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112/205

112 リハーサルには絶叫をそえて

「すごーい!! おっきー!!」

「ぼくたち明日ここで歌うんだねー!」

「うぅ……もう緊張してきた」

「こら! あんた達騒がないの!!」

「そうよ! おとなしくしなさい!!」

「わー! にげろー!!」


 広いステージを縦横無尽にはしゃぎ回る子ども達を、捕まえ次第容赦なくどつき回していくラーラさんとキーキさん。


 子供達がはしゃぐのも無理はない。俺たちは明日の決勝に備え、リハーサルの為にナカフの湖にあるドーム状の会場に来ているのだ。


「本当凄い建物だよね……湖のど真ん中にこんな大きい建築物を建てるなんて」


『ほほう……ここはよい所だな、他と違って魔力の流れがいい』


「ナカフ・シェリングホールって言うらしいね。……凄い! 築300年は経ってるって書いてあるよ!?」

『クー?』


「古くても綺麗に手入れされていて落ち着いた雰囲気がいいわね。音風が隅々まで行き渡るように作られているし、あんな細部まで装飾なんかもされているし、よくできてるわ」


 確かにここは他と違って空気がいいと言うか、神聖な場所と言うかとにかく心も体も落ち着くような空間だ。


 上を見るとドーム状の屋根は、いくつもの層が中心に渦を巻くように重なり合うような形状で、天候が良ければ屋根が開閉する仕組みがあるようだ。


 内部は中心より奥気味に楕円形の舞台があり、その周りを囲むように客席が屋根近くまで流線型に並んでいた。


 収容人数的には、少し小さくしたシドニーのオ◯ラハウスを彷彿とさせる建物だなぁ。


 正直、こんな素晴らしい所で演るなんて前世でも体験などしたことはない。


 ピアノだって広い所でも精々学校の文化祭の時、体育館で弾いた程度だったしなぁ……。


 やば、ちょっとゾクゾクしてきたかも。


 そんな状況に喜びか緊張かわからない武者震いをしながら、会場を見回していると……。


「貴方達! 何をしているの!!」


 ビックゥ!!


 突然、背後からよく響く甲高い声で怒鳴られた!


「全く!! ここを何処だと思っているの!? 遊ぶなら他へ行きな……あら?」


「あぁ!! すいません! すぐにリハーサ……んんっ!?」

『ぬ?』


「あっ!!」

『クックゥ!!』


「あら?」


 俺とソプラとミーシャが振り返ると、そこには久しぶりに見る緑のクジラに乗ったゴスロリファッション娘と、見知った巨乳メイド様がいた。


「あー!! シーちゃんだー!!」

「シーちゃん!?」

「召喚魔獣のバレーナもいるー!!」

「本当だー!! 握手してー!!」

「あっ!! ちょっと!?」

「コラ!! 待ちなさい!!」


 声に気づいた子供達がゴスロリに群がろうとすると、となりの巨乳メイド様がスルリと前に立ちはだかりニッコリと笑った。


「はいは〜い。みんなごめんねぇ〜今日はシーちゃん、お仕事だから後でねぇ〜」


 止められた子供達はブーブー言いながら、ゴスロリにアピールするように必死に手を振っている。


 そうか、みんなが言ってたシーちゃんってアイツだったのか……。


「シアン様お久しぶりでございます」

「シアン様!! パレットさんお久しぶりです!!」

『クックゥ!!』


 ミーシャとソプラがシアンに歩み寄り、挨拶を交わす。


「カルロス様にソプラじゃない!王前の儀以来ね、お元気そうでなによりだわ」


「まぁ、皆さんお久しぶりでございます」


 パレットさんも俺たちに気がついたようで、深々とお辞儀をすると、それはもうたおやかな部分がけしからん主張をするものだから、子供達もその迫力に押し黙った。


 でかいって凄い。


 まぁ、それはともかく。


「なんでシアンがここにいるんだ?」


「挨拶もないなんて、相変わらず失礼の塊ね!! それに、それはこっちのセリフよ! 今から明日の決勝のリハーサルなの!! シスター服なんか着て何してるのよ!?」


「俺だけ露骨に態度違わなくねぇ!?」


『クックック、お主この娘に相当嫌われておるな』


「半分お前のせいだからな!?」


「全部あなたの態度のせいですわ!!!!」


 シアンが相当ご立腹のようだ。挨拶忘れたのは悪かったけど、そこまで怒らなくてもいいだろうに……。


 あと、パレットさん!! 後ろ向きながら肩震わせて笑わない!! めっちゃ見えてんだからね!?


「私たちもナカフ・ターカ教会合唱団として明日の決勝に出るんです。アルトちゃんはピアノ担当なんですよ」

『クックゥ!!』


「えぇぇええええ!? このガサツを体現しているあなたがピアノを!? アレがどれくらい繊細で高貴な楽器なのか知ってますの!?」


「俺が弾いちゃダメなのかよ……」


 クジラの上からギャーギャー喚き散らかすシアンをあしらいながら話をしていると。


「アルトちゃん? アルトちゃん?」

「どうしてみんなシアン様とそんなに親しくお話してるのかな? それに王前の儀って……?」


「ん?」


 キーキさんとラーラさんが顔を強張らせながら、恐る恐る俺に質問してきた。


 あっ、そうかシアンって貴族だったよね。なんか話しやすいからすっかり忘れてたよ。


「言ってなかったっけ? ソプラは今年の王前の儀にシアンと一緒に選ばれた1人だよ」


「「へっ?」」


「あと、ミーシャは元王宮近衛兵第1隊隊長だった人だよ」


「「へぇっ!?」」


 俺が喋るたびに2人の目がどんどん大きく見開かれていく。面白いな……。


「そんで、今年の王前の儀にでかいドラゴンが出てきて会場がめちゃくちゃになったって言う噂は知ってるよね?」


「うん……それは知って……え?」

「いや……まさか……」


「王前の儀の会場をぶち壊したのが頭の上にいるコイツです」


『ふふん、そんなに褒めるでない』


「褒めてねぇよ!! ってあれ? キーキさん? ラーラさん?」


 なんか2人が目を完全に見開いたまま、口開けて固まっている。


 おーいどしたー? 手を目の前でパタパタしても反応が無い、そこまでビックリする内容だったか?


「ん?」

『どうした?』


 しばらくすると、2人とも何故かゆっくり目を閉じて、めいいっぱい息を吸いこんでいく……。


 そして、肺が膨らみ切った瞬間……一気に解放した。


「「はぁぁぁぁあああああああああああああああああぁぁああぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁあああ!?」」


 2人の驚愕の声は見事なハモリを醸し出しながら、ドーム内に響き渡った。

お読み頂きありがとうございます!


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