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第二十七話  解放

 



 キースが開いたゲートの先に、降り立つ。


 目の前に、敦が全身深い切り傷だらけで、倒れていた。

 手足が変な方向に折れ曲がり、肉から骨が見えている個所もあった。

 黄色い体液だらけで、床にもその体液が広がっている。

 完全に意識がないようだ。


 俺たちは、急いで駆け寄り、蓮が慎重に敦を抱きかかえた。


 俺は、辺りを見回す。

 四方を頑丈な壁で囲われており、一か所だけ小さな窓がある。

 森さんが言ってたように、太陽が見える。

 そこから陽の光が差し込んでいた。

 扉はなく、ゲートだけしか出入り口はないようである。


 運よく、敵は誰一人いなかった。


 ロイに気づかれないうちに、急いでここを脱出し、捕らわれたベガたちを救出しなければならない。

 ここにずっといても、まずいと思い、再度ゲートを開き、キースが安全な場所へと連れて行ってくれた。


 蓮がいつまでも回復を開始しないので、なぜかを問うと、

「回復にフルパワーを使うとロイに居場所がばれる可能性がある」とのことだった。

 でも、一刻も早く回復を開始しないと、敦が死んでしまう。



「これ以上悪化しないように、ゆるやかに回復を行う!

 それなら気づかれることもないだろう。

 俺がここにゲートを作って、地球上の同胞を連れてきて、一緒に敦の回復を行う。

 壮君とキース君で、研究所に行って、捕らわれたベガ種を一気に解放してくれ。

 全員解放が終わったところで、フルパワーで回復を行って、敦と二人でみんなに合流するから!

 行ってくれ!」



 キースが大きくうなずき、研究所へのゲートを開いた。


「蓮君。敦をたのむ!」


 蓮に敦を託して、俺たちは研究所へ向かった。

 ゲートを潜り抜けた先は、研究所の屋上だった。

 キースが説明する。


「研究所は、地上3階、地下5階建てで、ベガが収容されているのは、最下層の地下5階だ。

 大勢の研究員がいるから、戦闘は避けたほうが無難だと思う。

 俺が、スネーク種のレプタリアンに偽装するから壮君は捕らわれた人間ということでいこう。

 ここは、ベガ以外にもありとあらゆる星の生命体を拉致して研究しているイクスの私的機関なんだ。

 倫理的にも外交的にもものすごく存在自体がマズイ機関だから、親父がずっと頭を悩ませてた。

 俺は、いつかこの機関をぶっつぶすチャンスを狙ってたんだ。

 とりあえず、今回は、まず優先的にベガ種を解放する!

 そのあと、他の星の生命体も解放する」


「ちょっと待ってて」とキースはいうと、屋上から階下へ通ずる階段を下って行った。

 しばらくするスネーク種の研究所員が階段を上がってきた。

 俺は、とっさに隠れた。


「壮君! キースだよ! 研究所員の服奪ってきた!

 壮君、拘束具ももってきたから、ちょっとの間だけ拘束させて」


 俺は、キースの言う通りに、後ろでに拘束された。


「じゃあ、地下5階へ移動するよ」


 キースと一緒に、階段を下りていく。

 研究所は、白に統一されており、スネーク、リザード種と思われる宇宙人の多くが研究所の制服に身を包み、忙しそうに働いていた。

 なんだか、人間世界と同じ感じだ。

 ただ、こちらのほうが科学がはるかに発達していて、見たこともない機械がたくさん並んでいた。


 せわしなく動く研究員の他には、戦闘服に身を包んだ警護員がいた。

 俺たちは、戦闘にならないように目をふせて、警護員の横を通り抜けた。


 やっと、エレベーターのところまでやってきた。

 地下5Fを押し、ドアを閉めかけたとき、3人の研究員が入ってきた。


 まずい!!


 3人は、レプタリアンに偽装したキースの顔を見て、何やら話しかけてきた。

 俺には全くわからない言葉だった。


 キースは、適当にうなずいたりして、なんとかうまくごまかしたようだった。


 1Fで、その3人が降りていく。


「なんか、この擬態したスネーク種、偉い人だったみたい。

 適当に返事しといたけど、うまくいってよかったわ。

 こいつがもってるカードキーも権限が高く設定してあるみたいだし、ラッキーだった!」


 キースがうれしそうに、カードキーを見せる。


 ついてる!


 それから誰もエレベーターに乗ってくるものはおらず、地下5階へ無事到着した。


「ここからの警備はすごく厳しいと思う。

 捕らえた星人達が逃げ出さないようにするためにも、監視を厳しくしてる。

 壮君。もし戦闘になった場合は、そのときは頼む!

 俺は、戦いながらベガ種の部屋へ行って、一気に解放する」


「わかった」


 俺は、捕らわれの身を演じながら、廊下を進む。

 確かに警護員の数が3倍に増えている気がした。


 しばらく行ったところで、6人の警護員に制止された。

 何やらわけわからない言葉でキースに話しかけている。


「ここから先は、ネフィリムと特殊研究員以外立ち入り禁止だってさ。

 ベガ種は希少だからね。壮君、ここはもう強行突破しかない!拘束を解くよ!」


「いや、ちょっと待って!!!! ここは俺に任せて!!

 ベガの部屋の道のりを教えて。俺は時を止められるんだ」


「?!」


 キースが目を見張る。

 俺の時間停止の能力に、驚きが隠せなかったみたいだ。


「このまままっすぐいって、左に曲がった突き当りの部屋だよ」


「了解!」


 俺は、静かに口にした。


「――― 時間停止」


 俺は、時が止まった中をキースを抱えて、一気に警護員の間を潜り抜けて、走った。

 ベガの部屋まで、息がもつか。


 研究所は、かなり広大だった。

 左に曲がった突き当りの部屋は、100mほど先だった。

 息をとめながら、俺は全力で空中移動した。


 その100mの間にも警護員が20人近くいた。

 ようやくドアの前までつき、一息つく。

 時間が動き出した瞬間、また俺は、「時間停止」した。


 20人近くいる警護員を黒い炎で締め上げ、抹殺した。

 これでほんの少しの時間稼ぎができるだろう。

 俺は、大きく息を吸った。

 時が流れ出す。


 キースが、目の前の光景を見て驚いた。


「時を止めてる間に、倒したのか・・・。無敵じゃねーか・・・」


「息止めてる間だけっていう制限あるけどね。

 キース、急ごう。この事態が警護にばれるのは時間の問題だ。

 ベガ種を解放するんだ!」


 カードキーを差し込む。

 思い扉が横にスライドして開いた。


 部屋の中は、薄暗く、個室がずらりと並んでいた。

 その個室の一つ一つにベガが監禁されているようだった。

 ドアには、暗証番号がありカードキーを差したただけでは、残念ながら開かない仕様だった。

 ただ、幸運なことに、この部屋には誰もいなかった。


「壮君。何か策ある?」


 しばらく、穏便にすませる方法がないか考えてみたが。


「・・・ない! 強硬手段だ!」


「ラジャー!!!!」


 そういうと、キースはネフィリムの姿に変貌した。

 まだ幼いこともあり、体は敦より小さかったが、やはりネフィリムである。

 3m級の怪物だった。

 大きな鋼のような爪で、ベガが捕らわれている部屋のドアを切り裂き、強大なパワーでドアを引きちぎり剥いでいく。


 俺は、そのパワーに圧倒された。

 中にいたベガ種が驚いて、壁のほうへと逃げた。


「大丈夫ですか?! 助けにきました!!」


 言葉が残念ながら通じず、ベガ種はおびえている。


「どうしよう・・・。」


 コミュニケーションが取れずに、俺たちが襲ってる側と思われているのかもしれない。

 悩んだ末に、思い出した。

 蓮にテレパシーで伝えよう!


 俺は、意識を集中させる。

 キースが、片っ端からドアを破壊する中の集中は大変だったが、なんとかテレパシーで蓮と会話できた。


(( 蓮!! ベガの部屋まできて、今どんどん解放してるよ! もうフルパワーで敦を回復してくれていいよ。))


(( 壮君! ありがとう! 今地球上のベガ種も集まってきてくれたんだ。これから回復にうつる。

 ベガの部屋へのゲートを壮君作っといて! ))


(( オッケー! できたらまた連絡する!! ))



 俺は、意識を集中して、ゲート設置を試みる。

 ゲートが完了するまでには、10分くらいを要する。


 ドアを破壊しているのを捕らわれたベガたちは、解放しようとしていると理解してくれたのか、ようやく外にでてきてくれた。そして俺の体の中にあるベガの細胞を感知したのか、100人近いベガが俺のゲート作りを手伝ってくれて、一瞬でゲートが完成した。


「やった!!!!」


 俺は、小躍りして喜んだ!


(( 蓮! ベガのみなさんが助けてくれて、ゲート完成! いつでも合流可能だよ! ))


(( 敦の回復も終了した! 今からそっちに合流する! ))


 俺が開いたゲートから、蓮と敦と蓮の両親を含む十数名のベガ種の方々がやってきた。


 その場にいたベガ種から歓声のようなものがあがった。

 中には、抱き合って喜ぶものもいた。


 よかった・・・。

 ほんとに、よかった。


 喜ぶベガたちをみて、俺はほっと胸をなでおろした。


「敦! 大変だったね・・・」


 静かに佇む敦に、俺は恐る恐る声をかけた。

 体は元気になっていたが、心の回復はまだのようだった。

 悲し気な表情をして、苦笑していた。


「ほんと色々とごめん。

 アホな俺を許してくれ。信じた俺がバカだった。

 みんなに迷惑かけまくりだな」


「敦は、悪くない!」 「兄貴は悪くない!」


 俺とキースは同時に叫んでた。

 それを見た敦は、「お前らって、なんか似てるな」と笑った。


 しばし、俺たちは再開の喜びに浸っていたが、

 蓮だけは険しい顔をしていた。


「喜んでいる暇はないよ。いつアイツが来るかわからない!」



「その通りです」



 声のするほうを振り向いた。

 そこには、ロイがいた。


 邪悪な笑みを浮かべ、静かにそこに立っていた。






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