その1
裏路地から出てきた才人は、誰の目から見ても信用されるであろう好青年の風格だった。
誰がこの裏路地には少女のミンチが落ちていることを信じるだろうか。
そしてこの青年が少女を惨殺したことを誰が信じるのだろうか。
誰もそんなこと信じない。
だから躊躇無く手を下す。
そうやって生きてきた。
それが才人の、サイトとしての生き方なのだ。
科学の発展により、人の持つ力の本質が見極められようとするこの時代。
異能の力を持つ人間の存在を公にしないために、異能による異能狩りが行われるようになってから二年。
元々の半数まで減った異能力者「マジシャン」は、自分たちのために他のマジシャンを消す側と消される側に分かれた。
マジシャンの世界は、力が全ての礎となっている。
力をあまり持たない消される側「東空師団」は、力を持つ消す側「西空師団」から逃亡し続けるしか無い。
東空師団は西空師団の虐殺を受け入れ、マジシャンの延命を選ぶしか無いかと思われていた。
だが、東空師団にも希望はあった。
マジシャンには選ばれた神の才能を持った人間がいる。
才人を含む限られたマジシャンである「魔法使い」は、そのほとんどが東空師団の所属なのだ。
たった一人で、複数人のマジシャンを相手にできる魔法使いは二つの師団の力の均衡を保つのには十分な戦力だった。
そのため、西空師団は魔法使いの抹殺を最優先した。
それ故に敵からの攻撃を受けやすい才人は、日々暗殺者を殺すことを日常の一つと捉えるしか無い。
だから今日も一人殺した。
明日もそうだと思う。
この先もずっと…
「一人なわけ…無いか。」
商店街を歩く才人は不意に呟く。
途端、才人の陰から声が聞こえる。
「気づいていたのですか。魔法使い、あなたにはカレンが付いていたはずでしたが?」
おそらくあの銀髪の少女の仲間だろうと考えた才人はこう答える。
「ああ、あの女の子かい?あの子なら内臓ぶちまけてカラスとかにでもつつかれているだろうね。…君もそうなりたい?」
人を殺し続けた才人の性格は完全なる鬼畜である。
それに対し陰のマジシャンは声を震わせながら言う。
「あ…あなたは…許さない…。きっと殺してやる…! カレンにしたのと同じやり方で‼︎」
こいつも殺してやろうと考えた才人は陰にこう言う。
「なら移動しよう。ここは人の目が多すぎる。ただ、急いでね?彼女の肉塊がカラスに食われ尽くされる前にまた会いたいだろう?」
陰は怒りで声も出ないようだった。




