6話「アーサーは苦手を克服したい」
「そろそろ何か起こりそうだな……。」
あの後アーサーは姫浜が去った後自宅に戻り、今は自室のベッドで寝転んでいた。
何か企んでいるであろう中山に、姫浜のあの様子。
このあと何事も無く終わるほうが不自然であるし、何か起こることは時間の問題であろうと考えた。
とりあえずあのあと姫浜は自分の屋敷に戻り、中山も今は自宅に戻っていた。
結局中山たちはすぐに解散していたようで、特に何も無かったのだろう。
とりあえず金曜までにある程度やりたいことはやった。あとは月曜日に人海戦術で情報を入手できればいいし、この後の土日は監視は続けるものの特にやることが無かった。
そこで彼はその時間をあることに費やそうと考えた。それは……
(ゲームワールド内のゲームでここまでわくわくするとは…ここ最近ずっとゲームできてなかったからたのしみすぎる・・・!現実世界にはなかったようなデジタルゲームがたくさんあるから、ゲーム世界も侮れねぇな…まあ情報収集の合間にって感じだが。)
そう、彼の世界では、ゲームエリアが発達していたためこういったディスプレイなどの映像機器に映像をながしてやるゲームはあまり発達しなかった。
ゲームエリアが発足する前もゲームはあったが、ゲームエリアが発達してからは需要が減り昔流行ったゲームすら存在していなかったりした。
しかしこの世界ではゲームエリアなどあるはずもなく、こういったゲームが非常に流通していた。
まさやが小学生ぐらいの頃からデジタルゲームをやっていたが、現実世界とゲーム世界ではやはり生み出されるゲームは違うわけで。
そして、彼はまだミッションが発令されていないときに商店街に出かけ、ゲーム販売店に向かってゲーム機器4種にカセットを30枚ほど大人買いし、ルンルン気分で自宅に帰った。結局バタバタしていてやるのは今回が初めてだが。
しかし彼はRPGやFPSなど自分の好きなゲームに手を伸ばしたかったが、今はそれを抑えた。
そう、今回ゲームを買った理由はただ単にゲームを楽しむだけでなく、彼は苦手分野を克服しようとした。そう、彼は今恋愛ゲームをプレイしていた。
おそらく今回挑んでいるゲームは女心を知ることは必須。そう考えこういったゲームで勉強しようと考えた。
あと、もしかしたらこの知識で姫浜の計画といわれているものすらなんとか事前に止めることができるのではないかと考えていた。恋愛ゲームと言えば、好感度を上げ、さまざまな出来事を得て結ばれる。まさにそれを実践すれば、いくら石垣以外の人物に塩対応であろうと、もしかしたらワンチャンあるのかもと考えていた。正直期待はできないが、もしかしたらということもあるためである。
実際はゲームと現実ではかなり違いがあるとよく言われているが、そんなことはどうでもよかった。
彼は現実と恋愛ゲームどちらの知識もないため、そもそも違いが全く分からないのだ。
ということで彼はまずはこちらに手を出した。
一応ラブコメ系の書籍や少女漫画、雑誌なども買っておいたため、そのほかの点に関しても準備万端となっていた。
そしてゲームを起動するのだが、彼はゲームをやりながらも彼らを監視していた。
しっかりとそこはぬかりなくことを進めていた。
(とりあえずすすめるか…目指すはとりあえず一人攻略することだ。)
そういって彼は主人公に名前を付け、ゲームが始まることとなった。
そして数十時間後……
「だぁあーー!!なんでまたバッドエンドなんだよぉ!今回の選択は完璧だろうが!!」
彼は約30時間ほど恋愛ゲームと格闘していたが、彼はトゥルーエンドどころかバッドエンド以外のエンドに行けていなかった。
そう、彼は圧倒的に恋愛ゲームのセンスがなかった。
3つ選択肢があり、一番上を選ぶとバッドエンドになり、真ん中を選ぶとバッドエンドになり、そして一番下を選ぶと、バッドエンドになり……
かれこれずっと続けているものの、いまだにうまくいった試しがなかった。
ある時は、「へへ、攻略情報見るのは卑怯だが、あくまで参考に…そう、今後の参考のために!」と言って攻略情報を見ながらゲームをすると、バッドエンドになり。
まるで自分がヒロインかのようにふるまい、自分が言われてうれしいことを選び続けた結果、バッドエンドになり…(失礼すぎるだろ!)
そして彼は話を読むことをやめ、存在するすべての選択肢をしらみつぶしに選んでいった結果、すべてバッドエンドになり……
そう、彼はどうあがいてもバッドエンドにしかならなかったのである。
ちなみに今やっていたのは2枚目で、あのゲーム自体が悪いのかもしれないと考えて、今は別のものに手を出していた。これは一時期めっちゃ流行ってたし、万が一にもバッドエンドしかないクソゲーではないだろうと考えた。しかし結果は同じであった。
「はは…俺は終わった……もうムリだぁ……ゲームなんてクリアできないよぉ……」
すでに彼のハートは折れてしまい、涙を流しながら枕に顔をうずめていた。
彼はゲームカセットの恋愛ゲームも、今自分が進めている最高難易度の恋愛ゲームも、すべてに対して心がおられてしまった。
彼はゲームはとても楽しむタチなので、まけても心が折れることはない。
しかし、こうも完膚なきまでに叩きのめされれば、引きこもりの心など簡単に壊れてしまうわけで…
彼はこのままふて寝してしまおうと考えたが、彼は一応彼らを監視しているという立場にいることを思い出し、あわてて起き上がった。
(ふう、相変わらず3人とも家にいるな……)
そう、心が折られてもしっかりと監視だけは続けていた彼。
お昼ごろに中山と石垣が出かけていた以外は特に彼らに外出してる様子はなかった。
姫浜はあれからずっと家にいるようだった。
そして現在の時刻は23時。早い人だとすでに寝ている時間であった。
さすがにもう外出はしないだろうと思ってはいるが、念のため自身が眠くなるまでは監視を続けようと考えていた。
ちなみにまさやは毎日2時間ぐらいしか寝なく、起きようと思えば1ヶ月くらいは余裕でおきていることができた。
とりあえず朝の3時くらいまで監視を続けて、そこから2時間だけ寝ようと考えていた。
そうして彼は大きく伸びをしたところで、突然『ピンポーン』っとインターホンがなった。
(誰だ……誰か尋ねてくるなんて初めてだぞ。しかもこんな時間に……)
そう、特に通販も頼まなく、友人もいない彼の元にだれかたずねてきたのは初めてのことであった。そのため、彼は最大限に警戒を高め、もしかしたら夜行性のN〇Kの集金の人が来たのかもしれないとも考え、とりあえず彼は玄関に出向くことにした。
扉に覗き口はあるがゲームによっては死亡フラグになるため直で玄関の扉を開けた。そしてそこにいたのは……
「あら、御機嫌よう。近江まさやさん?いえ、アーサー様と呼んだほうがよろしくて?」
そこには、黒のゴスロリの姿に身を包んだツインテールの黒髪の少女が立っていた。
釣り目と無表情の上に浮かぶ微かな微笑みが、どこか神秘的な雰囲気を醸し出していた。
そして、その少女の正体とは……
このゲームワールド以外で見た顔、つまり現実世界の住人であった。
ゲーム総合規定協会が定めるランキングにおいて、
総合ランキング2位、総合戦闘力2位、男性人気ランキング1位、トリッターのフォロワー人数1億2000万人
名は【黒撫四夜香】またの名を“黒きシモ=ヘイヘ”
そう、アーサーと同じゲームプレイヤー、しかもアーサーに次いで総合ランキング2位を勝ち取った人物であった。