48
白い、50クラスのスクーターに乗ってきた、彼女のカッコはこれはまた、ステキ! の一言だった。
ピンクのスクール水着に赤い半袖ジャケット。足に金色のビーチサンダル突っかけて、それだけだ。それだけ――
それだけの姿の、女子高生。
「――!」
もうこれはもう、本能なんである。鼻息荒い、興奮しきりな男の子二人だった。
「あはん……!」
家からここまでこれで来た!
街中を、大勢の人の目の中を、これで走り、抜けて来た!
何が彼女をそうさせたのか、ともかく、自分がしでかした事に、さすがに頬を上気させて、「……少し、冒険しちゃったかしら?」と綺麗な声で嘯くリューシィだ。
ただし彼女、見た目ほど甘くはなかった! さっそく二人に尋問してきたのだから。
「約束だから一緒に遊んであげる。でもね、聞くこともあるわよ?
今日学校で、ヨーコちゃんから聞いたわ。それとサイゴー君本人にも聞かされた。なんでも、昨日の牛突きドームで、いるはずのない、わたしの従兄弟を名乗る小学生二人組が、大活躍したそうじゃない(笑)。風貌を聞くとどうやらあなたたち。そうでしょ?
だったら、昨夕お風呂で出会ったとき、君らはわたしのこと予め知ったうえで接近してきたことになるわ。
どうやら敵じゃなさそうだけど、そこらへん、はっきりさせたいんですけどネ!?」
優しくも鋭い視線を向けてくる。
これにはドールが堂々、受けて立った。
「真実です」
笑いたくなるほど、はっきり言い切る。
でも、実際、その通りなのだから仕方ない。
「ボクらは、昨夕に初めて、しかも偶然に、リューとお会いしたんです。そして、遠目にですが、二番目に会ったのが、昨日の昼過ぎのドームだったというわけです」
ドールは昨夕同様の潔さだった。でも、これには笑ってしまうリューシィである。
「いくらなんでも、とてもとても――受け入れられる話じゃないわ?」
対してドール、
「もちろん、納得いくように今から説明します」
自信を持って言葉にするのだった。
「リューシィには、まず旅ゲーのプレイヤーとして、登録をお願いします」
真剣に見つめる。
対して、軽く肩をすくめる彼女だった。「わかったわ。とことん、つきあってあげる。その約束だったもんね」
パムホを手にして――
五分とかからず、全ての登録が完了する。
「では早速、これから、ボクたちと、一緒に旅してもらいます」
「どうぞ……?」
「コースは、ここから、あそこ。ローソク島展望台としましょう。海に近い、第二展望台の方です」
そう言ってドールはマップを配布する。
「ローソク島ね……」
島民たる彼女は言わずもがな、これはワープにとっても知識のある場所である。
夕日を背景に海上にそそり立つ、ローソク状の岩島の画像は、おそらくは日本人の大多数の人たちが、一度は目にしているだろう。それほど有名な観光スポットだった。
(ただし、夕日を炎に見立てるのは船上からしかできない)
(引用元 http://oki-dougo.info/data01/room/sroom/sroom_nature.html)
「ここからだとちょうど真北へ、ライン約800m。1km未満ですが、ライン高低差が190mですので、基本点1点はゲットできます。そのほか、海から海のコースですから、スペシャル点も多少は期待できるでしょう。そこで――」
ワープに顔を向ける。以下はお前が話せ、という顔だった。
ワープ、受けた。
「そこで、お姉さんと契約したいんです……。
ゴールが見事成立した暁には、ぼくとドール、二人の獲得ポイントを全部受け取ってください。
僕らの旅に新たな仲間として参加してくださる、ご祝儀と解釈してくれたら嬉しいです。
この条件で、ぼくらのお誘いを受けて頂きたいのです……」
リューシィは大人の余裕の笑みだった。
「ライン約800m。つまりマージン約40m。激せま。そしてこのマップのとおり、ゾーン内に道はない。始めっから、ゲームは“成立しないことがわかりきっている”。旅ゲーをするとして、ハナから、無駄骨折りをすることが確定している。つまり――
記念になるはずのわたしの最初の“旅”で――
君たちは、得られるはずのないポイントを餌に、わたしを徒労に誘うってわけね?
点数の多寡ではない。行為そのものが問題なの。
これは、世間では、侮辱というのよ?」
さすが、高校生は理屈だった。小学生では歯が立たない。
でも、ここでドールは受けた。
「本題は、“真実の説明”です。必ず納得して頂けると思ってるからこの“旅”を提案しています。
そして、その過程で、旅ポイントも得られると申し上げているのです。
これを侮辱と決めつけるのなら、それこそボクらに対する侮辱ではないでしょうか」
すれすれの弁舌を振るう。ワープもたまらず口添えする。
「リューシィお姉さん。どうか、ぼくらのゲームに付き合ってください。お願いします……」
やがて、息をつくリューシィだった。
ニコッ、と微笑む。
「――まぁ、最初から、つきあう気で来たんだし、ね」
安堵の息つく小学生の二人だったのである。
だけど忘れてはいない。契約を三人のパムホに入力、抜け目なく許諾させるあたり、子供といえど流石の熟練ゲーマーだった。
「さぁ、お手並み拝見!」
リューシィの面白がった、綺麗な声があがる。
それが凍り付いたのも、そのすぐあとのことだったのである。
15:00。ゲームスタート。
きゅんっ。




