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心のシーソー

ブクマが30を越えました。

見に来て下さる方に、感謝です。

「貴方達、よく飽きないわね。毎晩」

 朝、顔を見るなりレイラに呆れられた。

「昨日はエイレスのおかげで盛り上がったからな」

 当のエイレスは、こちらを見るなり顔を赤らめている。

「貴方達、声が大きいのよ」

 そう呟ながら去っていくレイラの顔も赤くなっていた。

「レイラさんも欲求不満なのかもしれませんね」

 いつの間にか隣に立っていたフェネが、少し楽しそうに笑みを浮かべる。昨夜もそうだったが、フェネは少しいじめっ子気質というかSな部分が垣間見える。

 セラドは俺の顔を見るなり、赤くなってエイレスの方へ歩いていった。うん、可愛い。

「レイラさんもそのうち誘ってあげて下さいね」

 それはフェネが楽しむということだろうか……。



 ダンジョンの12階層は、また通常のダンジョンに戻って、敵はゾンビだった。セラドの浄化と、フェネの火の魔法が次々に撃破して、俺やレイラの出番はないくらいだった。

 ボスのグールは、麻痺攻撃も持ったゾンビといった感じだが、フェネの魔法と俺の一撃に崩れ落ちた。周囲にいたゾンビ達も、セラドとレイラで倒してしまっている。

 セラドとフェネがLv10に上がって喜んでいた。セラドはまた魔法を使いすぎたのか、顔が青くなっていたが大丈夫か。


 そのまま13階。少し天井が高く感じていたら、現れた敵はハーピィだった。女性の手足が鳥なのか、鳥の胸から顔が女性なのか。恐めの顔と、突起のない胸に、あまり色気は感じない。

 エイレスが風魔法で引きずり降ろしたのを、俺が魔剣で倒す。フェネが射落とした奴をレイラが仕留める。

 エイレスの魔法は、なかなかの威力を発揮した。複数の標的を捕らえて、地面に拘束した上で、風の刃がハーピィを刻んでいる。俺は自由の利かない敵を倒すだけなので、楽だった。

 ボスは青い毛並みのハーピィで、一回り大きな感じはあったが、本来の空からの機動力を発揮できぬままに仕留められた。

 ドロップ品のハーピィの羽根は、矢の材料になるとフェネが丁寧に拾っていた。

 矢は消耗品なので、フェネの負担になっているだろうか。多めに支度金を渡さないとな。


「矢は自分でも作れるのか?」

「はい、矢ぐらいなら合成で作れますので」

 フェネがあっさりと答えてくれた。

「合成?」

「はい、材料があればスキルで作れます。私は矢や弓くらいしかつくれませんが」

「ワシは薬品などを作れるのじゃ」

 エイレスがくいくいと俺の袖を引く。ボードには文字が書かれていた。

「簡単な護符を作れるみたいですね」

 みんななにがしかのスキルを持っているようだ。レイラを見ると、つつっと視線を逸らせたが。

「わ、私だって武器の手入れくらいなら……」

 うん、それは合成じゃなさそうだ。でも手入れか、魔剣は使い切りだが問題ないのだろうか。

『血糊の類さえ、拭ってくれれば、刃こぼれなどはせぬよ。主の小手もミスリルだからほぼ手入れはいらんはずだ』

 ありがたいことである。

「俺も何か作れた方がいいのかな?」



 夕食の後、フェネはレイラ達と話があるからそっちに泊まると出て行った。

 寝室にセラドと二人。久しぶりのような気もする。セラドは身支度を整えた後、俺の正面に座った。何か言いたいような雰囲気を感じた。

「どうした……んだ?」

「ワシは……いじめられるのは好きじゃないのじゃ」

 昨夜はちょっといじめ過ぎたらしい。かなり思い詰めた表情に、罪悪感が沸く。さらにセラドの瞳からは涙がこぼれ落ちた。

「それ以上に、ワシはソナタに嫌われとうない……」

 小さな体を震わせながら訴えかけてくる。

「ソナタの周りには、魅力的なおなごが集まる。ワシはこのような幼い体でしかなく、多少見繕ってもたかが知れておる。ワシは、ワシは、飽きられるのが怖い……」

 俺は知らぬ間に、そんなに不安にさせていたのか。セラドの声を聞けてなかったのか。

 かつての弱い自分を重ねて見ていた少女は、それでも自分の意志を示した。俺とは全く違う、強い心の持ち主だった。

 その尊い体を抱きしめた。

「ごめん、セラド。俺が悪かった」

「え、いや、ワシは……」

「ずっと無理させていたのに、気づいてなかったのか、俺は」

 神術を覚えて、積極的になったセラド。それを怖いくらいに感じていたが、それは無茶の表れだった。彼女なりの必死のアピールだった。それを受け止め切れてなかった。

「セラドごめん、俺の勝手に付き合わせた」

 昔の方が可愛かったとか、恥ずかしがらせればいいとか、俺の欲望を押しつけた。彼女が無理な努力をしている事に気づかずに。

「セラド、俺は女の子は好きだし、助平な事もしたいと思う。欲望を叶えたいと思って、その通りに動いている。でも、俺の相棒はセラドしかいない。俺の方こそ、セラドには嫌われたくない……」

 今一度、セラドをぎゅっと抱きしめ、少し離れてその瞳を見つめる。

「ソナタはずるいのぅ。人を喜ばせるのが上手い。じゃからこそ不安になるのじゃが……」

 セラドの方から抱きしめてくれる。胸に顔を埋めたあと、こちらを見上げる。潤んだ瞳はこの上なく魅力的で吸い込まれる。

 どちらからともなく、唇を重ね、その心を汲み取ろうとする。長く求め合いつつ、どこか臆病に。ようやく唇を離して見つめ合う。

「あ、あのな、マモル。ワシも、その、抱かれるのは、嫌いじゃない……いや、好きなのじゃぞ?」

 愛しい存在を抱きしめ、密着すると反応するところは反応する。それはセラドも感じているのだろう。

「俺もセラドをもっと深く愛したい……」

 俺を見つめて頷くセラドに再び口づけながら、優しく抱きしめた。



 朝起きて、腕の中の温もりに視線を下ろすと、セラドが見上げていた。もぞもぞと動いて伸び上がり、ちゅっとキスされた。

「おはようじゃ」

「ああ、おはよう」

 何かちょっと照れくさく感じる。セラドの浮かべる笑みが妙に嬉しい。

「恥ずかしいな……でも、幸せだ」

「その台詞が恥ずかしいのじゃ……でも幸せじゃの」

 今日も一日頑張ろうと思える活力をもらえた気がする。



 部屋を出ると、丁度フェネが出てくるところだった。

「レイラさんはもう少しかかりそうです。エイレスは好奇心旺盛なので、手を出せば応えてくれそうですが、それはマモルの……」

 不自然なところで言葉が切れた。何事かと思って、フェネを見ると、瞳を潤ませて俺を見返してきた。

「わ、私を側に置いていてくれますか?」

 今更のような事を確認された。

「当然だ。フェネは大事な仲間だし……恋人でもあるしな」

 愛人という表現も微妙なので、恋人にしてみた。

「す、すいません。少し、変、ですね」

 涙を拭いながら、フェネが言う。フェネでも不安になることはあるのか。

「フェネ。俺はお前が好きだし、側に居て欲しいと思っている。何か無理をしているのなら、正直に言ってくれ」

「い、いえ、大丈夫です。申し訳ありません」

 その体をそっと抱きしめてる。僅かに震える背中を撫でてやると、徐々に落ち着いて来たようだ。

「その、セラドさんと、何かありましたよね……」

 ぽつりと呟く。

「何かというか、セラドに無理をさせてた事に、ようやく気づけたというか」

 正直に言うのは恥ずかしい感じもあったが、フェネも同じ様な無理をしているなら、何とかしたい。

「ふふ、マモルは優しすぎるんです。私は、大丈夫です。恩人の側に居られて嬉しいですから」

「そう……か」

 まだ何か抱えてそうではあるが、今の俺ではそれを汲み取れない。歯痒い思いだが、フェネが言い出せないなら仕方ない。時間を掛けるしかないのだろう。

「それでは、支度をしてまいります」

 フェネは部屋へと入っていった。


 朝食の席では、フェネもいつもの様に振る舞っていた。でも、何かあるなら誰かに相談すべきか。ファイナなら、答えてくれそうだが、今は距離が遠い。

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