第十八話 連携
合宿二日目。
昨日夜中に一度目が覚めてしまったものの、あれからまた深く眠りにつき、なんとか体力気力ともに回復した。
リビングに降りていくと、蓮がみんなの分の朝ごはんを作っていた。
「おはよう、壮君。昨日のご飯が余ってるから、和食メインになっちゃったけど、いいかな?」
味噌汁のいい匂いが漂ってくる。
「全然オッケー!!!! てか何もかもやらせてしまって、ごめん。
皿洗いは俺やります! 」
「うんうん、ありがとう。」
蓮がそういって、焼きあがった塩鮭をさらに盛る。
ごはんと味噌汁に塩鮭と卵焼きに納豆。
きちんとした朝ごはんにちょっと感動した。
いつもは、食パンにジャム塗って、牛乳で流し込むくらいだ。
「うおーー、ちゃんとした朝ごはんや!!」
敦が起きてきてうなる。
全員がそろい、蓮が作ってくれた朝ごはんをおいしくいただいた。
「そういえば、叔父さんが出発したっていってたから。
連絡きたら、迎えに行ってくるわ。たぶん到着は昼過ぎになると思う。」
「了解! 」
食事も終わり、片づけも済み、俺たちは体育館へ移動して、二日目の訓練として、連携演習を行うことにした。
敦がまた指示を出してくれた。
「俺が、昨日の岩人形を操るから、蓮と壮で連携して倒してみてくれ。
最初は一体だけだけど、少しずつ数を増やすぞ。
俺が、お前らの攻撃で破壊されないように、体育館の内壁全体にシールドを張るから、思い切りやっていいぞ。
あ、俺言ってなかったけど、防御能力もあるんだったわ。かなり耐久性のある防御壁だからな。
ネフィリムの強さは、力による攻撃力の他に、この防御の強さが一翼を担ってる。
俺が自分にシールドを張れば、並大抵の攻撃は当たらなくなるぜ。
最終的には、岩人形じゃなくて、俺 vs 蓮と壮 っていう形で対戦をやるぞ!
俺のシールドをどう突破するか、岩人形にもシールドかけるから考えてみな。」
といういうやいなや、岩人形をモコモコと作り出した。
岩人形は4mくらいあり、俺たちの身長の2倍以上の大きさだ。
岩人形の右手が、ゆっくりあがり、俺たちのほうに振り下ろされる。
「うわっ!!!」
俺と蓮は、とっさに分かれて左右に飛んだ。ドッーーンという大きな音を立てて、人形の右手が床を直撃する。
ぶわっという風と大きな振動が体にきた。
「壮君!! 敵の攻撃範囲から外れて! 遠くから爆破してみて! 」
蓮からの指示が飛ぶ。
俺は、岩人形から10m離れ、人形の頭を爆発させた。
黒煙が立ち上ったが、頭はふっとぶことなく、そのままの形だった。
「俺のシールドは、それくらいじゃ壊せないぜ。
今は、動きをだいぶ遅くしてるけど、早くしようと思えばいくらでもできるぜ。
逃げ続けろ! 攻撃し続けろ! 考え続けろ! それしかないぞ! 」
敦の激が飛ぶ。
岩人形が、蓮に向かって攻撃を始めた。
両手を勢いよく、振り回し、殴りかかっている。
蓮は、すべてを避けきったあと、体がゲル化し、岩人形の足元から体を覆っていき、人形の動きを止めた。
(壮君、3(スリー)カウントするから、3,2,1、GO!!の後に最大火力で爆発させて。
俺は、気化して爆発から身を守るから。いくよ!! )
(わかった!! )
敦に作戦がばれないように、テレパシーで会話し、
俺は、一気に火力を最大出力した。俺の周りを赤黒い炎が包む。
(壮君、いくよ! 3・2・1 GO!!!! )
蓮のGO! の掛け声とともに、俺は暴走したあの時と同じくらいの爆発を起こした。
爆発の直前、蓮が体を気化させて、その場から避難した。
敦が、マズイと思ったのか、瞬時に岩人形の周りにドーム上の防御壁を張った。
しかし、爆発は思いのほか強く、防御壁をも破壊し、体育館もろとも吹き飛ばす勢いだったのだが、蓮も防御壁をさらに張り、なんとか持ちこたえた。
「マジかよ・・・。壮、お前やるな~。なんだこの破壊力。強すぎだろ・・・。」
敦が呆れた表情で俺を見ていた。
岩人形は跡形もなく消えていた。
「ちっと、俺はお前らを甘く見てたようだな。本腰いれてやるぜ。
今度は、蓮が倒してみろ。壮がアシストな。岩人形一気に3体にするぞ!」
敦が気合を入れて、岩人形に強いシールドを張った。
いくら広い体育館とはいえ、4m級の岩人形が3体もいると圧迫感がある。
(壮君、俺、昨日やった硬化をためしてみる!)
(オッケー! 俺、アシストどうしよう・・・。一応サイコキネシスで相手の動き止めれるか確認するね!)
(頼む! )
言うが早いか、蓮は右手を極限まで硬化させて、一体の岩人形に切りかかった。
研ぎ澄まされた蓮の鋭い刃は、敦のシールドを破った。
人形は、蓮の手によって、一気に切り刻まれ、崩壊した。
敦が、ニヤリと笑い、残り2体の防御を一気にあげた。
俺は、なんとか1体の動きは止めることはできたけど、2体同時は無理だった。
残りの1体と蓮が激突する。
さっきより格段に防御があがり、蓮の刃では傷一つつけられない状態になった。
蓮は、いったん敵の間合いから抜け出し、考えてるようだった。
ああ、俺がアシストしないと・・・・。
岩人形は、逃げる蓮を追い回す。蓮に考える余裕を与えないようだ。
そのうち、蓮の集中力が一瞬切れて、もろに岩人形のこぶしが体にぶち当たって、壁に激突した。
「蓮ーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
岩人形は攻撃をやめない。さらに蓮に襲い掛かろうとしていた。
「―― 時間停止!!! 」
俺は、時を止めた。
息を止めて、蓮の元へ走った。
蓮はぐったりしたまま、時が止まっている。
蓮を体育館の外へ運ぶ。
考えろ!! どうすれば、あの防御に勝てる?!
防御シールドさえなければ・・・・。
あれさえなければ、蓮の攻撃は貫通するのに・・・。
俺は息が続かなくなり、大きく息を吸った。
その瞬間、時間が動き出した。
「ああ?? 時間止めたか~? どこいきやがったんだ?? 」
敦の声が体育館に響き渡る。
思った以上に、時間停止のスキルは、消耗するらしい。
俺は、目の前がぐらぐらなりながらもなんとか耐えた。
「蓮君、ちょっとだけ時間ちょうだい。
俺、なんか今わかりかけてるんだ! 」
「・・・? 」
蓮が訝し気な表情で座り込んだままこちらを見る。
さっきの岩人形のパンチをもろにくらって、相当ダメージを受けているようだった。
「回復の時間を取って! 俺が岩人形の相手してくる! 」
俺は、そう言い残して体育館に戻った。
「おいおい、壮。お前が倒すんじゃねーぞ~、お前はアシストだからな~。
蓮も倒せるようになっとかないとな~。
まあ、ここまで強いシールドを持った敵と当たるのは、ネフィリム相手くらいしかいないだろうから、そんなに心配する必要もねーんだけどな。」
防御・・・・これが邪魔なんだ・・・。
これさえなければ・・・。
俺は、自分でも何を思ったのか、岩人形の足元に行き、足に手を触れた。
敦は俺の大胆な動きにあっけにとられ、岩人形に攻撃させるのを忘れていた。
「―― 防御無効。」
俺がそう口にすると、岩人形がまとっていたシールドが一気に消えた。
「はぁぁぁぁぁ?! 」
敦が、怒り出した。
「なんだよ、そのスキル!!!! 無効化スキルとかマジねぇから!!!
無敵じゃねぇかよ!!!! それやられたら、なんもできねぇ!!! 」
俺もびっくりしていた。
防御さえなければと強く願って、人形にお願いしてみたのだ。
全回復を終えた蓮が、ぱちぱちと拍手しながら現れた。
そして次の瞬間、大きな槍の姿に体を変えて、岩人形を上から一突きにした。
体全体の硬化を習得したらしく、ものの見事に人形を破壊した。
しかし、もう一体いる。
まだ防御無効化ができていないのが。
俺は、叫んだ。
「防御無効!!!! 」
しかし、なんの効果もなかった。
岩人形に張られた薄い水色のシールドは、そのままだった。
「え?! なんで?! 」
さっきできたのに。なんで今度はできないの?!
俺がパニックになっているところに、敦が叫ぶ。
「発動条件だよ!!!! さっき、おめー、何やってた?!!! 」
はっと思い出す。
「触らないとダメなのかーーーーーーーー!!!!」
なんてこった!!
危険な敵に近づいて、触れないとダメとか?!
敦がケラケラ笑い出す。
「お前のスキルって、すげーけど、マジ制約だらけだな。
息止めないといかんし、敵に触らないかんし。
ご愁傷さま。」
そういって、残った一体の岩人形の攻撃を開始した。
「壮君。時間停止を使って、時をとめて、敵に触れて無効化ってできない? 」
そうか!!
「やってみる!! ―― 時間停止!! 」
時が止まった世界の中、息を止めて、敵に駆け寄る。
岩人形に触れながら、
「防御無・・・――?!」
と言い終わらないうちに、俺は岩人形にふっとばされた。
壁にぶつかりそうになり、蓮がキャッチしてくれた。
「ざ~~~んね~~~ん! 言わせませんから~~!」
敦がニヤニヤ笑っている。
防御無効と口にするとき、呼吸が開始し、時間が進みだしたのだ。
「ムカつくーーーーーー!!! 言わせろ―!!!」
(防御無効! 防御無効! )
俺は心の中で必死に叫んだが、シールドは無効化されなかった。
くそっ!このスキルは、相手に触れながら声に出して宣言しないといけないらしい。
なんちゅースキルだよ!!
「壮君。しょうがない。俺がサイコキネシスで相手を拘束する。その間に、防御を無効化して!
そのあとすぐに俺がケリをつける!」
蓮の強いサイコキネシスで拘束にかかる。
敦が、それに対抗する。
蓮vs敦の念動力の対決が始まった。
紙一重で、蓮のサイコキネシスが上回った。
敦の集中が途切れた瞬間を見計らい、
俺は急いで、岩人形に駆け寄り、「防御無効」を発動させた。
瞬間、蓮がスピアを発動し、岩人形を粉々につき砕いた。
「かぁ~~~!やられた!! 」
敦が、その場に大の字に倒れた。
俺はへなへなとその場に座り込む。
蓮だけが、ふつうに立っていた。
やっぱ蓮の忍耐力と体力はすごい。
「いい感じじゃねーかよ。俺相手にここまでやれるってのはすごいぜ。
普通のレプタリアンじゃ、お前らには絶対勝てねぇな。おめぇらつえーよ。」
横になりながら、敦が感心していた。
「というか、壮君。またとんでもないスキルが発現したね!
もう、一人だけ突き抜けてるな~。」
蓮がうらやましそうに言った。
「いやー・・・、絶対絶命というか神様お願い的な感じで、やってみたらできちゃったのがすごいわ。
でも、相手に触って宣言しないとダメとか。触れない相手だったら使いどころないべ。
制限だらけだよ・・・。使いにくいったらありゃしない。
誰かのアシスト必須のスキルのような気がする。俺のサイコキネシスで止められればいいけど。」
「いやいや、その力は本当にすごいよ。
ある意味無敵だよ。どこまで何を無効化できるか試していきたいね!!
それを知ると、焦らなくて済むかも。」
蓮がそういって、ほめてくれた。
「だな、発動条件はもうちょっと厳密に調べて置く必要ありだな~。
いざというとき、使えないんじゃ、怖すぎる。敵のすぐそばまで近づくわけだからな。
相当なリスク背負ってやらないといかんな。
てか、俺 vs おまえら をやろうと思ってたけど、もういいわ。
なんか疲れた。ちょうど今叔父さんから着いたって連絡入ったから、行ってくるわ。」
「オッケー ! お昼も近いし、お昼ご飯の準備しとくね。」
「俺も手伝う!」
かなり充実した午前中の訓練は、これで終了となった。
敦が操作する岩人形相手でもこれぐらいてこずるのに、殺意を持った敵と相対したとき、どうなるのか。
俺は、もっともっと自分とみんなのスキル特性を知り、使いこなせないといけないと心に誓った。
敦の叔父・・・、敵方の首謀者敦の父親の弟が来る。
一体、何者なのか。
俺は、ドキドキしながら蓮と昼ごはんの準備にかかった。




