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「タバコを、合法ドラッグと替えたんだ。それも、法スレスレのヤバいやつと」
素裸のまま平然と解説するワープだ。
「今、三人は、それぞれ、自分がもっとも恐怖している幽霊に追いかけられている幻覚を見ている。それを解除するには、今日の最終便の船に乗ればいい。そう、暗示をかけたんだよ……」
「そんなの、レンタカー使えば楽勝じゃん」
「いまは、昨日なんでね……」
「あ、そうか」
「ま、こっから西郷港まで、ルート距離で約25km。頑張ればなんとかなるさ……」
「……」
その結果は昨日知っている。思わず無言になるドールだった。
「失敗すれば、毎夜連れ戻される、というのは?」リューシィが訊いてくる。
ワープ、悪びれず答えた。
「嘘です。ドールによると、魔法は24時間で切れる、とのことですから、一日たてば、自動的に放免ですよ……」
「そっか……。じゃあとは、わたしらの問題だけね……」
そう言って口を閉ざすリューシィだった。この“わたしら”とは、ここにいる三人のことではないことは、今更言うまでもない。
島家の借金問題だ。
「……」
「……」
思い出すように顔を赤らめて、
「そろそろ、服を着なさい。て、ダメか……あはっ」
健気に明るく振る舞う。
そのリューシィの言葉で動き出した男たちであったが、そのとき。
「ドール!」
偶然に沖を眺めていたワープが、相方に大きな声をかけたのだった。
なぜ、ワープはドールに声をかけたのか?
それは、今、三人の立つ、その位置的に、そうなったか――
あるいは、心理的にそうなったのか。
とにかく大人ワープがドールに声をかけ、その迫力にドールが言われるままに即座に行動をおこす――
「ローソクを両手で捧げ持つポーズ……!」
ドールが要求に応えたその瞬間だった。待ちかねたかのように、奇跡が起きた。
今にも降り出しそうな暗い分厚い天が、その一瞬だけ、割れたのだ。
その瞬間、“天使の階段”とも呼ばれる日差しが海面に差し渡されて――
海面が、その一点だけ、燃えるように光り輝いたのであった――
ワープ、迷わずシャッターボタンを押す。これこそのちに――
「暗い海原をバックに、希望の光を灯す美少年……」
ビキニの美少女リューシィにして、本気で歯ぎしりさせた一枚になるのであった。
さぁ――!
ワープはその一枚をものにした後、速やかに元の「ボヤ顔」に戻り。
ドールも魔法を解き、ここにすっかり元通りのワープ少年を迎えることになる。
ただ、微妙に態度がぎこちないのは、彼らが成長したワープの姿を見て、「“黒髪のプリンス”」とのたまった一点にあるのだが、これに関しては、誰もが、今はただ、“気がつかなかったふり”を押し通すことに……。
ワープは“自分”に戻った後、例の旅行鞄を使って“OG”を行い――
ドールにあてがったのは、近世欧州風の、しましま模様の、男性用ワンピース型水着で、これは意外なことにも、当人から想像以上の感謝の意を贈られたのであった。
ワープ本人のは、通常の海パン(黒)と、白いジャケットだ。
そして――
「もう、団体の観光客も帰ってるだろうし。現在に戻ります」
ドールがそう宣言し、その通りの結果を迎えた彼らなのであった。




