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吐出口  作者: 鈴木
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スズメ

 今住んでいる場所は、以前住んでいた場所に比べてスズメが極端に少ない。

 前の場所では電線の端から端にびっしりとスズメがとまり、それが何本も続くことが珍しくなかった。稲刈りの時期には、茶黄色に色付いた田んぼの横を通り過ぎると、稲の中から一斉に大量のスズメが飛び立ったものだ。それが、今の場所では一羽も飛び立つ姿を見たことがない。

 スズメもいるにはいる。ただそれも庭木の枝に一羽二羽とまっているのをたまに見掛けるくらいだ。かつての勢いを懐かしく思い出すと、少々寂しい気持ちになる。

 桜の下は毛虫だらけの話を数話前にしたが、スズメの連なる電線のそばや纏まって飛んでいる下は当然ながら糞だらけで、そばを通る時はよくよく気を付ける必要があった。だが、数は関係ない、所詮は運だよなあ、とがっくりくることがこの町に来て暫くした頃に起こった。

 自転車に乗って道路を走っている途中、ブラウスの襟に何かが当たったような小さな衝撃を感じ、家に着いてから確認してみれば鳥の糞がべっとりとついていたのだ。

 どんな確率?

 その時を思い返してみても大量の鳥が上空を飛んでいたわけではない。見掛けたのはスズメではない鳥一羽だけだ。しかもこっちは自転車で移動中。鳥も逆方向へ飛翔中。それで落とした糞が襟にのる確率って。……とまあ、大量のスズメからの糞攻撃は回避出来てきたのに、たった一羽からの爆撃にはあっさりヒットしてしまうのだから、運というのは本当に厄介だ。その運の良さ(・・)がクジや懸賞ででも発揮されればいいのだが、欲得にまみれた途端、そっぽを向かれるのだから世の中はうまく出来ている。





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