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時には家族よりも友情を

 しかし、その拳が芹にめり込むことはなかった。

 治療を受けたばかりの体を押して、柚の腕にしがみついた龍によって、間一髪のところで止められたからである。


「……柚、やめて。やりすぎだよ」


「龍君……離して。この女だけは――!」

 医務室にいるはずの旦那の登場に驚きはしたものの、すぐに我に返った柚は、離れるよう求めたが、龍は全く離そうとしない。


「柚の気持ちは嬉しいけど、井川さんは悪くない。井川さんは、自ら望んでこんな能力を得るような人じゃないし、僕がこうなったのも、嘘をついて隠してきたことに対する因果応報だと思うから」


「龍、あんた……」


「だから柚、その拳を下ろして。僕はこれ以上、友達の顔がボロボロになっていくのを見たくないんだ。たとえ、そのせいで柚から嫌われることになったとしても」

 友達のために懇願する龍の姿を見て、ペガサスは思った。時には家族よりも友を優先する。それもまた真の友情の形ではないか、と。

 親を亡くし、友や婚約者といったかけがえのない存在を戦争で失い、生き残った友や兄弟のことは顧みることなく、己の存在意義のためだけに使命に没頭する。

 そんなペガサスからすれば、我が身だけでなく、築いてきた絆さえも、友のために投げ出せる龍が眩しく思えた。


 その考え方を尊重するかどうかは人それぞれだが、少なくとも、本気なことだけは伝わったようだ。

 拳から力を抜いて手を開いた柚は、回れ右すると、


「……芹さん。これだけは肝に銘じておいて。あなたがこれからも、そうやってウジウジし続けるつもりなら、私はあなたのことを平気で見捨てるから」

 とだけ言い残して、ブリーフィングルームから出ていった。


 その後、澪も芹の顔の手当てをするために、彼女を医務室へと連れて行ったことで人が減り、ブリーフィングルームは、芹の告白からの謝罪と柚のブチギレがあったせいか、重苦しい空気に包まれる。 

 これでは士気に関わる。そう考えたペガサスは、敢えて明るく振る舞い、新装備のお披露目をすることにした。


「おっ、そいつはめでたいっすね」


「そこまでめでたくはないよ」


「ん? どういう意味じゃ?」


「実は、犬飼源士郎からの攻撃をガードしたことで、ツインドラコスラッシャーが使い物にならなくなってしまいましてね」

 そう言いながら、ペガサスはずっとテーブルの上に置いていたツインドラコスラッシャーを持ち上げた。

 その途端、ツインドラコスラッシャーは、まるで鱗が抜け落ちるように、音を立てて崩れていった。


「まぁ、長年の無理とブランクが祟ったといったところでしょうか。そういうわけなので急遽、突貫で作ったのがこちらです」

 ペガサスはそう言いながら、翼から羽根を2本抜いて1振りし、神々しい輝きとオーラを放つツインドラコスラッシャーに変化させた。


「すごい……綺麗」


「これが、君にとって最後の得物であり、最終兵器でもある神龍の刃。その名もシェンロンスラッシャーだよ」

 急造とは思えない仰々しい見た目に、全員が釘付けとなる。その秘密は新たな素材が用いられた鱗状の刃にある。


 従来のドラコスラッシャーには鋼が使われていたが、シェンロンスラッシャーには、天国のみに存在する爆心地の環境を浄化する核物質・エンジェリウムと鉄を化合した金属・エンジェメタリウムと龍鱗が使われている。

 このエンジェリウムとエンジェメタリウムには、愛や正義といった正しい心を含めた精神エネルギーに強く反応する作用があり、精神力や殺気を力場として刀身に纏うことで、元々鋭い切れ味をさらに増幅させ、爆発的なパワーと手数を発揮することが可能となる。

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