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メイラの暴走

暴力描写あり

ティアはメイラの表情をみた。

嘘をついているようには見えない。


「マシアス様のところにいるの?」


「いいえ。」

ティアが聞くとメイラが不敵な笑みを浮かべたまま答えた。


「じゃあ・・・どこにいるの?」


ティアが少しいらいらしながら聞く。

さっさと答えればいいのに。

何をもったいぶるのか。


「私がいるのは帝都よ。」


「帝都・・・?帝都のどこ?」


「そこまでは知らないわ。あなたが探して。」


無茶すぎる。

というか人に助けを求める態度ではない。


「・・・ヒントは?何か手掛かりがないと探せないわ。」



「・・・あなた古の国に行ったのよね?」

メイラが少し考えてから聞いた。


「ええ・・・行ったわ。」

急に何を聞きたいの?


「・・・そう。だったら、“失われた魔法”は習得していないの?」


何か違和感を感じる。

しかしティアにはそれが何かわからなかった。


「存在は知ったけど・・・使えないわ。・・・あなたはなぜ知っているの?」

何故か事実を話してはいけない、そう思った。

ティアは、失われた魔法を使える。

完ぺきではないが。


メイラが鋭い視線を送ってくるが、急に笑い出した。

「ふふふ・・・私は、魔塔の人間よ。それくらい知っているわ。」


間違えていない。

しかし、何かがおかしい気がする。


「・・・失われた魔法が使えれば、あなたの居場所がわかるの?」

ティアはいぶかしげな表情でメイラに聞き返す。


「・・・ええ」


「でもどうやって?失われた魔法は“再生”と“空間”・・・どうしてもあなたの居場所を探すのは難しい気がするけれど。」


メイラは急に無表情になり、ティアを見下ろした。

幻影のはずなのに生々しいほどの威圧感が、ティアを包む。


少しして、ティアの頬にメイラの右手が思い切り振り下ろされた。


バシン・・・


あまりに急なことでティアも唖然とする。


メイラはすぐにティアに殴りかかった。

抵抗しようにも、ティアからは触れられない。

触れようとすると、彼女の姿を通り過ぎてしまう。


どういうこと?

触る感じでは幻影なのに、メイラは私に触れられる。


幻影は術者の幻が目の前にあるだけで、触れあうことができない。


ティアは鬼の形相のメイラに、叩かれ蹴られ続けた。


逃げようと扉の方へ向かうも、すぐに髪を引っ張られ床にたたきつけられる。


「・・・生意気なのよね。その目・・・」

メイラが呟いた。

しかし暴力が止むことはない。


「あんたを見ていると虫唾が走る。」


ティアは必死で扉に向かうが、すぐにメイラに捕まり、床を引きずられる。




バァァン・・・・


その時、ティアの部屋の扉が蹴り開けられた。


目の前には剣を構えたアレクサンダーが立っていた。




「ちっ・・・あの男・・・」

メイラは呟き、つかんでいたティアの髪の毛を乱暴に引っ張った後、手を離した。

「う・・・うう・・・」

ティアが唸りながら、全身の痛みをどうにか無視して、床を這いつくばりつつアレクサンダーの元へ行く。


アレクサンダーが手を貸してくれて、立ち上がりながら彼の背中に隠される。


「・・・あなたが“皇后の影”か・・・」

アレクサンダーが言うと、メイラのオーラが一気にどす黒くなり、憎悪の視線を向けた。


「私は影じゃない!影じゃない!影じゃない!!影じゃない!!影じゃない!影じゃない!影じゃない!影じゃない!影じゃない!!」

大きな声で叫びながら繰り返した。


目を開きすぎて、充血がもっと悪化している。



アレクサンダーは構えた剣に魔力を流し込む。


「ア・・・アローシェン様・・・」

ティアは一人でも立っていられず、扉に背中を預けていた。

腹部がいたく、片手で抑えたまま。

必死で出づらい声を出す。

喉を潰されたようだ。


「・・・幻影のあ・・・はず・・・物理は・・・効果が・・・ないかもしれません・・・」

とぎれとぎれに懸命に伝える。


アレクサンダーは、ティアを背に隠したまま振り返ることなく、片手を後ろに差し出してきた。


ティアはとりあえず握る。


「・・・大丈夫だ。()()()が教えてくれた。」


()()()

あの方って誰・・・?


ティアは疑問に思っていたが、メイラが大きな声で笑いだし、それどころではなくなった。


「あはははははは!!あの男は滑稽ね!自分の力じゃ()()()()()出れないくせに!!いいえ!あいつを出せる人間なんて存在しないわ!!」


メイラの周囲を黒い霧と風が舞い上がる。


「古の精霊たちよ。失われし精霊たちの力よ。今我に与えたまえ。その代償にあなたたちに魔力を与える。」

アレクサンダーの言葉に、周囲からアレクサンダーの剣に光の粒が集まる。


ティアはアレクサンダーの言葉に目を瞠る。


これは“古の言葉”。


古にいなくなってしまった精霊たちの魂を呼び起こす言霊。


なぜアレクサンダーが知っている?

古の国にしか伝わっていない。


それにこれは、マナが小さい人にしか使えない。

原理は解明できていないが、マナに収まりきらない魔力を保持している人しか使えなかった。


精霊が魔力を食べると言われている。



メイラも驚いているのか、顔色を悪くしている。


集まった光はまるで蛇のように伸び、アレクサンダーが振るとメイラを捕まえた。


「どうして・・・!!くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ!!!!!」

メイラは自由になろうともがいている。

しかし、光の蛇縄みたいなものから逃れられない。


蛇のような頭が、メイラの全身に巻き付いていく。



そこでアレクサンダーがティアを振り向く。

「魔法を使えるかい?」


「え?」


急な質問にティアは驚く。


「・・・私は、これ以上魔力を使えないんだ。・・・君は磁波重力を使えるだろう?それで、この光を固定してほしいんだ」


「固定?」


「そう。・・・光に君の魔法を流し込めば・・・いいらしい」


いいらしい・・・

誰に聞いたの・・・?ティエルノ様・・・?



ティアはとりあえず、言われたとおりにする。


と言っても、良くわからないので、“流し込む”イメージで磁波重力魔法を放った。



すると、もがいていたメイラがピタリと動かなくなり、その場に固まる。

辛うじて目は動くらしく、ぎょろぎょろと動かしていた。


口は食いしばった状態のままで固まっており、目は見開いたままでぎょろぎょろ動かすため、正直とても・・・人間には見えない形相になっていた。


まるで魔獣・・・


光の蛇に捕まった状態のメイラから、どす黒い霧が出る。


アレクサンダーはティアを連れ、扉の外に出た。

メイラをみながら、羽織っていたマントで黒いオーラから身を守る。


「・・・これが・・・」

アレクサンダーのつぶやきに、ティアは全身の痛みがぶり返しだした。


癒し魔法を使おうとするが、思ったより今ので魔力を使ったらしく集中できなかった。



アレクサンダーがティアが静かなのに気づき振り向く。

「すまない。今ここから離れると危険だから、私を追いかけてくる人たちがいるからとりあえず待ってて。」


そう言ってティアを横抱きにして、抱き上げた。


「ひっ・・・・あ・・・だめ・・・・」


ティアが拒否しようと身動きを取るも、体がいたくて動くのをやめる。

アレクサンダーが優しく微笑む。


「痛いだろう。黙って抱き上げられてt」


ティアは真っ赤になるしかなかった。






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