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精霊の愛し子と精霊使い  作者: ありま氷炎
二章 精霊使い
11/15

2-7



『一対三。卑怯じゃない?』

 

 現れた水の精霊アリーナは、フィンたち精霊たちに声をかけた。


『たった一つか?つまんねぇ』 


 それに返したのは火の精霊ヒーサンだ。


『あら、よく見たら子供が二人だわ。フィン、お守りも大変ね』


 水の精霊アリーナは一対三という不利な状況を嘆いたことを忘れたかのように、そう言う。

 

『子供で悪かったな』


 ヒーサンが怒りで髪色をさらに赤く燃え上がらせる。


『そういうアンタはおばさんかしら?』


 ミズサンは逆に冷静な様子で皮肉げに唇の端を上げた。


『お、おばさん!』

『アンタ、精霊鎖ってやつで縛られている精霊なんだろ?可哀想だな』

『可哀想!同情されるゆわれはないわ』


 ボイラーの水の精霊アリーナは完全に怒りで我を忘れかけているようだった。肩まで伸びた水色の髪がうねって、まるで蛇のようだ。


『アリーナ。どいてください。ティエンを連れて帰ります』


 ティエンの火の精霊フィンは、そんな彼女に構わず、攻撃を仕掛けた。

 放たれた火の塊は、アリーナ自身の水の壁によって防がれる。

 しかしアリーナは二人の()()の存在を忘れていた。


『もう!』


 背後に放たれたのは火の塊と、氷の塊。

 それを上空に飛んで逃れようとしたのだが、頭上にいたのはフィン。

 

『ティエンは連れて帰ります!』

 

 迷うことなく火の槍で、アリーナを貫いた。

 

『いたああい!』


 色彩を除き、人間とそっくりの姿をしているが、精霊だ。

 血など出るはずがない。

 火の槍はアリーナに体に刺さっているだけで、傷も血もない。


『殺すことはしません。そこでじっとしておいてください』

『え?そうなの』

『こいつ、まだ邪魔するんじゃないの?』

『だから動けなくしましょう』


 ヒーサンとミズサンは生まれてからずっと森で暮らしており、殺すことを厭わなかった。けれどもティエンは違う。自身の最初の契約者、名と個性を与えてくれたガルネリと共に、人の世界で生きてきた。そして精霊を殺すのではなく、精霊鎖を破壊して、精霊を解放することを目的としてきた。ガルネリの拾い子であるティエンもその意思を継いでいる。

 ミズサンはアリーナと同じ水の精霊なので、火の精霊であるフィンとヒーサンが炎を使ってその体を拘束した。


『死んじゃうわ。焼け死んじゃう』

『そんなやわな精霊じゃないでしょ?火の精霊の拘束の炎くらいでビビらないでよ。まったく』


 最初の勢いはどこにいったのかアリーナは泣きそうな声を上げる

 それを子供の姿であるミズサンは馬鹿にするように眺めた。


 

 ☆



『急ぎましょう』

 

 牢から出たティエンを護衛するように付き添っていた風の精霊ソライが、緊張をはらんだ声を上げた。

 そしてその手を掴んで飛びあがろうとしたところ、邪魔者が入った。


『ボイラー様の予感は当たったな。脱獄か?裏切りか?』

『ティエン!逃げてください』

 

 ソライは掴んだ手を離さず、そのまま前に飛ばす。

 ティエンは受け身をとって地面に着地。そのまま走り出した。

 火の精霊カズンはその後を追いかけようとしたが、ソライがその前に立ち塞がった。


『本当に裏切ったのか?』


 ☆


 ソライはばあばあと契約した精霊だ。メイラとも縁が深い。けれどもティエンはそんなことは知らない。しかも先ほどまでは敵だったのだ。同じ目的で脱獄を手伝ってもらったとはいえ、義理を覚える気持ちはない。

 後ろを振り返ることなく、ティエンは全力疾走する。

 ボイラーは二つの精霊を持つ。

 火の精霊カズンはソライが足止めしてくれているが、まだ水の精霊アリーナがいる。

 もし手元にフィンがいれば互角だが、今は精霊鎖を持たない唯の人だ。多少戦えるといっても精霊の力に太刀打ちできるわけがない。

 なので、ティエンは王宮から逃げるために必死に走っていた。

 牢屋のある場所は王宮と言っても外れの塔で、寄り付く人も少ない。それでも数人の警備兵がいて、呼び止めれらるが無視をしてひたすら走る。


「そこの少年止まれ!」


 護衛と言っても王宮勤めなのか、品のいい口調で制止の言葉がかかる。けれども、無視。そうなると警備兵たちが追いかけてきて、追いかけっこがはじまった。


「ああ、もう!」


 (こんな時にフィンがいれば!)


「ティエン!」

「フィ、フィン?!」


 真正面に彼の火の精霊フィンの姿が目に入る


「よかった。無事ですね!さあ、行きましょう」


 フィンは戸惑うティエンに説明しないまま、その手首を掴み、そのまま空に飛び立った。




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