その7
「ついに来てやったぞ西方師団のマジシャンよ‼︎ さぁ尋常に勝負といこうか!」
やっと敵を殺せるという喜びでいっぱいの才人は、大声で屋上へ出る。
しかしそのやる気は空回りすることになる。
「は、ひあ?」
才人の口から間抜けな声が出る。
才人は自分の周りを見渡し、唖然とする。
無理もない。
才人はホテルのロビーにいる。
中には多くの人間がいて、異能戦は行い辛そうである。
突然の瞬間移動に才人は困惑する。
「はぁぁー? なんです? なんで俺がここにいるの? まじで分かんないんですけど。
だって俺は…俺は屋上へのドアを開けて、屋上へ出た。…つもりだったのか? 」
明らかにおかしい。
先程の階段バグに続いて、ワープバグまで発生した。
才人は理解が出来なかった。
マジックの力に頼って生きてきた才人は、並の人間よりも思考能力が劣っている。
「何故?なんで? こういう仕組み? どういう仕組み? 全く分からない。だって俺は屋上に出たよね? なのになんでホテルのロビーに戻って来てるの?」
完全に混乱した才人の独り言を、ロビー内の人間達が怪しそうな目で見ている。
その視線に気付き、少し正気を取り戻した才人は落ち着いて考察する。
少し考えてやっと理解する。
「これが敵のマジックなのか‼︎ 」
恐らくこれが敵のマジックなのだが、今までに受けた影響だけではどういったマジックなのか分からない。
「転送、空間移動、物体移動。 …まさか時間を操作しているんじゃないだろうなぁ。
屋上へ上がる時、もっと模範解答の範囲を大きくしておけば良かったな。そうすればこのワープが起きなかったかも知れない。…面倒くさいことになったな。」
今までの敵のなかではかなりの強敵、というより面倒くさい敵である。
「とりあえず…また上ってみるか。」
敵マジシャンを殲滅するのが目的なのに、まだ出会うことすら出来ていない。
「ここまで苦戦するとは…」
前回、意地になって階段を登りきったが、今度はエレベーターで屋上まで上がることにする。
ホテルに泊まると思われる人間数人と一緒にエレベーターに乗る。
一応エレベーターの中での攻撃は警戒していたが、特に何も起こらずに20階まで上る。
しかし、何も起こらないのはそれまでだった。
「貴様には分からなかろう、[模範解答]。」
突如どこからか声が聞こえる。
才人は慌ててあたりを見渡すが、声の主は見当たらない。
「エレベーターの中で仕掛けるつもりか⁈」
「その通りだ。だが貴様の力には敵わない。ならば計略で勝負と行こうか。」
再び聞こえた声に、才人は模範解答の範囲を広げる。
「ならば、俺の力で叩き潰してやろう‼︎」




