第二十三話 殲滅
森さんを家に送り届け、俺たちはすぐにまた倉庫へ戻った。
見張っていた敦達の話によると、まだ敵は気づいてないらしく、動きはないとのことだった。
俺が落ち着きを取り戻したので、安心したのか敦が頭をポンポンと叩き、
「がんばったな。」と笑顔で声をかけてくれた。
俺は、すぐ感情に任せて暴走してしまう悪い癖をなんとかしないといけない。
一人でいつも突っ走って、連携もへったくれもない。
「二人ともごめん、せっかく連携の練習したのに。
一人で暴走しちゃった。」
俺が反省していると蓮がニコッと笑って、「結果オーライ」とフォローしてくれた。
それに敦が続ける。
「今回は1対1だったからなんとかなったけどな。
まあ、森さんは救出できたし、ひとまず壮の怒りもある程度収まったろ。
今からの戦いでは、冷静に頼むぜ! 壮のさっきの黒い炎で全滅させるってのもありだけど。」
ロイさんが、驚きながら俺を見た。
「さっき、恐ろしいパワーを感じたのですが、あれは壮君だったのですね。
君は、半分人間なのに、私たちを凌ぐ強い力を持っているようですね。
これからの戦いに、あなたは必要不可欠です。
頼りにしていますよ。」
ロイさんの言葉に、身の引き締まる思いだった。
俺は力強くうなずき、前方の倉庫へ目をやった。
何人来ようが、殲滅してやる。
俺の持てるすべての能力をもってしても。
そのときだった。
ロイさんが、眉間にしわを寄せて口を開いた。
「決戦は、夜かと思ってましたが、どうやら早まりそうです」
ロイさんの表情に緊張が走った。
俺たちは、とっさに身を隠す。
異変に気付いたレプタリアン達が、十数人がゲートを使って一気に現れた。
そのうち、ひときわ体の大きな男がいて、周りに指示をしている。
「アイツがボスか。」敦がつぶやく。
さらに、もう一つゲートが開き、また十数人のレプタリアンが合流した。
「ん~、数が多いですね。十数人ほどと思っていたのですが・・・。」
ロイさんが、数を見誤ったことを悔いていた。
ただ、何か様子がおかしい。
あとから来たレプタリアン達は、両手を後ろでに拘束されていた。
「これは・・・、面倒なことになりましたね。
援軍ではなさそうですね。一気に一網打尽といきたかったとこですが、そうもいかなくなりましたね。
敵の仲間でないレプタリアンを傷つけるわけにはいきません。
彼らを避けて、攻撃しなければいけません。」
ロイさんが想定外の展開に少し困った顔をしていた。
そうこうしているうちに、ボスらしい男が、拘束されたレプタリアンの子供の頭をつかみ、首にナイフを当て、何か大人達を脅しているようだ。
これに怒ったレプタリアンの男が拘束されたまま、ボスにタックルした。
ボスは逆上して、タックルした男の首にナイフを突き立て、引き抜いた。
青色の液体が、刺された首元から噴出するのが見えた。
子供が泣いている。刺されたのは父親のようだ。
俺は、目の前で繰り広げられている殺戮の光景に、また頭に血が昇りそうになった。
「拘束されているレプタリアンは、恐竜種のようです。
兄のグループは、スネークとリザードとクロコダイル種のグループです。
私が、恐竜種のあの集まりをドーム状の防御壁で守ります。
蓮さんは、どうかあの刺されたレプタリアンの回復と他の方の拘束を解いてあげてください。
敦と壮君で、敵を殲滅なさい。
いきますよ! 」
そういったやいなや、ロイさんは恐竜族を守るシールドを展開した。
それを見て、俺たち三人は飛び出す。
蓮は、シールドの中に入り、刺されたレプタリアンの元に駆け寄って回復にあたった。
敦が、ヒト化を解き、ネフィリムの姿になる。
俺は、黒い炎を噴出し、数十人の敵のレプリタリアンを一気に拘束した。
ギリギリと締め上げる。あちこちから断末魔の悲鳴が上がる。
ただ、残念ながらボスだけが、その黒い炎を避け切った。
敦が、すかさず後を追い、ボスと取っ組み合いになった。
ボスもヒト化を完全に解き、ワニの顔と硬い鱗に覆われた体を現した。
全長6mほどの巨体だった。
ただ、敦ほどの力があれば敵ではなかった。
重力操作で、敵の重力を10倍にし、地面から無数の岩を作り出し、相手の動きを封じた。
激しい業火で相手を包む。
炎の中で、相手がもだえ苦しみ、岩の柱をめちゃくちゃに壊し、重力で10倍になりながらもなお敦のほうへ向かってきた。
敦は、右手にありったけのパワーを集中し、振り上げて、敵の頭めがけて振り下ろした。
敵が、轟音とともに、地面にめり込む。
次から次に拳を打ちおろす敦。
敵は、この連撃になすすべなく、地面の奥深くで息絶えた。
俺は、雑魚を黒い炎で締め上げて、一気に爆発を起こして爆死させた。
ここまで、わずか3分という早業だった。
ロイさんが、近づき、シールドの中に入ってきた。
蓮の回復は、無事済み、父親と子供が抱きしめあっている。
他の恐竜種の拘束を蓮とロイさんが次から次へと解いていった。
ロイさんが、恐竜種へ声をかける。
「一体、何があったのですか? 」
さきほど刺された父親が質問に答えた。
「なんの目的があるかわかりませんが、我々恐竜種に仲間になるよう脅してきたのです。
我々は、できれば静かに地球で暮らしたいと思っているので拒否したら、拘束されて、子供を人質に取られそうになったのです。助けていただいて、本当に感謝しております。
それにしてもあなた方は、一体何者なのですか?
私を回復してくれたということは、彼はベガ種で・・・そちらの少年はネフィリム・・・?」
感謝しつつも不安なのは消えないようだ。皆眉をひそめてこちらを見ている。
全員完璧な人間の姿に擬態しているので、俺と変わらない姿だ。
父親だけが、ティラノザウルスのような風貌になっていた。
子供が、父の背中に隠れてこちらを恐る恐る見ている。
「我々は、あなた方の味方です。
あの者たちの殲滅を目指している者です。私は、ロイ・ハート。
彼らは、私の目的を手伝ってくれている仲間です。」
それを聞いて、皆安心したようだ。
「あの者たちの地球上での活動はさまざまですが、私たちはその暴挙を止めるために動いています。
彼らの一団は、これですべてでしょうか?
もし、他にご存じの場合は、教えていただきたいのですが・・・」
ロイさんが、恐竜種から情報を引き出そうとしている。
恐竜種は、助けたお礼のつもりなのか、快く教えてくれた。
「さっきのクロコダイル種がボスで、一つのグループを形成していました。
私たちの知る限り、あと二つ、スネーク種とリザード種がボスの一団がそれぞれいたかと思います。
3つのグループは、お互い権勢しあっていて、どのグループからも仲間になるよう言われていたのですが、ここまでの強硬手段にでたのは、クロコダイル種が初めてです。
レプタリアンでは、クロコダイル種が凶暴で凶悪。スネーク種は執拗で執念深く、陰湿な策を講じてきます。
リザード種は、一番人数が多いのが特徴です。人間に一番馴染んでいて、人間に近い策を講じてきます。
あまり力がないので、人間が使うような武器で武装している者が多いです。
いずれも本当のボスは、ネフィリムの・・・王と言われています」
俺も蓮もそれを聞いて固まった。
ラスボスは、ネフィリムの王?!
敦って、ネフィリム王の息子なの?
ロイさんは、王の弟?!
カリスマ性のある強力なリーダーって、王様なら当然じゃん・・・。
俺は、唖然としてしまった。
ロイさんが、非常に申し訳ないという表情をして、恐竜種に詫びた。
「我が同胞が、筆頭となりこんな暴挙を行っていることを心よりお詫びします。
私は、なんとかこの事態を止めたいと願っているネフィリムです。
この子も同じです」
といって、敦の肩に手を回す。
敦も申し訳なさそうに、うなだれながらうなずく。
「まずは、地球上の敵から殲滅したいと願っています。
その後、王の討伐を考えています。
もし、よろしければ恐竜種のお力をお借りしたい」
ロイさんが、そういって深々と頭を下げた。
恐竜種は、また不安そうな顔をしながらお互いの顔を見合わせていた。
そんな中、あの父親がまた口を開く。
「私が、協力します。
他の者は、平穏に暮らしたいだけなので、巻き込まないでやってほしい。
私が、恐竜種の地球上での代表のようなもんです。
敵の各リーダーとも私が窓口となり、交渉してきました。
なので、ある程度の情報提供はできます」
「実に頼もしい。他の恐竜種の方に極力被害が出ないように尽力します。
本当に、ありがとうございます。」
「私は、劉 泰然という中国人で、今日本で仕事をしています。
これ以上、恐竜種に被害が及ばないように、私の力で食い止めたい。
ぜひ協力いたします!」
頼もしい仲間がまた増えた。
劉さん。
人間化したときは、少し面長で、一重の涼し気な目元をした30代くらいの細身の男性だった。
若いリーダーといえばそうかもしれないが、はつらつとした切れのある話し方で、一目でできる男だとわかった。
俺たちは、劉さんと連絡先を交換し、倉庫を後にした。
「まだまだ、続くな。これで終わりかと思ってたのによ」
敦がぼやく。
「まあ、森さんの仇は取れたからね!!
俺、思うに、スネーク種もリザード種ともすでに接触してると思う。
たぶん俺を拉致しようとしたのが、リザード種で、敦が宇宙人だってわかったとき倒したのがスネーク種じゃない?」
人間らしい手段を使うってのがリザード種なら、あの拉致の方法はいかにも人間らしい。
「なるほど・・・。つまり、我々の存在はどちらのグループにも知れ渡っているということですね」
ロイさんが、軽くため息をついた。
「油断はできませんね。他のグループがまたどんな手を使ってくるかわからない。
一刻も早く手を打たないと! 森さんの二の舞はもうこりごりです」
蓮が強い口調で言った。
みんなが、そうだなと大きくうなずいた。
一山超えたら、また大きな次の山。
戦いは続く。




