表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SRキャラで、世界の平和を守ります  作者: 依水月
第一章:第三の法則
3/10

第3話 「変化」


(やばい、明日までに提出のプリント、学校に忘れた)

 午後五時になり、春香は翌日に提出するプリントを学校に忘れてきたのを、思い出していた。

 学校が閉まるのが午後六時半で、急げばまだ取りにいける時間だった。

(数学の先生、厳しいんだよな……)

 翌朝の一時限目に数学があり、どんなに頑張っても登校してから終わらせるのは不可能だった。

 怒られるのを受け入れるか、今から急いで取りに行くかを天秤てんびんにかけたとき、春香の中では『取にに行く』という選択肢がまさった。


「よし、行くか」

 携帯と財布をポケットに入れて、家を出る。

 まだ親が帰ってくる時間ではなく、電気を消して戸締りだけ済ませておく。ポストの裏で返しになっている隙間すきまに鍵を隠すと、春香は暗くなりつつある道を小走りで進む。


 学校は広く、半分は森林のようになっているので、進む場所によっては不気味さが目立つ。

 少なくとも、暗くなってから高校生が出入りするような場所ではなくなっていた。


「ん?」

 校舎に入ろうとしたところで、ひとりの女子生徒が歩いているのが見えた。

「黒沢 杏里?」

 進んでいる方向は校舎の裏側で、森林になっている場所。入学したばかりで、迷ってしまったのかと春香は考えた。

(追いかけるべきか?)

 約一分ほど考え、春香は杏里を追うことに決めた。


 ――それが『非日常』の世界へ招き入れる扉であると、この時の春香は気付かなかった。


(誰もいない)

 走って追いかけたはずなのに、角を曲がったところで誰もいなかった。

 見渡しても暗闇が広がっているだけで、こんな時間に女子高生が入り込む場所とは思えなかった。


 その時、何かが割れる音が響いた。そして、岩と岩をぶつけたような、凄まじい破壊音も聞こえてくる。


「きゃあああああ」

 叫び声、それも女の子のものだった。

 一瞬だけ、誰か大人を呼びに行くべきか迷うが、決断するより早く足が動いていた。


 森林でも開けた場所、物音がして頭上を見上げると、何かが木にひっかかりながら落ちてきた。

 どさりと、鈍い音がして着地する。

 近寄ってみると、それは女の子だった。


「だ、大丈夫ですか?」

 見知らぬ美少女。衣服は破け、顔や腕に深い傷があった。腕には、獣に裂かれたようなあとも残っていた。

「あ……」

 意識を確認しようと体をゆらすと、べっとりと生暖かい液体が付着した。

「ハル……くん? これ……を」

 手渡される携帯電話スマートフォン

 ――そして、冒頭のシーンに戻るのである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ