113 金貸しアニマ
「ずびばぜんべじだ……」
俺の頭や顔は、複数のたんこぶと見事に腫れ上がった顔面に変化していた。
キーキさんとラーラさんの絶叫の後、あるお方にお仕置きされ、ステージのど真ん中で大の字に転がされている次第でございます。
顔はやめとけ、ボディにしときな……。
なんて、嫌がらせレベルではなく、それはもう一切の手抜きなど微塵もなくボコボコにされました。
幼気な少女に全く容赦が無いその人は……。
「ったく……あんたは人の秘密をペラペラと……」
「ミーシャやりすぎだよぉお!!」
『ク……クゥウ?』
「人の顔ってここまで変形できるものですのね……」
「まだ喋れるなんて、アルトちゃんタフですねぇ」
『これは中々……』
ソプラが半泣きで治療魔法をかけてくれて、クーちゃんとムートとシアンとパレットさんは、お前生きてんのか? というような表情で俺の顔を覗き込んでいる。
「いっ、今までのご無礼をお許しください! カルロス様! ソプラ様! アルト様!」
「知らなかったんです! 本当に知らなかっただけなんです! お許しください!」
その横でキーキさんとラーラさんが全力でミーシャに土下座を敢行しており、子供達はドン引きでステージの隅で震えている。
「はぁ……こんな事になるから黙ってたのに……2人とも土下座なんかやめて下さい。さっきも説明した通り私はもう王宮近衛兵でも無いし、ソプラも貴族ではありません」
「で……でも……」
「王宮近衛兵のカルロス様と言ったら、歴代最恐と言われ、ドラゴンも全速で飛んで逃げ出す恐ろしいお方だと……」
ちょと待ってください。そんな情報始めて聞いたんですけど? 歴代最恐ってどんだけ恐れられてたんですかミーシャさん……。
「私はミーシャ、ベルンのターカ教会のシスターでそれ以外何者でもありません……いいですね?」
「「は、はい」」
ミーシャのドスの低い声でこれ以上喋るなと釘を刺された2人は、背筋をピンと伸ばして声が裏返るような返事をしていた。
また歴代最恐の一部が出てますよミーシャさん。
「はい、もう大丈夫だよアルトちゃん」
そんな中ソプラの治療魔法が終わり、上半身をむくりと起き上がらせる。
日に日に治療魔法が上達しているのは、普段から俺が訓練でボコボコにされだ後に治療してくれるからなんだけど、リハーサル前なんだからあそこまでボコボコにするのは本当やめていただきたい。
「ありがとうソプラ……ふぅ、死ぬかと思ったよ」
「貴女、頑丈ですわね……うちの護衛兵でも、あそこまでやられれば普通死にますわよ……」
シアンが眉をひくつかせながら、なんとも言えない表情をしている。
「まぁ、確かに死ぬほど痛いし、本当に死にかけてヤバい時もあるけど、ソプラが治療魔法をかけてくれるからね。それに、ソプラの治療魔法を受けてる時は俺の至福のひと時なんだよ」
俺がそう言ってニカッと笑うと、ソプラは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
はぁあん!! そう!! その表情かわいい!! 人前じゃなきゃ抱きしめてしまうほどかわいい!!
「ただの変態ですわね……」
シアンがボソリとつぶやいたあと、会場の出入り口からゾロゾロと人が入ってきた。
サングラスをかけた黒いスーツの怪しい集団のそいつらは、俺たちの前まで歩いてきて止まると、その中から1人の男が出てきた。
「これはこれはシアン様、他皆様もお揃いで……遅くなり申し訳ありません」
「あっ!! なんでお前がここにいるんだ!?」
『ぬ、コイツは』
仰々しくお辞儀をしたそいつは、俺達もよく知っているやつだった。
「それはこちらのセリフだ、まさかお前達が本当に決勝までくるなんて思いもしなかったよ」
目の前現れたのは、キーキさんに借金を負わせた張本人アニマだった!
「あなた達アニマを知っているの?」
シアンがきょとんとした表情で俺を見てくる。
「キーキさんに詐欺で借金させてターカ教会のピアノを奪おうとした下衆野郎だよ!!」
「ふーん……あなたまだそんな事やっていらっしゃるのね……」
シアンは腕を組み、アニマをねめつけた。
「さて? 何のことかわかりかねますシアン様……私はこの国の法に則り、健全な金貸しをやっているだけでございますゆえ……」
アニマは不敵な笑みを浮かべながらシアンに一礼してステージを見回した。
「さて、準備に取り掛かるか……お前ら仕事だ!」
「「「「「「「「ヘィ!!」」」」」」」」
アニマの後ろに立っていた男どもが慌ただしく何かの準備をし始めた。
仕事って俺たちの借金の集金に来たのか!? なんかやつの後ろでガチャガチャと金属音が聞こえる……。
まさか! この前吹き飛ばした対策とか、武器なんかを持ってきたのか!?
くそ!! こんな時にくるなんてふざけんなよ!!
「お前何しに来たんだよ!! 集金には1日早えよ!! 明日優勝して賞金で即返済してやるからサッサと帰れ!!」
「何か勘違いしているようだな、俺がここにきたのは集金の為じゃない、今日のリハーサルの為だ」
「はぁ!?」
「俺は金貸しの他に楽器の貸し出しもしていてね……決勝で使用する楽器を運び込んでいるのさ」
よく見ると男どもは、慣れた手つきで多種多様な楽器を組み立てて次々にステージへ設置している。
「アニマはナカフ随一の楽器コレクターで、金貸しで儲けたお金を使い、ありとあらゆる楽器の最高級品を集めているわ……ここで使用する楽器の殆どはアニマ所有の楽器ばかりなのよ」
「マジかよ……」
金貸しの他にこんな事もやってんのか……確かにナカフでは需要がありそうな仕事だ。コイツ抜け目ねぇな。
あっと言う間にステージには楽器が並び、リハーサルの準備が整ったようだ。
でも、アニマはステージ前の客席にどかりと座り、出て行く気配がなかった。
「おい、楽器の設置は終わったんだろ? さっさと帰れよ」
俺は目障りなアニマに詰め寄って出口を指差した。
今から大切なリハーサルなのにムカつくコイツの顔見ながらなんてできるか!
「ふん、対戦相手の情報も知らんとは呑気なやつだな」
「は?」
アニマは不敵に笑い、足を組み替えて言い放った。
「俺の率いるチーム『暗黒爆鬼』はお前らと明日、同じステージに立つ決勝進出チームなんだよ」
「はぁぁぁああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああああああ!!!?」
お読み頂きありがとうございます!
よろしければブクマや感想、下記の評価☆などをクリックしていただくと大変励みになります!
よろしくお願いします!




