何度目かの朝
咲久、起きて。アン姉たち、多分そろそろ来ちゃうよ」
「んー……うう……」
律に身体をゆすられて、寝起きの脳がぐわんぐわんと揺れる。
ーおかしい、さっき寝たばっかりのはずなのに、もう朝だなんて、絶対時空が歪んでる。それか、これも夢か……。
「ぼーっとしてないで早く着替えて、咲久」
「あ、うん……えっと、どこからが、夢……だっ……け」
「え?」
わたしは、昨晩のことを思い出すと、再び布団にくるまった。
一気に目が覚めた。
そうだ、わたしたち、昨日ー
動揺と、恥ずかしさと、どんな顔で律を見ればよいのかという気まずさと、なんか色々な感情と思考が、冴えてきた脳にぶわーっと押し寄せてくる。
「起きてってば咲久」
「あっ、ちょっとやめっ……まだ脳が目覚めるまで起きる準備の時間が必要で!」
律に布団をひっぺがされそうになり、わたしは何故か必死で布団にしがみついていた。
抵抗虚しく布団は律の手に渡る。
「目、覚めた?」
「あ、はい……お、おはようございます」
「なんで敬語?」
「あ、いえ、じゃなくて、はい。じゃなくて、いや別に」
だめだ、動揺を隠そうとすればするほどアホになる。
ていうか律はいつも通りすぎるだろ。
あ、もしかして昨日のは本当に夢だったんだろうか。
いやまて、だとしたらそんな夢見ちゃうわたしってほんとそれはそれで恥ずかしー
「あとさ」
「はい!」
律が、わたしに背を向けて、支度の手を止めてから言った。
「さっきどこからが夢?とかなんとか意味わかんないこと言ってたけど、昨日のこと夢にされたら困るからね」
「は……ぃ……」
数秒間、沈黙が流れた。
ーコンコンコンッ。
「咲久ちゃん律ちゃーん?準備はできてるかしら?」
「あああはい!できてるよ!」
「嘘、咲久今起きたとこで何も支度できてない」
「ーあ、そうだった」
律に鏡を渡されつっこまれて、自分がまだパジャマで髪は寝癖だらけなことに気がついたわたしは、慌ててベッドから飛び降りる。
「ごめんアンリーヌ、ちょっとまってあと5分!」
ドアの向こうから、いつものアンリーヌの上品な笑い声が聞こえた。
******
「この辺なら誰も来ねぇだろう」
アパートの外で合流し、全員揃ったわたしたち「かたわれの永遠」は、街を出て森へきていた。
今日から魔術の使い方の特訓がはじまる。
「さて、今日だけど、午前中は2人に魔術を教えるわ。それで、午後は街へ戻って律ちゃんはザースのところへ行きなさい」
「ザースのところ?なんで?」
「魔力を抜かれすぎて、魔力不足で昨日死にかけたでひょう?復活したとはいえ昨日の今日だから、念の為検診よ」
「あー、もう大丈夫なのに……」
「こら律ちゃん」
アンリーヌや、他のメンバーも真面目な表情で律をみていた。
やっぱり、きいてはいたけど、昨日は律もかなり危ない状況だったみたいだ。
「……わかった」
律が頭を掻きながら唇を尖らせて頷いた。
「それでいいわ。身をもって知ったと思うけど、魔力は生命力そのもの。その魔力を使って行うのがこれから教える魔術なのだから、慎重に特訓を行うわよ。1日に何時間も練習を行うのも厳禁、いいわね?」
いつも以上に真剣な表情のアンリーヌに、わたしたちも自然と背筋が伸びる。
ー……そういえば、律がザースのところに行ってる間、わたしは何してればいいんだろう。
ひとりで街散策でもしたいけど、律が「ダメ。危ない。家にいて」とか言って却下されそうだしなぁ……。
「さて、はじめましょうか!」
こうして、わたしたちの魔術特訓がはじまった。
お読み頂きありがとうございます!
2人のシーンを書きたすぎてほぼ起床だけで終わってしまいました……。
次話で展開が大きく動かせそうです。
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