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第十三話  発覚

 


 シェルターから家に戻ったころには、陽が暮れており、俺が何も言わずに家を抜け出したものだから、母親と姉が必死に探し回ってた。警察にも連絡がいったようだ。


 やっちまったーーーー!!俺は、自分の浅はかな行動を悔いた。

 蓮と遊びにでかけていたということにして、口裏を合わせた。

 親に、こっぴどく叱られ、警察の方にも平謝りすることとなった。


 姉は、俺の清々しい表情を見て、何かを感じ取ったようで、ポンと頭に手をのせて、


「あんまり、無茶しないように。親に言いにくかったら私にだけ言いな。」


 と、言ってくれた。

 姉の心遣いに、感謝した。


「姉ちゃんありがとう・・・。

 まだちょっと言えないんだけど、これからちょくちょくこんなことがあるかもしれない。

 でも、ちゃんと戻ってくるから。心配かけさせてしまうけど、ごめんなさい。」


 そういうと、姉は少し寂し気な表情をした。


「壮・・・。アンタ、ちょっと変わったね。

 私の可愛い可愛い弟が、なんだか急に成長して、遠くに行っちゃった。

 なんだか寂しいけど、ねーちゃんは、応援してる。いつでもアンタの味方だから。

 どんなに壮が変わっても、必ず戻ってきてくれるって信じてるから。

 アタシは、ちゃんと待ってるよ。」


 俺は、その優しい言葉に、泣いてしまいそうになったので、必死で我慢してうん、と俺はうなずき、自分の部屋へ戻った。


 あまりにも疲れてしまっていて、何もできずに、ベッドに倒れこんだ。

 明日からまた学校が始まる。


 俺の家族や学校の友達が、森さんの二の舞になる可能性は否めない。


 もう二度と誰かを犠牲にしたくない・・・。


 そう思いながら、俺はいつの間にか泥のように眠ってしまった。


 *******************



 翌朝、ちょっと早めに蓮が迎えにきた。

 敦には、この件については、内緒にしようということをお互い確認した。

 俺らの戦いになるべく巻き込みたくなかった。


 俺らが、コソコソと内緒話をしているところに、敦がやってきた。

 いつもなんで朝からそんな声が出るのか不思議なほど大声で、話しかけてきた。


「なんだよ、おめーら、二人でコソコソしやがって。

 土日に何があったんだぁ??

 俺は蚊帳の外かよ!!」


 かなりすねた様子だ。

 事が事なだけに、事情を話すわけもいかず、

 俺も蓮もちょっとヘラヘラしながら取り繕った。


「いやー、敦君。土曜日は俺の様子がおかしくてごめんね。

 なんていうか、交通事故の件に引き続いて、壮君を一人にしたせいで拉致されそうになって、

 なんか自分のせいなんじゃないかって、責めちゃってたんだよね。

 でも、いろいろ壮君と話して、考え直してちゃんと立ち直ったから。

 本当に心配かけてごめん。

 もう大丈夫だから。」


 うんうんと俺もうなずき、


「蓮も蓮なりに、悩んでたんだね~。

 俺は、夢にも思ってなかったけど。

 蓮を庇ったのも俺の自分勝手な無鉄砲さが原因だし、拉致されたのもぼーっとしてて、危険察知できなかっただけだなのにね。」


 敦が、不思議そうな表情をしていた。


「蓮が・・・よくしゃべるなんて珍しい。なんかやっぱ変わった気がする。

 壮は、相変わらずアホっぽいけど。」


「なんだってーーーー?!!!」


 俺は、怒りながら蹴りを入れようとするが、ひょいとそれをかわす敦。


「おめーが、俺に蹴りいれるなんざ、百万年はえーよ。」


「クソーーーーー!!いつかしばいたるーーー!!」


 敦は、機嫌を直したようで、笑っていた。

 蓮もクスクスと笑っている。


 ああ。

 これだ。

 これが、一番心地いい。

 3人で、ワイワイずっとしてたい。


 久しぶりに訪れた楽しい時間だったのに。

 その時間が急に終わりを告げた。


 突然、俺の体が硬直し、動けなくなったのだ。


 えっ、なにこれ?


 身動き一つ取れなかった。

 気づくと蓮も硬直してた。


 敦が、不思議そうに俺ら二人を見ながら、


「何してんだ? おめーら?

 早くしないと遅刻するぜ? 」


 わかっていても、全く体を動かすことができない。

 念動力で体を拘束する敵がいるとは聞いていた。


 蓮が力を振り切り、拘束を一部解いた。



「敦!!! 逃げろ!!!

 今すぐここから逃げてくれ!!!!! 」


 敦の前で、力を使うわけにはいかない。

 また、敵が人間の敦を狙ってくるとも限らない。


 俺も必死に、力を振り絞って、拘束を少し解いた。


「敦! 頼むから・・・逃げて・・・・!」


 俺の懇願する表情を見て、敦の表情が変わった。

 俺の目線の先には、緑色の皮膚をした蛇のような顔したレプタリアンが立っていた。

 シュー・・・シュー・・・っという音を立て、赤く細長い舌が口元からピロピロと出ている。


 敦が背後の音に気づき、振り返る。


 やばい、敦がやられる!!

 森さんの二の舞だ!!


 蛇のようなモンスターが、体まで蛇となり、大きな口を開けて敦を飲みこもうとした。


 俺は、二度と誰も死なせたくないという思いから、

 一瞬にして、赤黒い炎が体から噴出し、敵を燃やし尽くそうとした瞬間、俺はありえない光景を見た。


 敦の両腕が、岩のように硬化し、鋭い爪が延び、巨大化した。

 蛇の頭を左手でつかみ、強力な握力で、握りつぶした。


 青緑色の体液が、当たりに飛び散った。

 つぶれた頭を左手で持ったまま、右手の鋭く大きな鋼のような爪で、蛇のような胴体を一突きにし、そのまま下に振り下ろして、体を引き裂いた。

 頭を地面にたたきつけたが、敵はまだピクピクと痙攣していた。

 心臓のような器官が露出していたのを敦は右手の爪で上から突き刺した。

 その一撃で、敵は完全に絶命した。


 青緑色の体液を体中に浴びた敦が、振り返る。

 スッと巨大化していた腕が、元の人の腕に戻った。


「すまん。隠してた。俺、人じゃないんだわ。」


 敦がけろっとした顔で、さらりと言いのけた。


 敵が絶命し、拘束が解けたはずなのに、俺も蓮もあまりの出来事に動けずにいた。


「なんで、こいつら、人間襲ってんだ??

 ルール違反も甚だしいな。」


 そういうと敦が、敵の遺体を足で蹴った。



 蓮が青ざめていた。

 唇がわなわなと震えていた。

 そして、俺の方を強いまなざしで見た。


 (壮君・・・。敦は・・・・レプタリアンだ・・・しかも最強の種族のネフィリムだ・・・。)


 蓮から送られてきたテレパシーに、俺は愕然とした。

 ごくりと息をのみこんでから、しばらく呼吸ができなかった。


 そんな・・・・。

 敦が、敦が・・・最大の敵の一族だなんて・・・。



 予想もしない展開に、俺はただただ立ち尽くしていた。








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