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第十五話  合宿

 

 


 敦がネフィリムであることが判明したあの襲撃以降、なぜかぱたりと襲撃が止んだ。

 森さんを擬態したレプタリアンからの襲撃もないまま、4月が過ぎ去り、5月のゴールデンウィークを迎えようとしていた。

 なぜ襲撃が突然収まったのかは不明であるが、その間俺たちは、襲撃に備えるために、己の能力に磨きをかけ、能力の発現に努めた。

 敦にも、俺が半宇宙人になった経緯を説明した。

 敦は非常に驚いていたが、まあなっちまったもんはしょうがねぇかとすぐに受け入れてくれた。

 俺らは暇を見つけて、人目のつかない場所で、お互いの能力の確認と訓練を行った。

 本当は、シェルターを使うのが一番だったが、ネフィリムである敦はゲートが使えないため、移動が無理だった。


 蓮は、サイコキネシスの力をより自由に強く使えるようになった。

 また、体を自由自在に変化させることができるようになっていた。

 もともと本体は、ジェリー状の物体で、スライムみたいなもんらしく、どんな形状にでもなれるそうだ。

 昔は、擬態のみであったが、今では透明化、巨大化、霧散化、液体化、硬質化等と様々な状態に体を変化させられるようになった。これらを組み合わせれば、だいぶ戦闘方法に幅が出る。



 敦の能力も教えてもらった。敦はもともとかなり訓練をしており、新たな力の発現はないだろうが、持っている力は最大限引き出し、コントロールできるまでになっていた。

 ネフィリムの能力は、何物をも破壊する強大なパワーと重力操作能力だった。

 また、自然系操作能力に長けていて、特に火と土の相性がよく、一瞬で燃やし尽くす業火と相手を石化したり、土や岩を使う能力にもたけていた。


 そして、俺はというと・・・。

 残念ながら、目だつ新たな能力の発現はなかった。

 しかし、炎と爆発による超破壊能力については、なんとかコントロールできるようなった。

 サイコキネシスについては、ほんの少し使える程度だった。まだ、紙やペンなのど軽いものを自分に引き寄せるぐらいしかできない。自由自在に動かしたり、自分自身を浮かしたりということは到底無理だった。

 襲撃もなく、感情の高ぶりがなかったため、能力の発現がなかったと思われる。


 蓮はサイコキネシスで、敦は重力操作で、空を飛べるようになったので非常にうらやましく感じていた。

 そもそも蓮はなんにでも擬態ができるので、鳥や虫になって空を飛ぶことは容易ではあるのだが、蓮の姿のまま透明化して空を飛ぶことも可能になったので、人目につかずに高速移動ができるのは大きな進歩だった。


 敦は、全国中学校サッカー大会が8月にあるため、それに向けて大詰めを迎えはじめ、3人同時に集まれるのは日曜日か平日の部活終わりくらいだった。

 力の訓練は、できなくても学校では同じクラスで、いつでも相談はできた。


 俺は、3人の絆がより一層深まり、どんどん強くなっていってるのがうれしかった。

 3人なら、どんな敵が襲ってきてもなんとかなるような気がしていた。


 そんな日々の中、敦がある提案をしてきた。


「ゴールデンウィークに、休み3日くらいならあるんだわ。能力・連携強化合宿3人でやろうぜ。

 俺の知り合いで、反オヤジ派のレプタリアンもいるからその紹介もしておきたいんだ。

 その人から、オヤジ達の動向も聞けると思う。

 ネフィリムは通常凶暴でろくなのいねーんだけど、珍しく冷静でまともな人だから。

 俺は、その人のおかげで今の自分がある。」


「敦君・・・、忙しいながらもちゃんと動いてくれてたんだね。是非、話を聞きたい!」


 蓮が、感心して礼を言った。

 俺も興奮気味に答えた。


「いいね!!! めっちゃ楽しそう!やべー、テンション上がってきた!

 俺、この3日間でなんとか新しい能力開花させたい! 」


「おめー、一応真面目な強化合宿だぞ。女子のいる楽しい林間学校じゃねーんだからな。

 気を引き締めていけよ~。」


「わかってるよ!! ちゃんと真面目にやるよ!

 蓮君はいいにしても、敦のむさ苦しさに3日間も耐えてれば、なにかが極まって新しい能力発現しそう。」


「うるせー、お前のピーチクパーチクを3日間聞かされる俺らの身にもなれ。

 蓮みたいに俺も華麗にスルースキルが発現するかもな。」


「なんだってーー!! 蓮君はちゃんと俺の話最初から最後まで聞いてくれてるはず! 」


「いや、あれは、聞いてる振りをしているだけだね。

 うらやましい高等スキルだわ。」


「いやいやいや、ちゃんと聞いてるから、壮君の話。あんまり頭に残ってないけど。」


「ちょっ!そんな~~蓮君まで、ひでーよ~。」


「やっぱりな。俺の読み通り。」


 相変わらずの3人だったが、

 そんなこんなで、蓮の両親が持っている別荘で、強化合宿を行うことになったのである。


 *******************



 合宿当日。

 別荘へ向けて出発した。

 別荘といっても、人目につかないように蓮の両親が山を一つ購入し、その山中に大きなロッジや作業場を作ったものである。さすが宇宙人・・・。スケールが違う。

 ちゃんとゲートも設置済みなので、簡単に移動することはできたが、敦が使えないので、周辺の地理を知っておくことも含めて、通常の交通機関を利用していくことにした。といっても、電車で一本で行けるそんなに遠くない場所である。

 それでも、俺はちょっとした修学旅行気分であったというのは否めない。

 敵の襲撃が中断し、少しだけ緊張感が薄れてしまっていたのだと思う。


 ボストンバッグに、3日分の荷物とお菓子を詰め込み、貯めていたお小遣いも持っていく。

 ちゃんと親には、蓮の両親の許可も得て、別荘に3人で遊びに行くということを伝えておいた。

 母親は相変わらず、危ないだの山奥に行って怪我するだのぶつくさ言ってたけど、姉がきちんとフォローしてくれてなんとか許可がでた。

 そうそう、俺の話に、父親が全く出てこないだけど、それは他県に単身赴任中だからである。

 一緒についていくことも考えたのだけど、姉も俺も地元の学校に通っていることもあり、難しいだろうということで父親のみ引っ越しとなった。

 忙しいのか、家族から離れて羽を伸ばしているのか、あまり実家に帰ってこず、中学入ってからは数えるほどしか会ってない。過保護で心配症でちょっと口うるさい母親と違って、明るく大らかで穏やかな父なので、会えないのが少し寂しかった。


 でも、まあ今度会うときには、少し成長して頼もしくなった俺をみてもらいたい。

 そう思うと合宿に対する気合も入ってきた。


 集合時間になったので大きなボストンバッグを抱えて、玄関先にでた。

 敦が信じられないくらい小さなバックでやってきた。


「なに、そのバッグ。なんでそんなに荷物少ないの?

 3日間もこもるんでしょ? ちょっと少なすぎるんじゃないの?」


「おめーこそ、一体どこに旅にでかけようとしてんだよ!

 なんで、そんなに荷物多いんだ? たかが、3日間の合宿だろ?

 寝間着ねまきと訓練着と洗面道具だけでいいだろうが。

 蓮のとこの別荘だし、だいたいそろってるだろ?」


 敦が、あきれながら俺の荷物を見ていた。


「だって・・・、なんか心配で・・・。

 服とかいっぱいもってきてしまった。」


「ファッションショーでも開く気かよ。」


 敦がケラケラと笑う。

 俺は、少しぶすくれて、荷物を減らすべく鞄を漁っているところに蓮がきた。


「・・・壮君。だいたい別荘にはそろってるから、自分が必要なものだけでいいよ。」


 見ると蓮は、そこまで大きくないトートバッグ一つだった。

 俺は、荷物を玄関で急いで入れなおして、ようやく出発となった。


「全く、先が思いやられるぜ。」


 敦がやれやれという表情をしていた。

 く~~、敦は部活で合宿慣れしているだろうが、俺は帰宅部で、こういうのは不慣れなのだ。

 でも、なんだかなんだでやっぱり楽しみだった。


 あらゆる場所で、携帯で自撮りしまくり、電車の中ではお菓子を食べながらの雑談。

 最初は敦は呆れてみてたが、だんだん気分が乗ってきたらしく、俺とほぼ一緒のテンションになりながら騒いでいた。蓮は、いつものごとく穏やかに笑いながらその様子を見ていた。

 楽しい電車での移動時間はあっという間にすぎて、目的地近くの駅についた。


「食料は、保管のきくものは少しは別荘にあるんだけど、大量にはないから、駅のスーパーで3日分買っていこう。

 駅のトイレにもゲートは設置してるから、買い終わったら俺が別荘までゲートで運ぶから。」


「はぁ~~、そのゲートってやつマジ便利だわ。俺も使えたらいいのにな・・・。」


 敦がぼやいた。


「ほんとだよね~。でも敦が使えるということは、敵のレプタリアンも使えちゃうことになっちゃうからな~。

 複雑だ・・・。」


 俺も常々思ってたことだけど、改めて敦がゲートを使えないことの不便さを思い知る。


「条件つきで敦君だけってのができたらいいんだけどね。」


 蓮が残念そうに答えた。


「まあ、できねぇもんはしょうがねぇ。色々とゲートで試したいことはあるけど、ひとまず買い物すっか!

 料理とかも自分らでしなきゃいけないとなると、一番簡単なのはカレーか?」


 敦が、キャンプの定番を言ったので、俺も便乗した。


「バーベキュー! バーベキュー! 」


「おめー、完全にキャンプ気取りだな。」


「いいじゃん! たまには大自然と戯れるってのも。

 訓練合宿だけど、楽しみも必要だ!!」


 蓮は、そんな俺らを楽しそうに眺め、「じゃあ、カレーとバーベキューメインで食材をそろえて行こう」と言った。

 食料と飲み物を買いこみ、ゲートを使って蓮が運んだ。

 ゲートから出てきた蓮を迎えて、俺たちは別荘へ移動することとなった。


 結構な山道だったが、人通りも車もほぼなかったので、蓮と敦が俺の両脇を抱えて、空中移動することとなった。

 二人は慣れているが、俺は空中に浮かんでいる状態がなんとも新鮮で、ワクワクした。

 敦の能力が俺の重力を軽くし、蓮がサイコキネシスで移動を可能にしてくれた。

 また、蓮はかなり探知能力も強化したようで、生き物を遠くからでも探知できるまでになっていたので、人がいるときや車とすれ違うときは、すっと地面に降り立ち、登山客を装うことができた。


 今まで、力を封印してきた反動なのか、あの手帳のおかげのか、蓮の短期間での能力強化が目覚ましい。

 俺はちょっと焦りもあったが、敦が「お前はお前のペースでがんばれ」と言ってくれたので、自分のペースを取り戻すことができた。


 結構なスピードで飛行しながら、15分くらいしたところで、脇道に入り、さらに奥へと10分ほど登ると急に視界が開けて、林に囲まれた中に大きな家が見えてきた。

 屋根裏付きの2階建てのレンガと木でできた、大きな家だった。


「おお、いい感じゃねーか。さすが蓮の親っさんだな。気合入るぜ!」


 敦が、別荘を眺めながら鼻息を荒くしていた。


「しばらく、使ってなかったからちょっと訓練に入る前に、部屋の準備だけしておこう。」


「オッケー! 」


 1階には、広いリビングとキッチンと洋間が3部屋、2階に個人用客室が5部屋あり、さらに屋根裏部屋2部屋に、地下と屋上テラスと別荘の裏手には、さらに大きな作業場と体育館らしき建物があった。

 とにかく、広い!

 蓮いわく、ここは同胞達との会議場所でもあるという。

 一人一部屋ずつ、2階の客室を使ってよいということになり、階段近くの3部屋をそれぞれが使うことになった。


 それぞれ、部屋の支度が終わり、持ち場を決めて掃除することになった。

 蓮が風呂・トイレ・キッチンといった水回り、俺がリビングと玄関、敦は外周全般と薪の準備を分担することとなった。それぞれの仕事が終わった頃、ちょうどお昼を迎えた。

 お昼は買っておいたパンで軽く済ませ、夕飯のカレーの仕込みだけ終わらせた。


 蓮は、毎日自炊しているだけあって、本当に料理の手際がよかった。

 そして、驚いたことにあのガサツな敦も意外と器用に包丁を使い、てきぱきと作業を進めていく。

 かくゆう俺はというと・・・ご想像通りのポンコツぶりで。

 料理なんて、母まかせで、包丁握るなんて家庭科の授業ぐらいでしかない。

 俺に包丁を握らせるのは危ないということになり、米とぎ担当に任命された。

 蓮の指導のもと、なんとか米とぎは完了し、米を水に浸していったん手を止めた。


「よし! ここまでやってれば、あとは夕方ささっと煮込んで、お米炊くだけだから、訓練に残りの時間は集中できるね。」


 蓮が、洗った手をふきながら、ニコっと笑った。


「なんか、いっぱい仕事した気がする。」


 俺がちょっと満足気な表情をしてると、


「おめーは、米研いだだけだろーが!!」


 と、敦が呆れて突っ込む。


「俺にしては、大進歩なんだよ!! 米なんて、研いだことなかったんだぞ!!」


「自慢にならねぇーよ! 」


 敦の速攻のツッコミに、返す言葉がなかったが、俺としてはがんばったのでよしとする。

 敦が、ごそごそと鞄から紙を取り出した。


「一応、俺が提案したってこともあるから、これから3日間のスケジュール組んでみたんだ。

 二人の様子見てて、足りないとことか、3人の力を合わせた融合技の試行とかそんな感じで組んでみた。

 一応、明日の夜、言ってた知り合いのネフィリムっつーか、俺の叔父にあたるんだけど、その人が来る予定。

 ここの場所知らせてもいいよな?蓮? 」


「う・・・うん。

 ベガ種にとって、ここはとても重要な場所ではあるから、敵に知られるとマズイのだけど、敦が信頼している人なら俺も信じられるよ。」


「ありがとう、蓮。ひとまず、連絡しておくわ。

 じゃ、訓練着に着替えて玄関集合。体育館みたいなとこあったから、あそこに行こうぜ。」


 なんだかワクワクしてきた。

 部活をしてない俺は、こういう雰囲気は初めてで。

 友達だけで、初めての場所で、強くなるための訓練をする。


 なんとか、成果を出したい!


 俺は、そう思いながら訓練用のTシャツとジャージに着替えて、意気揚々と玄関へと向かった。




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