十四話
それから二日後、俺はいつものように学校で寝た振りを決め込んでいた。
警察からは何とか逃げ切れたが走り回ったせいで全身筋肉痛だ。今朝だってベットから起き上がるのも一苦労だった。そのまま学校をサボろうと思ったが母ちゃんに怒られた。
結局天ヶ原さんとはキスをせず彼女の家まで送って、人生初デートは終わったわけだが。改めて路地でもことを思い返すと超恥ずかしい。恥ずかしくて帰った後もソファーで悶え苦しんだ。そして母ちゃんに怒られた。
なんで俺はこう、雰囲気に流されやすいのか。中二病だから話の展開に敏感なのだろうか。もっと敏感にならないといけないことが他にあるだろう。流行のドラマとか女優とかさぁ。
俺はため息を一つ吐いてから背伸びをして起きる振りをした。そろそろ昼飯を食べないといけないからだ。顔をあげ、辺りを見渡す。昼休みなので教室にはほとんど人はいなくて、オタクグループに学級委員長の國生さんにそれから……。
「あ、ルシフェール様。やっとお目覚めになったんですねっ!」
隣の席の天ヶ原さんがニコニコしながら俺を見ていた。そして前の空席に座り直して。
「私今日もお弁当作ってきたんですよぉ。一緒に食べましょうっ!」
ピンク色の綺麗な包みに包まれた弁当箱を俺の机に置いてからそれを開封して。
「ほら、ルシフェール様の大好きなから揚げさんですよぉ。はい、あーんして下さい」
「いや、いいよ。一人で食べれるし」
「そんなことは言わずに。はい、あーん」
両手をお行儀よく添えて俺の口まで運んでくる。
仕方なく、俺はあーんされることにした。
「うん。やっぱ美味いな」
「そうですかっ! 嬉しいなぁ。あ、今日はデザートもありますからね」
そう言ってどこからかスプレー式のホイップクリームを出してきた。
え? デザートってこれのこと? 普通はケーキとか作るために使うのであってそのままは食べないでしょ。俺は絵に描いたようなデブかよ。
天ヶ原さんがスプレー缶を上下にしごきながら。
「これを私の体にピュ~ってかけてデザートの完成です。いっぱいぺろぺろしてくださいね」
「いやです」
「ええー。そんなぁ。わんちゃんみたいに舐めまわして欲しかったのに」
「そんな不健全なプレイ学校で出来ないでしょ」
完全に上級者向けのプレイだろそれ。
俺がそう言うと彼女はしょんぼりした顔から意味深な笑顔に変わって。
「じゃあ健全なことならなんでもしてくれるんですよね? ちゅーとかは健全ですよね?」
「いや、そういう意味じゃあないんでけど……」
「うふふ。それじゃあデザートは思い切り愛を込めたちゅーで決まりですねっ!」
はぁはぁと息を荒げて例の如くエロ漫画で目がハートになったような瞳で俺を見つめる天ヶ原さん。
俺はため息をついて、こめかみに手を当てた。そして心の中でポツリと呟く。
やれやれ、俺はとんでもない子に好きになられたみたいだな。
これにて第一部完結になります!




