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第二十六話  X

 



 敦も救う。あいつも倒す。

 両方をやりとげるにはどうしたらいいか。

 俺と蓮は、途方にくれていた。


 敦の居場所さえわかれば・・・。

 救う手立てもあるのに。


 一刻も早く救出しなければ、敦が死んでしまうかもしれない。

 たぶん、あの父親との対戦のあと、敦は続けてロイさんと戦って負傷してるんだろう。


 何か手がかりはないか俺たちは必死に思い出していた。

 悔しいことに、俺たちはずっとアイツの手のひらで踊らされていた。


 アイツのことを信用していたから、話も鵜呑みにして。

 悔しい。悔しくて自分自身に腹が立った。


 蓮が前に言ってた通りになった。

 もしアイツが黒幕だったら、俺たちが全滅だと。


 時刻は深夜2時。

 眠ろうなんて思いもしなった。

 眠気なんて全くなかった。


 敦を救いたい。その一心だった。

 そのときだった。

 蓮の家のチャイムが鳴った。


 蓮がインターホンの画面を見るとそこには森さんがいた。


「森さん?!」


 俺たちは、急いで1階へ降りていく。


 ドアをあけると、森さんが飛び込んできた。


「思い出したの!!!!!

 二人に伝えないといけないと思って・・・」


 森さんは、全力で走ってきたらしく、はぁはぁと息を切らしてきた。

 こんなに夜遅くに飛んできたということは、よっぽどのことなんだろう。


「私を拉致して、監禁してた男の人のことなんだけど、やっと思い出したの。

 壮君たちと一緒にいた男の人だよ。髪が銀髪で、背の高い、白人風の男の人。

 イクスって人だよ。」


「イクス??」


 蓮が、「ああ・・・」と声をもらした。


「だから、森さんは夢の中で、指で×印をしてたんだね。エックスのことをいってたんだね。

 フランスやドイツ語では、エックスはイクスって発音するんだ。

 敵陣では、あいつはイクスって名乗ってたのか。

 でも、あいつは用意周到だから、俺たちにはロイ・ハートって名乗ってた。

 だから、森さんの警告の意味がわからなかったんだ。」


 どこまでも回り込んで、俺たちの先回りしているあの男の執念のようなものを感じて俺は背筋がぞっとした。


「森さん記憶取り戻したっていってたけど、ずっとあの倉庫に監禁されてたの?」


 俺はふと気になってきいてみた。


「いや、別の場所よ。あのイクスって人だけが、いつも来てたの。

 一日に一度だけ食事を持ってきてたの。あと、私の様子を見に。」


「それ、どこ?!!!!」


 蓮が、大声で聞いた。

 俺は、びっくりしたが、次の瞬間ピンと来た。


「敦が、もしかしてそこに?!」


「ん~~、どこかはよくわからないのだけど、私夢みてたのかもしれないし・・・。

 窓から少しだけ空が見えたんだけど、太陽がいくつもあるみたいにずっと明るいの。」


「え?!」


「太陽が、動いてるはずなのに、また次の太陽が来る感じで・・・。

 私どこにいるんだろうってずっと思ってた。」


「それって・・・、ネフィリムの星・・・」


 太陽が3つあるって言ってたネフィリムの星だ!!!!

 信じられないけど、森さんは地球を飛び出して、ネフィリムの星に監禁されていたのだ。


 と同時に、俺たちはまた途方に暮れた。

 どうやって、そこまでいけばいいのか・・・。


 地球ならまだしもネフィリムの星となると・・・。

 絶望に染まりかけたとき、希望の光が差し込んだ。


「俺が、ゲートを開けられる。兄のいる場所はわかる」


 敦の弟が、目を覚まして後ろに立っていた。

 俺たちは、すっかり彼の存在を忘れていたが、彼はネフィリムなのだ。


 ネフィリムが作ったゲートは、すべて開けることができる。


 ああ・・・神様・・・。

 俺は、神様に感謝した。


 まだ、希望はある。

 敦の弟が、元気よく、自信にあふれたまなざしでこちらを見ている。


「俺の名前は、キース。呼び捨てでいいよ。

 俺は、父の庇護のもと誰にも見つかることなく、隠れて育ったんだ。

 兄が誘拐されたこともあって、父がひどく心配しててね。

 だから、叔父も俺のことは知らなかったんだ。

 父は、ベガ種への叔父の介入をやめさせようと何度もしたんだけどね。

 アイツはやめなかった。

 父を超えるために、父から王の座を奪うために、回復能力を手にいれたかったみたい。

 でも、父は強いから、自分ひとりで倒せないとふんで、最終的に兄を味方につけて、二人がかりで父を・・・倒したんだ・・・。

 真実を知ったときの、兄の絶望的な表情を俺は一生忘れることができないと思う。

 今も捕らえられて、深い喪失と絶望の中で苦しんでると思う。」


 どんなに敦は、辛かっただろう。

 騙されて、自分の父親を殺してしまったんだ。

 父殺しの罪の意識に苛まれていることだろう。

 なんで、こんな目に合わなきゃいけないんだ。

 考えれば考えるほどに、すべての元凶のアイツが憎かった。


「最終決戦だ」


蓮が、口を開いた。


「キースが、ゲートを開く。

 俺と壮君、そして同胞のベガ種全員で動く。

 捕らえられたベガ種も解放して、ベガ総動員でロイを倒す!」


蓮の意思は固い。

意識を集中させて、全同胞へ呼びかけているようだ。


「すでに、全面対決になることは声かけていたからね。

みんな理解してくれてる。いつでも駆けつけられるようにしてくれてるから、心配ないよ。

森さん、本当にありがとう。

森さんのおかげで、道が開けた気がする。

決着をつけてくるよ。

森さんは、連れていけないけれど、俺たちに希望の光を与えてくれてありがとう」


蓮は、彼女にほほえんだ。

森さんは、残念そうに笑った。


「私も何か手伝えればいいのにね。

でも、行っても逆に人質とかにとられて足でまといになっちゃうかな。

今回は、おとなしく家で待ってます。

みんなお願いだから、元気で帰ってきてね。

待ってるから」


俺たちは、大きくうなずいた。


「俺の同胞に、森さんは守らせる。キース、ゲートを開けてくれ。

急がないと敦君の命が危ない」


キースがゲートを開く。

空間に裂け目ができる。



最終決戦。


ついにこの日がやってきた。

何度も頭の中でシミュレーションした。

以前の敵は、敦の父親だった。

まさかロイさんがラスボスだとは、夢にも思わなかったけど。


ゲートをくぐる。


敦、待ってて。今いくから!






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