生きる工夫の不幸
生きる工夫の不幸
体が痛い、何だっけ。
えっと、そうだ、俺は意識が。
意識は直ぐに覚醒した。
何か不味い時はいつもこうだ、
嫌な事が重なる度に、不都合が続く度に、
胸を締め付ける様な思いと共に目が覚める。
ガチガチに寝返りもろくに出来ない、
ただの床から目覚めた俺は、
それ以上に最悪な状況を整理し出した。
天使の少女…元美男だったソレは、
今も俺を睨見つけてる。
寝てないのか、凄い集中力の視線が凄く痛い。
ぐちゃぐちゃになった寝床の隅で、
身を守る様に警戒している。
不幸中の幸いと言えるのは、
お互い警戒してるだけで留まってる事ぐらいだろう。
整理だ、整理をしよう。
落ち着け大丈夫だ、まだ意識はある。
俺、高山幸助はストレスに弱い。
自律神経が乱れると、
抗えない眠気が襲い掛かり。
緊張と眠気で倒れる事がある。
今は寝起きで"まだ"マシなのだが、
時間が経つ程にそのリスクは高まるんだ。
だから今、考えを整える必須がある。
こいつは警戒している、これは分かる。
怪我をしているからだ。
あと俺が倒れてから襲っては来なかった、
これは良好だ。
下手な事をしなければ最悪な、
命を奪われる可能性がグンッと下がったとも思える。
地味に人の形をしてるのもデカい、
表情で何考えてるかも分かりやすい。
逆に言えば俺の心境もかなり読まれてる可能性も高いが、得体の知れない相手に全く分からないよりはマシとしよう。
どうするか、まずは視線は合わせない様にする。
知識として視線が合うと警戒心が高まるからだ、
対象は目視ししながら、
俺はそれ程気にしてないと演じる。
少なくとも敵対心は無いとだけ、
態度だけでも伝わる様に。
これが正しいかどうかは知らないが、
俺は俺が正しいと思った直感に従った。
そして次は、その真逆の事だ。
気は進まないが警察か、役所か、
とにかく電話をするべきだよな。
この外部に頼る事に強いストレスを感じる。
やりたくない。
言えば助かる、そんな話じゃない気もするし。
面倒な説明が現状よりストレスだと感じるからだ。
それでも何もしない訳には行かない。
幸い、ゲームの攻略の為にスマホは手元にある。
俺はスマホを手に取り電話をしようと、
スマホを少し上げた時だった。
ブォン!
室内で、唐突に、風が来た。
それは鋭く睨見つけてる、天使の少女から、
まるで解き放たれた様な突風だった。
これは不味いと思った、
俺の背後には数年分の資金を詰め込んだ。
ゲームやパソコン、
様々なコレクションが溜まってるからだ!
向きが最悪だ。
この方向でさっきの様な突風が来たら、
間違いなく何が壊れるじゃないか!
しかもアイツから出てきた傷後からの砂が!
精密機器に入ったらとんでもなく面倒な事になる!
よく見るとスマホに強い警戒心がある様だった、
何故だ?俺が拾い上げるまで、
スマホには視線など動かしてなかったよな、お前。
こんな土壇場で、
俺の頭はある答えが導き出た、
閃きとはこの事を言うのだろ。
先程のスマホは、画面を【表】にして置いておいた、
そして拾い上げて警戒された時、
スマホのカメラはアイツを少しでも向けた気はした。
カメラだ!コイツはカメラに警戒したんだ!
そんな事を一瞬に頭を過って俺は思考が止まった。
それはこの緊張や行動をキャンセルされた事も含めて、
頭が疲れ切ってしまったからだ。
そうなると、俺の頭はキレた。
何でこんなにも緊張しなければならないんだ。
何でこんなにも我慢しなければ、
嫌だ、嫌だ、嫌だ、腹減った。
馬鹿みたいかも知れないが、
空腹が俺の頭を支配した。
カップ麺の備蓄があるので、
考える事、悩む事を止めて、
俺は飯の用意をした。
その時はこの天使は特に何もしなかった。
棚を開け、カップ麺を取り出して、
ついでにコイツの分も取り出し。
ポットにお湯を出そうとした時は、
先程と似た様な細やかな風が俺を包み込み、
どうやらボタンは理解がある様だったが、
「何もしねぇよ…チビ天使が」
無視して麺の準備をして3分待った。
3分間の奇妙な時間が流れて、
また暴れられても困るので氷でカップ麺を冷やし、
あの天使に提供してやった。
「お前も食うか…ほら、こう食べるんだ」
俺はアイツに見せ付ける様に、
一度食べてから同じカップ麺を差し出し、
空腹を満たしていた。
天使の少女は、
まあ、お約束みたいな箸をグーで掴み、
警戒しながらガツガツと麺を食べていた。
最初は警戒する視線から、
食べ物を何度か見直し、
食べる食べる食べる。
疲れ切った俺は現状から逃げる様に、
今度はゲームやる事にした。
能力を上げて敵を倒す、特に難しくもない、クリアから完全攻略までそれ程時間が掛からないゲームだ。
俺はコレが好きだった、特に悩まず何度でも没入感に浸れるから、悩んだ日はよくやるのだった。
今日は何も出来なかった。
また床で眠る事になるなと、頭の片隅に感じながら。
面倒な事に全て目を背けながら。
「面倒くせえ…面倒くせえなぁ」
そんな俺の姿を天使は眺めてた




