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死神機兵の太陽戦争ー煉獄のプロミネンスー  作者: 小説書こう


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1話太陽のすぐそばで

あぁ、なんて美しいんだ。科学者でもある私には分かる。これが見つかれば世界は技術革新へと至るだろう。まあ、もうすぐ死ぬ私には関係のないことなのだが。


数時間前、宇宙船が事故にあい、爆発した。

そして、幸いなことに船体から投げ出された私は、


"太陽のすぐそば"にいる。


不幸なことだが幸もある。だって"これ"を見つけたのだから。でも、ああ、だが暑い、熱い、暑い、熱い、

宇宙服を貫通して熱が体に突き刺さってゆく。

暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い



そしてーーー。



数十年後、2080年。

 日本領の月面都市アウトラインズ。正確には、国名は18年前に代わりヒノモトと旧時代的な名前に変化している。そして、月面の居住区であり、同時に世界最大の戦場。


 巨大なドームの向こうに地球が浮かんでいる。


「おーい!リーカス!」


声を掛けられ、俺は振り返った。そこには幼馴染のユウマがいた。


「また整備士のおっちゃん手伝ってたのか?」


「困ってたからな!」


「お前、ほんとそういうところ変わらねえよな」


ユウマは呆れたように笑う。俺も笑い返した。

俺にとってかけがいのない平和な日常だった。

少なくとも、この瞬間までは。


俺の名前はリーカス・ソノダ。18歳

ヒノモト宇宙軍所属。

どこにでもいる一般兵だ。

世界はアルテミシウムによって変わった。数十年前、月面で発見された未知の物質。それは核融合を遥かに超えるエネルギーを生み出した。

人類は宇宙へ進出した。だが同時に争いも始まった。

アルテミシウムを保有する国家が世界を支配する。

そんな時代だった。さらに厄介なのはアルテミシウムを使った炉には奇妙な性質があることだ。

人間の神経信号に反応する。

感情が強く高ぶるほど出力が増加するのだ。


"怒り"、"恐怖"、"執念"、"狂気"、"喜び"


それら全てを燃料に変える。その現象は『アルテミス共鳴』と呼ばれていた。だからエースパイロットほど危険だった。強い感情は強い力を生む…そして強い力は人を壊す…

ほとんどの国が狂気的にアルテミシウムを採掘しようとしていた。だが産出する場所もごくわずかだった。そのため戦争も激化した。


その日の訓練を終え、軍施設を出ると、一人の少女が待っていた。


「リーカス!」


彼女は笑顔で駆け寄ってくる。


 ミサキ。


俺の恋人だ。戦争の時代には似合わないくらい明るい人間だった。


「今日も無事でよかった…」


「大げさだな」


「大げさじゃないよ」


そう言いながら彼女は俺の腕に抱きつく。俺は少し照れながら頭を掻いた。


戦争は嫌いだ。人殺しも嫌いだ。

だが彼女と未来を作るためなら。

戦う理由くらいにはなる。


 

"その時は"そう思っていた。

そして、彼女と自宅へ帰宅しようしていた。その時だった。


ビーー!!ビーー!!


軍施設の中から警報が鳴る


「な、なんなの?」


ミサキが俺の腕を強く握る。顔が一瞬で青ざめていた。


「ごめん、ミサキ。俺ちょっと見てくる!」


「え、待ってよ! リーカス!」


彼女の声を背に、俺は施設内に駆け戻った。

この判断が後に間違いだとわかるのはすぐだった。管制室の扉を勢いよく開けると、上官が血相を変えて叫んだ。


「ソノダ!ソ連艦隊が接近中だ!エネルギー採掘基地を狙っている。即時出撃準備!」


「……またかよ」


ソ連はアフガニスタン侵攻で大勝利を収め、発展した大国だった。

俺はロッカールームでフライトスーツに着替え、格納庫へ急いだ。そして、一般的な人型量産機ではあるが自分の愛機である「大和」に乗り込む。


「今日もよろしく頼むぜ」


そう言いコックピットに着席した時だった。胸ポケットの個人端末が震えた。着信相手はミサキだった。


「ミサキ、今は——」


『……リーカス。』


彼女の声は、明らかに震えていた。


『もう、いいよ。』


「……何が?」


『戦う理由言ってたよね。私を守るためだって。

でも私、もう耐えられない。毎回置いていかれて、ただ待ってるだけの毎日……もう嫌。』


外部モニターに、遠方から迫る敵艦隊の光点がいくつも点滅し始めた。


『さよなら。』


嘘だろ……こんな時に?戦う理由がなくなるじゃないか?


『オイ!なにをしているリーカス!?発進ボタンはこちらで押してしまうぞ!』


「そんな!まっ、待っ」


勝手に発射レールが動く。大和のスラスターが咆哮を上げ、月面の格納庫から射出される。胸の痛みを振り切るように、俺は前を見据えた。しかし考える暇はなかった。視界に広がる宇宙空間に、無数の光点が迫ってくる。ソ連の艦隊。そして彼らの量産型人型機「ヴォルク」


「リーカス、右翼だ! 俺がカバーする!」


通信機からユウマの声が飛んできた。奴の機体が俺の隣を並走する。幼馴染の奴は、いつも通り軽口を叩きながらも、的確に援護射撃を入れてくる。

そして、他の仲間たちは——。


「第3小隊、突撃!」


先頭を切ったのはカズキだった。熱血漢で、いつも訓練で俺を振り回す先輩パイロット。


「うおー!行くぞ!」


勇猛果敢に突っ込んでいく。だがその瞬間だった。

ソ連の艦隊から放たれたビームが、無惨にカズキのコックピットを貫いていった。

カズキの機体はアルテミシウム炉など搭載していないただの量産機だった。一度被弾すれば脆く、爆散して月面の塵に溶けていった。

誰かが通信越しに叫んだ。


「リーカス、冷静に!焦るな!」


レイカだった。彼女もリーカスの先輩パイロットだった。確か前にこんなことがあった。基地の食堂で、レイカがコーヒーを淹れながら言った。


「戦争が終わったら、地球の海を見に行きたいわ。あなたも来なさい。……家族みたいにね。」


レイカはまるで自分にはいない母のような存在だった。でもここはやはり戦場だ。次の瞬間にはヴォルク機が急接近して、レイカの機体を破壊していった。


仲間たちの声が、次々と消えていく。ユウマだけがまだ生きていた。


「リーカス!もう撤退だ!お前だけでも生き残れ!」


ユウマの機体が、敵の特攻機に体当たりされながらも俺の背を守るように残る。その直後、ユウマの機体の頭部が爆散する。


「……ユウマ!」


静寂が訪れた。俺の周りには、もう味方の機影がない。ただの量産機同士の戦場で、仲間は全員あっけなくただの人間として死んでいった。その瞬間、俺の中で何かが折れた。


(……死にたくない!)


ミサキに捨てられた。仲間は全員死んだ。守るべきものなど、もう何も残っていない。

それでも——


(俺は、生きていたい!)


ただ純粋な「死への恐怖」が、俺を動かした。アルテミシウム炉などない大和を、限界まで酷使しながら、月面の岩陰とクレーターを縫うように逃走する。敵の索敵網を掻い潜り、被弾を最小限に抑えながら、必死に生き延びるルートを探した。

量産機同士だからこそ、純粋な操縦技術と恐怖による集中力が、わずかな隙を生んだ。ヴォルク数機の攻撃を紙一重でかわし、クレーターの影に滑り込む。

ユウマの最後の言葉が脳裏に蘇る。


「生き残れ!」


背後でソ連艦隊の索敵信号がまだ鳴り響いている。


何時間経っただろう。このクレーターから出たらすぐに撃ち落とされんじゃないか?生きて帰っても脱走兵扱いされるんじゃないか?そんな考えに支配されていた。


その時だった。ライトに照らされてしまった。撃ち抜かれればそれでお終いなのに醜く生にしがみつくようにコックピット内で頭を抱えた。


『ここにいたか!リーカス!』


通信機越しの怒鳴られ慣れた声に俺は頭を上げた。


「へ?」


『よく生きてたな。お前には上から上等な機体が渡されるだろう!!』


「……は?」


リーカスは呆然とした。モニターの向こうには、訓練の時に目撃した上官の重武装の機体が写っている


『聞いているのか!?』


「なんで……俺なんかが……」


震える声だった。

仲間は全員死んだ。


カズキも。


レイカも。


自分だけが逃げ延びた。

そんな人間に与える言葉が、それなのか。


『なんでだと?』


上官の不満な声だった


『生き残ったからだ。』


その言葉はあまりにも単純だった。


『お前以外は全滅した。だからお前しかいない。』


リーカスは返事ができなかった。

確かにその通りだった。英雄だったからではない。活躍したからでもない。ただ生き残った。それだけで。


『回収部隊が来る。大人しく待っていろ。』


通信が切れ、上官のアルテミス炉が積まれた機体が俺を置いて発進した。


再び静寂だけが残った。リーカスはシートに深く沈み込む。ふと、モニターに映る自分の顔が見えた。

酷い顔だった。顔には涙の跡、血走った目、汗で張り付いた髪。

人間の顔じゃなかった


俺は英雄なんかじゃない。ただ死ぬのが怖かっただけの男なんだ俺は



そしてその数時間後。

俺はは月面都市アウトラインズへ帰還した。


だがそこは出撃前とはまるで違う世界になっていた。軍港には損傷した機体が並び、格納庫には帰ってこなかった者たちの名前が映し出されている。


カズキ。


レイカ。


見慣れた名前達が死亡者一覧に並んでいた。

唯一、ユウマは書かれていないことに安堵した。


「ソノダ 二等兵。」


不意の声に振り向く。そこには軍服姿の男が立っていた。見覚えのない将校だった。


「付いてこい。」


「……俺ですか?」


「君だ。」


有無を言わせぬ口調に俺は黙って後をついていくしかなかった。


基地の地下へ。さらに地下へ。

一般兵では立ち入れない区画だった。

重厚な隔壁が幾重にも並び、警備の数も異常。

そして最後の扉が開き、リーカスは息を呑んだ。


巨大な格納庫。

その中心に、一機の大型人型兵器が立っていた。










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