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「おやおや、お揃いで……」

 そう下卑た声を浴びせられたのだ。振り返ると、なんたることか――

 あの、DQN三兄弟だった。

 なんという――偶然! ワープそしてドール、そろって片手で顔を覆う。

 トリオ、いやらしい目つきを、ドール、そして今は過分にリューシィに向けている。リューシィ、険しい表情で、守るように胸前で腕を組んだ。


「……」

 ワープ、ため息だ。

 なんたって、場所が悪い。

 ここはどん詰まり。逃げ道は三人組が塞いでるのだ。加えて――

 嗚呼、ここは、第二展望台! そんなに賑わってない、観光スポットなんである。

 本当のことだよ。逆に、何でコイツらがここにいるんだと不思議に思うほど、人気(ひとけ)がない。

 こんななら、さっさとゴールしとけばよかった。

 後悔は先に立たずで、今はとにかくワープが一歩前。代表に立つのだった。

「なんのご用で……」

 金頭のいちにいさんが、シシッ、と笑った。


「あれから調べたんだ。おい“弟”くん。さっきは見事に騙されたワ。誰よお前? コケにしてくれよってからに。どうオトシマエつけてくれんねん?」

「弱者の知恵というものですよ。兄さんがたにおかれては度量よく、放っといてもらえたら、永久に褒め称えさせてもらうんですがね……」

「いいよ」

「え……?」

「ボヤ顔。お前は放ってやるからオンナおいてどこへでも行けよ今すぐ」

 三人、遊歩道への道を開けてニヤニヤ顔――

 さすが本土のヤクザは手に余る。顔をしかめるワープだった。


 それでも頑張るワープだ。

「警察ざたにしますよ?」

 だが今回は一筋縄ではいかなかった。

「それこそ、仁義に悖る行為ってやつじゃねえんかい」

 逆襲してくる。

「どういうことで……」

 ここで、さすが兄弟。トリオが息もそろって、パムホをかざしたのだった。その瞬間、内心で舌打ちしたワープだ。これはマズイ――

「俺たちゃ、このとおり、“プレイヤー”ってヤツさ。そして“お前ら”もな! プレイヤー同士なら、(だま)し欺されは当たり前。多少の荒事ですら、許容される。それがゲーマーの鉄の不文律、暗黙の了解ごとってやつだ。その一番の事例を、ボヤ顔、てめえが披露してくれたんだぜ。おめえに文句は言わせねえからな!」

 とっさにワープ、

「それは、プレイヤー同士、の場合ですよね……」

 最低でもリューシィは、一般地元民として逃すハラだった。ドールと二人なら、何とかなる。だが――


 キュルッ、キュルッ、キュルッ――


 こんなときに、これだった! 

 リューシィのパムホだった。“システム”、まじ、容赦ない!

 努めて平静な表情を装いながら「いいから、対応してください……」そう口にするしかないワープだった。

 硬い顔で画面を確認するリューシィ。一言、「声紋……」と呟いた後、こう発声したのだ。

「『ハロー旅人』……」


 パムホが鳴ったのだった。

 ピコ~~ン……。

 認証成功。


 とたん、トリオが爆笑したのだった。あとはもう――!


 ワープ、迎え撃つも多対一、実力行使に出た三人を止められず、簡単に蹴飛ばされ――転がされる――

「まずは順番!」嗜虐に上ずる声――

 ドールが虜にされ、引きずられてしまう。

「おやめなさい!」

 顔を怒りで真っ赤にしたリューシィが猛烈抗議するも、

「何かやれるんならやってみろよ。もうアンタ一族はお仕舞いなんだよ。オワコン! 今更なにしたって遅いんだヨ。分かるか? あははあ! カネのねぇヤツぁ惨めだよなぁ? こいつの次にたっぷり慰めてやるからそこでオナってろ!」

 言うやいなや、隠し持っていたレーザーシザーのスティックをシャツの奥襟、そしてデニムパンツのサイドに差し込み、抵抗する間も与えず一気に切り裂いてしまう。まさに一瞬の出来事だった。哀れ、綺麗なドール、素裸にされてしまった――

 まず、ワープが不本意ながらも強制認識させられたことには――

 ドールはきっちり男の子だったということだ。

「ああん……?」「なんだお前?」

「野郎だったんかよ……」

 そのドール、目がまん丸。言葉を失い、次の瞬間意識を取り戻し、真っ赤になって胸を隠した。

 だが、不審に思った兄弟に力尽くで体を開かされてしまう。そこには――

 体が思春期なのだろう、男女ホルモンの分泌のバランスが崩れたか、豆のように、わずかにとがったバストトップがあったのだった。いや、たいしたことはないと思うのだが――

 本人にとっては、けっして軽くないコンプレックスであったに違いない。ドールの目ににじむものを、初めて見させられてしまう。


 頭が沸騰した――


「なんだつまんねぇ。じゃあ、お待た~~♪ お姉さんに相手してもらおっかナ~~」


 頭が沸騰して――暗くなった!


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