をどこまで知っていやがるってんだっ……?

「まだ俺とやるつもりか?」

「戦いたくなどない。だが、あなたはこちらの対話の方が好みなのだろうな。しかし……よいではないか、相席くらい」

「なに?」

「あの日、相席をさせてくれなかった」

「なんだと? 何の話をしている」

 なんだ……なんだっ?

「私はお茶を一緒に、あとは少しばかり語り合いたかっただけなのに……」

 うっ……辺りが暗く……?

『ああ……なんてことを、聖女さま……』

 えっ……おおっ?

 うおおおおおおおっ……?

 じっ、上空から、はああっ? 真っ白な、またドラゴン! しっかしデカいぞ! あの邪竜くらいあるっ!

 まだくる、きやがった! 銀色の……巨獣が信じられんほどの速さでこちらへ駆けてくるっ……! 豹のような、獅子のような、帯電している、まさかっ、あれこそがっ……?

 まだだ、まだ! 巨人が! あいつっ、この地で最初に見たあいつじゃねーかっ! かっ跳んできやがった! 向こうで爆発するかのように着地するっ!

「キレた聖女ほど正気から遠いものもないな」シュッダーは笑う「なあ?」

「ええ……正直、身震いしますよ」

 そして……こちらからは!

 ああなんだよクソッ! あんたもこいつ絡みなのかよ!

 ゼ、フォオオオーッ!

「あるいは聞こえているかな、レクテリオル君。ご協力に感謝する」

 お前っ! お前たちは! 何だっつーんだ!

「うーん……」蒐集者だ、生きていたか!「あれっ? なんじゃこりゃああああっ?」

 そりゃ叫ぶわな! 俺だって叫び通しだわ!

「ふふ、よいお茶会にしよう」

 聖女さまは笑顔だが……くわっ! と目を見開いたぁ!

「……これで満足かっ! シュッダーレアッ!」

 ……一瞬の沈黙のあと、シュッダーは肩をすくめてみせ、

「まあな」

 ……そして、笑ったところで……。

 ……巨人がぁ……。

 その巨大な剣を振り被ったぁあああ……!

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