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死に戻りクズ勇者は勝手に生きたい〜こんな奴に勇者は任せておけない!  作者: Masa(文章力あげたい)
聖女・学園編

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第47話 ナナシの回想 勇者と老年の国王

 バルデン王国にやって来たばかりの俺はお金もないので、兵士に志願することにした。 俺はキャスに話しかける。


「キャス、お前は常に俺の後ろを歩け! 勇者の隣を歩いていいのは、勇者だけだ」

「はい、ゆう君。申し訳ございません⋯⋯」


 キャスは、俺の半歩後ろをしずしずと歩く。 出会った頃のキャスはもうどこにも残っていない。 完全に、俺の調教の賜物だ。 当時の俺は満足していたが、今にして思うが、やっぱりキャスはそのままがいいな。 嫌われたけどーー


 兵士として雇われた俺たちは、しばらくの間、城下の警備だの夜回りだのをこなしていた。 


 現れた魔物や亜人を殺すだけの退屈な仕事だったが、俺の剣の腕を隠しておくのも限界がある。 気がつけば俺は、騎士団の中でも頭ひとつ抜けた存在として、上の方に名前が知られるようになっていた。 まあ、勇者だから当然だな!


 そして、ある日。 昇進の通達が来た。 任命式の日、玉座の間に俺はキャスを連れて、王の前に進み出た。 いいだろ? 俺の最愛なんだ!


 「お前が、ナナシか」

 「そうだぜ」

 「ふむ⋯⋯」


 しわがれた声。玉座に腰掛けていたのは、ただの痩せこけた老人だった。 そいつは無愛想に俺たちのことを見ていた。


ーージジイじゃねえか! これが、バルデン国王マルク。 だが、目の前にいるのは、ただの老いぼれだ。


「自分を勇者と名乗っているそうだな」

「ええ、勇者ですよ。何しろ俺ですから!」

「……ふん」

マルクの視線が、俺の後ろに控えるキャスへと移った。 その瞬間、空気が変わった。


「⋯⋯そこの女」

「なんだ?」

「サキュバスだな」


 玉座の間が凍りついた。 キャスは青ざめて、俺の背中にしがみつくようにして震えた。 キャスのタワワが俺に当たる。 最高だったな!


 そうやって、俺が悦に入っているとーー


「サキュバスを、王城に連れ込むとは⋯⋯しかも兵士として雇われていたとはな。 殺す」


 老人が立ち上がった。 枯れ枝のような腕のどこにそんな力があるのか、腰の剣がするりと抜かれる。 その瞬間、玉座の間の空気が一変した。老人の体から、ぞっとするような剣気が立ち上る。


 「⋯⋯マジかよ、このジジイ」

 「貴様! 俺をジジイ呼ばわりだと! ぶっ殺してやる!」


 俺はキャスを庇って前に出た。 ずいぶん短気なジジイだなぁーー


「悪いなジジイ。 キャスは俺のモンだ。 誰にも殺させねえ」

「……ほう? サキュバスを飼っているのか?」

「サキュバスだろうがなんだろうが、俺の所有物に手を出すんなら、相手が王様だろうが知ったことか」


 俺は剣を抜いた。 玉座の間に、金属の鳴る音が響き渡る。

 

 「⋯⋯貴様、自分が何をしているか分かっておるのか?」

 「分かってるさ。 老年のジジイ一人ぶった斬って俺が国のトップに立つ!」

 「⋯⋯ほう? 実に面白いことを言う小僧だ⋯⋯」


 マルクの口の端が、わずかに吊り上がった。 そこからの数分は、俺の人生でも上位に入る激闘だった。 老いぼれているはずのマルクの剣は、信じられないほど重く、速く、そして老獪だった。 一撃ごとに俺の剣が悲鳴を上げる。 受けるたびに腕が痺れる。フェイントの読みが、こちらの呼吸の先を行っている。


 当然俺も負けてはいない。 若さと勢いで押し込み、マルクの息を上げさせる。


 最初は無愛想で険しい顔だったが、徐々に表情を微笑みに変えた。 


 ーー俺は理解出来なかった。 戦いとは虚無なモノのはずなのに、何が楽しいのか、まったく理解できない。


 剣戟の音が止んだ時、俺たちは互いの剣を相手の喉元に突きつけて、肩で息をしていた。


 「ふっ、ふははははは!」

 「⋯⋯なにがおかしいんだ?」

 「気に入ったぞ、ナナシ。久しぶりだ、ここまで打ち合えたのは」

 「俺は気に入らねえな。 年寄りのくせに無駄に強えし、それに⋯⋯」

 「サキュバスの件は、撤回してやろう」

 「は?」

 「お前の所有物だと言うのなら、それでよい。 その代わり、お前は俺の側に仕えろ!」


 剣を引いて、マルクはカラカラと笑った。 俺はキャスを振り返る。 彼女は、マルクをじっと見ていた。 その目には好奇な光が浮かんでいた。 当時の俺には理解できなかったが、今ならわかる。 キャスは、マルクの剣に惹かれていたのだーー


「……まあ、いいぜ。ジジイの暇つぶしの相手くらいは、してやらあ」


 こうして俺は、王の護衛になった。

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