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中二病の俺でも青い春は訪れるのだろうか  作者: 天近嘉人


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二十七話

 俺の携帯の電子時計が午後九時五十九分を指した。

 

 これからいつも通りルシフェールとして生配信が始まるのだ。でも、今日は俺一人ではない。

 

 「うぅ……緊張してきましたぁ。私大丈夫かなぁ?」

 

 俺の隣で天ヶ原さんが黒を基調としたフリルが可愛らしいドレスを着て言った。因みにこのドレスは伊集院さん特注でお値段はウン十万。俺のお年玉貯金と一年分のお小遣いが消し飛んだ。

 

 「大丈夫だって。さっきも言ったけどこういうのは初めが肝心なんだ。ドーンっと大きな声だせば後はスラスラ喋れるようになるよ」

 

 俺は白髪のカツラを微調整しながら言う。

 

 「はい、分かりました。最初にドーンと大きな声で……」

 

 天ヶ原さんが小声で復唱する。その感に時刻は十時になり、パソコンの画面には配信開始の文字が出てくる。

 俺は息を大きく吸ってから。

 

 「ふはははははっ! 漆黒の小悪魔達よ。今宵も晩餐が始まるぞ。我の声に聞き惚れ、われの姿に見惚れるがいい! そして子悪魔の諸君よ。今宵は我一人だけではない。さぁ我が眷属よ! その名を皆に知らしめるがいい!」

 

 「え、えっと……こんばんわ。私はルシフェール様の眷属で、えっとあの……い、今から皆さんに私達のいちゃラブセックスを披露したいと思いまーす」

 

 俺は秒でマウスを握り、放送中止を押した。

 

 「……天ヶ原さん。放送禁止用語って知ってる?」

 

 「ごめんなさい! 私ったらつい緊張しちゃって……」

 

 俺は頭痛でも起きたかのように頭を押さえた。俺が底辺配信者でよかった。これがきぬぽんだとかだったら即ネットニュース物だぞ。

 

 「やれやれ。今日の配信はこのまま終わりだな」

 

 俺はパソコンの電源を落として、ため息を一つ吐いた。

 

 そんな中天ヶ原さんがドレスのスカートに手を添えてモジモジしながら。

 

 「もう配信しないんだったら。本当にシちゃいましょうか? 丁度ルシフェール様のご両親もいないし。夏美ちゃんも勉強合宿でいないし」

 

 頬を赤くしながら俺を見つめてくる。その瞳は完全にモードに入っている目だ。

 

 「しないよ」

 

 しかし俺は即答で断った。

 

 「ええ~なんでですかぁ? こんな絶好のチャンス滅多にないと思うんですけどぉ。夏美ちゃんだってきっと今頃他の女の子と夜の保健体育の授業とかやってますよぉ」

 

 唇を尖らせながら文句を言ってくる天ヶ原さん。

 

 人の妹をガチ百合キャラにするの止めてもらえませんか? 夏美は健全な子だから。だからと言って他の男との保険体育も許さん。

 

 「ねっ? いいですよね? 一回だけ。一発だけでいいですからぁ。ほら、あんなところにベットがありますし」

 

 片づけ中の俺の背中にベッタリとくっつき尚も誘ってくる天ヶ原さん。

 

 俺は一旦片付ける手を止めて彼女の方を振り向いた。

 

 「いい? これ前にも言ったんだけど。俺は軽々しくヤるつもりはないからね。だって天ヶ原さんは俺にとってそれだけ大切な存在だってことだから」

 

 俺の説教に天ヶ原さんはにへらっと頬を緩ませた。「そうですよね」と呟きながら左手のレースグローブを脱ぐ。

 

 「だって私達永遠の愛を誓った恋人ですもんね」

 

 天ヶ原さんが左手を照明に照らす。『FOREVER LOVE』の文字に一粒の星が流れてきたかのようにキラリと光った。

 

 えへへっと自慢げに指輪を見せてくる天ヶ原さん。俺はそんな彼女が可愛くって笑った。

 

 きっと俺達の恋は世間の恋からすれば間違っているだろう。しかし、それが俺達らしくていい。

 

 俺達のやり方で少しずつ、一歩ずつ。ゆっくりゆくり行って。そして最後には。

 

 季節は移り変わる。春が来たら夏、夏が来たら秋、秋が来たら冬になりまたそのサイクルを繰り返す。

 

 その中でもたった一つだけ変わらない季節がある。終わらない季節がある。


 俺達の青い春は、まだ始まったばかりだ。

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