闘技大会決勝Ⅱ
日影の一回戦です。
お気に入り登録してくれる人が少しずつ出てきて、すごくうれしいです。
頑張って書いていきます。
闘技大会決勝トーナメントの一回戦、第一試合では二見が勝利を収め、今は俺の隣で休んでいる。
二見はすごく幸せそうな顔をしているように感じる。
試合に勝ったことが余程うれしかったのだろう。
第二試合ではAクラスの陣野隆康が勝利し、第三試合ではこれもまたAクラスの高木廉が勝ったようだ。
そして次は俺の一回戦だ。
よし、行くか。
俺は待合室のベンチから立ち上がる。
「神谷君、頑張ってね!」
「おう。ありがとな。行ってくる」
俺は二見に見送られながら闘技場へ向かう。
「第四試合、片倉龍 対 神谷日影」
俺の名前が呼ばれると、場内から歓声が上がった。
やはり予選で派手にやりすぎたな。
その歓声の中には
「日影くーん!こっち向いて-!!」
「キャーー!日影君かっこいいー!」
などといった声援まで聞こえる始末だ。
あー、達也にどやされそうだ。
そんなことを考えながら闘技場に入っていくと、そこにはすでに俺の対戦相手であるAクラスの片山龍が立っていた。
彼はかなり緊張しているのか硬くなっているのがわかる。
俺は彼のことを気にするのをやめ、自分の集中力を高めていく。
問題ない、いつでも来い。
「それでは、第4試合、開始!」
審判の先生の合図で試合が始まると、片山はすぐに能力を発動しようとしている。
長引かせず一瞬で終わらせる気なのだろう。
しかし、表情が少し硬いぞ。
「ストーンブラスト!」
彼は大地系統能力ストーンブラストを発動する。
彼自身の最大の精神力をこめているのだろう。
だが、緊張からか精度がよくなかったため、向かってくる岩を俺は能力を使うことなく躱すことができた。
驚きのあまり彼は動きが止まっている。
まあ、自分の最大の精神力を込めた能力を軽く躱されればそうもなるか。
「強化、瞬歩」
俺は強化系統能力、瞬歩で加速し、一瞬で彼の背後をとるとそのまま腕を首に振り下ろして気絶させた。
倒れていく彼を見て審判の先生が、
「勝者、神谷日影!」
と宣言した。
そして俺は再び大歓声に包まれた。
今回はあまり目立たないようにしたつもりなのだが。
どうしたものか。
俺が待合室に戻ると、そこには嬉しそうにこっちを見ている二見がいる。
「ちゃんと勝ったね!おめでと」
「ありがとう。今回は目立たないようにと思ったんだが失敗だ」
「こっからじゃ試合の内容は見えなかったけど、すごい歓声だったもんね」
二見も苦笑いを浮かべている。
なにはともあれ二人とも無事に準決勝に進めたので、よしとしよう。
準決勝は昼を挟んで午後に行われる。
午後にはそのまま決勝戦まで行ってしまうらしく、なかなかのハードスケジュールだ。
そのため、俺と二見はお昼にするため、食堂に行くことにした。
俺たちが待合室から出ると、そこには咲先輩や達也たちが待っていた。
「日影君!準決勝進出おめでとう!」
咲先輩はすごくうれしそうにそう言ってくれた。
「ありがとうございます。次も頑張りますね」
俺はそんな咲先輩に対して、できる限りの笑顔で返した。
咲先輩が喜んでくれるなら、俺はもっと頑張らなきゃな。
そんな俺たちのやりとりを見て、二見はなぜだか機嫌が悪そうになっている。
「日影!お前やっぱモテモテじゃねえか!俺にも少しわけろー」
と達也はわけのわからないことを言いながら絡んでくる。
その横では加藤が二見に
「美紀、おめでとう」
と声をかけていて、二見は照れながらも嬉しそうにしていた。
どうやら機嫌はよくなっているみたいだな。
そういうわけで俺たちはみんなで昼ご飯を食べに行くことにしたら、いつの間にか立花先輩も合流していた。
俺たちは昼食を食堂で済ませ、ドームに戻ってきた。
そこで二見は待合室に向かうため、俺たちと別れた。
準決勝は試合間がわりとあるので、俺は観客席で二見の試合を見ることにした。
二見は待合室に向かっていくとき、
「絶対勝って神谷君と決勝やるからね!」
と意気込んで出ていったので、より試合が楽しみになる。
彼女ならきっと勝つだろう。
俺も頑張らないとな。
この時はただ、そう思っていた。