懐かしい友との再会
アレクサンダーの言う通り、彼を追いかけてきた人たちが到着した。
第2皇子ジャクソンとオリバー、そして宮廷の衛兵だ。
正直、ティアは恥ずかしすぎてアレクサンダーのマントを持ち上げて視界を消した。
皆がじろじろ見ているのが痛いほどわかる。
「・・・アレク・・・それは・・・恥ずかしくないのか?」
オリバーの声だ。
「オリーはしないのか?」
ジャクソンが聞く。
「・・・え?もしや・・・殿下・・・」
「私はそれはそれはグレイスのことをとてつもなくかわいがっているぞ?」
ジャクソンが真面目な顔で答える。
衛兵ですら何も言わず固まっていた。
普段冷淡で、何事にも興味を持たず、自由に生きている皇子。
婚約者を溺愛するなんて誰も想像しない。
数人の足音が聞こえ、全員がそちらを見る。
「お!来たな。すまない、夜中に」
ジャクソンの一際優しく、朗らかな声が響く。
そしてそんな彼の表情を見た衛兵は固まる。
「いいえ。私は大丈夫ですわ。ルアンが危ないと言われたから来ただけで・・・」
ティアにとって、懐かしい名前と、懐かしい人の声であった。
そこに立っているのはかつての友人、グレイス=メイウスだった。
「グレイス。君は癒し魔法が得意だね。彼女を治してあげてほしい。」
ジャクソンが優しく、グレイスの手を取りティアの前まで導く。
ティアは震える手でマントを持ったまま顔を隠し続けた。
怒られるだろう。
ティアがルアンだと気づけば、グレイスならきっと怒る。
そして、きっと優しく抱きしめてくれるのだろう。
ティアの中に優しいグレイスの癒し魔法が入ってきた。
ティアは無意識に癒し魔法を自分の中で治癒に変換させていく。
途中でグレイスの魔法に動揺が走る。
それでも気丈に魔法をつづけた。
ティアの傷が消え、グレイスは嗚咽を漏らした。
ティアはグレイスの嗚咽に肩が震える。
最初は面倒な子だと思った。
気位が高く。
高慢で傲慢。
自分の考えを人に押し付ける。
でも根はとてもやさしく、友達が欲しい普通の女の子だった。
グレイスは震える手で、ティアのマントを抑えている手に触れた。
ティアが一瞬だけびくっとなる。
「・・・あ、あなた・・・どうしてっ・・・帝国に戻ってきたなら、どうしてわたくしに会いに来なかったのですかっ・・・!」
グレイスが涙をぽろぽろ流しながら叫んだ。
ティアは手からマントを放しグレイスを見る。
以前と変わらず金髪の巻き毛。いつもはばっちり化粧だが、夜中だからか化粧はしていなかった。
少し幼さの残る顔だちで心配そうに茶色の目をキラキラさせている。
ネグリジェだと思われるドレスに上からドレスカバーをかけ、ショールを羽織っている。
「心配していたのよ!!」
「・・・すみません、グレイス様・・・」
グレイスがティアの首に手を回し、それはもう絵に描いたようにおいおい、と泣き出した。
ティアはそっとグレイスの背に手を回し、ゆっくりとさすった。
どのくらい経ったかわからない。
グレイスが連れてきた騎士たちにジャクソンが何かを命じて、メイラを捕らえたようだ。
その間グレイスはティアの胸で泣き続けていた。
状況が少し落ち着いたのか、ジャクソンが隅によけられたティアたちのもとに来た。
「・・・そろそろ我が愛しの婚約者を返してほしいのだが?」
と、真面目な顔でジャクソンが言った。
「嫉妬心の強い男は振られますよ、殿下」
オリバーが笑いながら言う。
「ティア。今日はもう遅いから・・・」
アレクサンダーがそう言って、ティアを絶たせようとすると、グレイスはギュッとしがみついて離れなかった。
「嫌ですわ。今日だけは絶対に、絶対に、ぜーったいに離しません」
そういって、より一層ティアに抱きついていた。
離れる気配がなかったため、結局グレイスが与えられている宮廷のグレイスの部屋のベッドで一緒に寝ることになった。
翌朝、侍女たちが皇妃宮の侍女を見て驚きが隠せなかったのは、予想に難なくない。




