ハイカーは人智を超えた不思議な力を使い、操縦室へ入った。
ハイカーは一切の物音を出す事なく、機長の背後に立つ。
此の時は未だ副操縦士は、機長の背後に立つハイカーに気付いていない。
ハイカーは両手を伸ばすと、機長の頭をガッと掴んだ。
有り得ない力で機長を持ち上げたハイカーは、機長の背中を壁に叩き付ける。
自分の身に何が起きているのか把握の出来ない機長の口から短い悲鳴が漏れる。
ハイカーは機長の顔を掴むと、機長の口を強引に開けた。
ハイカーも口を大きく開ける。
ハイカーの口内から、ドス黒い靄が出ているのを副操縦士は脅えながら目撃した。
ハイカーは機長の口を自分の口で塞ぐ。
副操縦士の目の前で、副操縦士が尊敬し、敬愛している機長の愛しい唇がハイカーに奪われたのだ!!
「 俺だって未だなのにっ!! 」と言う副操縦士の心の叫びは、此の際、無視しよう。
合わさったハイカーの口と機長の口を通り、副操縦士が目撃したドス黒い靄は、ハイカーの体内から機長の体内へと移動していた。
悪魔から肉体を解放されたハイカーは、意識を失い、其の場に俯せで倒れた。
機長の肉体を手に入れた悪魔は、旅客機を墜落させる為に行動を起こした。
──*──*──*──*──
やや遅れて神父達が操縦室へ現れた。
一部始終を目撃していた副操縦士から事情を聞いた神父達は、早急に状況を把握した。
3名の神父は、倒れているハイカーを操縦室から運び出し、取り敢ず安全な機内へ避難させた。
残った3名の内1名は、避難の出来ない副操縦士を守りながら悪魔に対峙する事となった。
3名の神父と悪魔── 肉体を乗っ取られた機長 ──との激しい死闘が、狭い操縦室の中で繰り広げられる事となった!!!!