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その20,俺には関係ない

 シェロちゃん宅で満腹になった俺たちは残ったザンギを手に(正確には皮袋に)、ギルドへ向かうことにした。


 何故かサキュバスとドライアドまでもが付いてくることになり、いきなりの大所帯だ。俺を先頭に、シェロちゃん、ドライアド、サキュバスが続く。


 先程まで2人だったのが、今度は侍女のドライアドと謎のサキュバスまで引き連れてるんだから注目も当然だろう。見た目もパッとしない俺が、美女を引き連れて歩いているのだ。街の人々の、羨望と憧憬の眼差しが痛いほど刺さってくる。


 人族の男達はサキュバスやドライアドに見惚(みと)れてしまい、パーティの女子に頬をつねられたりビンタされたりと騒いでいる。


 しかし女子はというと、その美しさに嫉妬どころか憧れのような表情で惚けていた。


 今までの騒ぎが嘘のように、ぱっとしない俺とアホのシェロちゃんは空気。グヌヌ…寂しい。まあ、人避けになっていいんじゃないかな!!いやいや、シェロちゃんもアホなだけで見た目は負けていないぞ。



 一段と人だかりのあるギルドの前に立つと、中からは、また賑やかな声が聞こえる。


 初めて来た時とは全く違う重さを感じるドア。


 今、ここから俺の冒険者ライフが始まるんだ。始めるぞ!




☆☆☆




 暗がりに目が慣れてくる。


 とても暗いというわけでは無いが、窓もなく、外の太陽の下とは違う。窓ぐらいつけりゃ良いのに。タバコの煙で視界もあまり良くないぜ。


 煙の燻るその奥、ギルドの依頼書が貼り付けてある掲示板へと進む。


 最初に来た時はなんて書いてあるかすらも分からなかったからな。今は『読む』魔法で全てわかる。

 ただ、すげぇ字が汚いやつも混じってて、こればっかりは大変。読みづらい。どこの世界にも居るんだな。


 とりあえず、手軽そうで単価の高い依頼を探す。


 目立った依頼は、




________________________________


※ランクF向け 迷いペット探し 1000銅貨


※ランクF向け 急募!土嚢作り 2金貨


※ランクF向け 新メニュー考案 調理経験者厳守 採用で20金貨!


※ランクD向け 医務助手 回復魔法使用厳守 1日4金貨


※ランクC向け 急募!ワイバーン 討伐 生死不問


________________________________



とある。



 ふむふむ。迷いペット。

『いなくなった我が家のペットを探してください』か。

 よくあるやつだな。誰でも出来るやつ。


 土嚢作り。

『アットホームな職場で頑張りませんか!地方出身者多数!1か月40金貨可能!! 勤務地:帝都郊外』

 出稼ぎやんけ、どこにでもあるんだな。


 新メニュー考案。

『鶏政では新しいメニューを募集しています!採用された方には20金貨贈呈!』

 あとでザンギ持っていってみるか。絶対美味いからな。


 医務助手。

『初めはお茶の淹れ方から覚えて頂きます。実力により昇給していきます云々』

 ハイハイこういうのはパス。


 ワイバーン討伐。

『牧場で家畜が拐われ困っています。複数パーティでの討伐可能。生死不問。報酬は増減無し、1,000金貨』

 これだ、滾るやつ!冒険者らしい依頼!!しかも高い!

 これでダブルブレストのコートも手に入るぞ!


 とりあえず、メニュー考案の依頼とワイバーン討伐の依頼の紙を掲示板から引きちぎる。ワイバーン討伐に向かうというのを見て、周りの冒険者達もざわめき出す。


「いくらランクB冒険者とはいえ素人だろ。

俺たちランクCの手練れからしてみりゃ、ガキの使いみたいなもんだ。

俺たちのパーティに入らないか?お茶汲みと鎧磨きぐらいさせてやるよ」

いやらしくピカピカに光る鎧を纏った、一回りほど若い冒険者が嘲笑を誘う。周りにいたハゲやヒゲマッチョもそれを聞いてゲラゲラと声を上げて笑ってみせる。


 なんだこいつなんか腹が立つな。ああ、あいつに似てるんだ。あのイケ好かない野郎に。


「ま、ちょっと行ってみるよ」

 愛想笑いでやり過ごす。


「旦那、あんなの軽く捻ってやれば宜しいですのに」


 サキュバスが蔑んだ目で下品な野郎達を見る。そのまるで毛虫でも見るような目、良いですね。


「へえ、わたくしを大樹の守り人(ドライアド)と知って、その主人を愚弄なさるというのは、随分命知らずなこと」


 ドライアドも汚物を観るような冷たい目と口調で、同調する。ゾクゾクする美しさ。目覚めそう。



 シェロちゃんはというと、俺の腕にぴったりと抱きつき、キッと睨みつけている。


「まぁまぁ3人とも。こういう所は実力のある人間が力を持つんだ。俺は俺のやり方でやっていくさ。誰になんと言われようと、俺には関係ない」


 正直こいつらは俺よりも弱いだろう。見た目ばかりが派手で、鎧も盾も剣も、傷ひとつないのだ。せいぜい上手くやれば良いさ。


 踵を返し、ギルドの受付に向かう。

 シェロちゃんが掴んでいる腕とは逆の手を挙げ、ヒラヒラと振る。バイバイ。

 シェロちゃんは歩きながら振り返り、人差し指を目の下に当てて下げ、舌を出した。つまり、あっかんべーっ、だ。


 残る2人もフンッと一瞥すると、何事もなかったかのようにこちらに続く。受付にたどり着く前に振り返り、野郎どもに柄じゃないがウインクする。満面の笑みで。


 なんというか、今は自信に満ちている。



ここまで読んでいただきありがとうございます。拙い文章ではありますが、評価、感想など頂けたら励みになりますのでよろしくお願いします!


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異世界タクシー 〜行き先は異世界ですか?〜
こちらも連載中です。宜しくお願いします。
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