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その口を塞いでやる

 それはこの場にいる全員が同じ、かと思われたが、あの苛烈なわからず屋だけは違った


「……1つ、聞いてもいい?」


「何? 猫宮さん」


「龍君の力が消えたのも、やっぱりあなたの仕業?」


「仕業って、猫宮さん、そんな言い方――!」

 柚の冷たい言い方を、紫乃は咎めようとしたが、言われた本人である芹が彼女を制止した。


「いいんです先生。事実ですから」


「井川さん……」


「猫宮さん、あなたの考えてる通りだよ。私が否定したから、龍君はあぁなってしまった。だって、信じられなかったから! 青山君が、殺し屋だったなんて……けど、そのせいで青山君は……本当にごめんなさい!」

 芹は土下座しそうな勢いで謝罪した。が、


「……言いたいことはよくわかった。だけど……」

 柚は芹の前まで移動すると、頬を思いっきりビンタし、殴り飛ばされて倒れた彼女の胸ぐらを掴んだ。

 血のように真っ赤なデビルアイと化した両目。柚の怒りがちっとも収まっていないことを物語っていた。


「『信じられなかった』? ふざけないで! あなたのその能力が、自分勝手な現実逃避が、龍君を危険に晒したんだよ!? 能力がコントロールできないのを理由にして、恩人を傷付けた責任から逃れるなんて、最低よ!」


「そんなつもりじゃ……ごめんなさい」


「私に謝ってどうするの? というか、謝ったからって許されるなんて思わないで。龍君が生きてたから殺さないでおいてあげるけど、私はあなたを絶っ対に許さない! 常に後ろ向きで、自分で何とかしようとする強さも持ち合わせていないあなたなんか、守る価値もない。悔しかったら、私やあいつらを消せばいい。できるんでしょ!?」


「そ、それは……」

 柚の剣幕に気圧されているのもあるが、そうでなくても消すなんてできるはずがない。そんな勇気があったら、最初から誰かを頼ったりなどしないからだ。


「そんな根性もないくせに、色んなものから目を背けて、制御できもしない能力を無闇に使わないで。こっちが迷惑よ! 帝虎さん達は優しいし、あなたが依頼人だから無条件で許してくれるけど、私は違う! 金輪際、能力を使わせないように、私がその口を塞いであげる」

 そう言って柚は馬乗りになると、芹の顔面が腫れ上がるほど強烈なビンタを何度もくらわせた。


「柚、待て! そら、うちらもこいつのことは許されへんけど、流石にやりすぎや!」


「雲雀さん、口出ししないで。飛鳥さん、針に糸を通して貸してください。このバカの口を縫いつけます」


「許可できないわ。柚、やめなさい」

 仲間達がやめるよう求め、大牙や王龍といった力自慢達が物理的に止めようとするが、柚は一向に止まらない。


「仕方ない。縫えないんなら、せめて拳を口に叩き込んで歯を砕き、舌を引っこ抜いてあげる。そうすれば、しゃべれないよね?」 

 最終手段に出ることにした柚は、拳を強く握り締めると、仲間達の声を無視して、全力で殴りかかった。

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