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がワープ、県道44号上にて、無念の停止だった。
ひたいに、夏の暑さとは別種の汗をかいている。
「どうした?」
「――きみには見えないだろうけど、今、ぼくの目の前に、砂漠が広がってんだ。
青空のもと、黄色く広がる砂の大地だ。これもまた、隠岐島の可能性の一つの姿なんだけど、それが今、出現した……」
「右折の道は分かるか? ここから、たった十メートルくらい先なんだけど」
「砂に覆われている……!」
ドール、肩を安心させるように叩いた。
「オーケー。ボクがキミの目の代わりになる。ボクの声のとおり進め。なんなら、目をつむってくれてもいいぞ」
「――!」
「大丈夫だ! ボクらは二人なんだぜ。キミ一人だけだったら、あるいは砂に車輪を“本当に捕られたり”するかもしれない。ハハ! だが今、“ここ”に、キミのこの背中に、このボクがいるんだ。相方にヘマさせっかよ。任せろ――!」
一世一代の、勇壮なる言葉を吐いたのだった!
感極まってワープが応える――
「きみは、男前だなぁ……!」
「それ前に聞いた」
「無限のぼくの、大絶賛を浴びせさせてもらう……!」
「だからキモいって、アハハハハ!」
「ハハッ!」
「よっしゃッ!」
「行くぞ!」
――こうして。
おそらくは最後のトラップを二人がかりで、無事、突破――!
ルートに復帰し、順当に走行再開!
途中、300mクラスのトンネルをくぐるも、
「このていどならギリ問題ない」
「少し残念……うふっ」
「逆に、キミの性根の方が変質するんだよな!」
「撮影会する……?」
「助平」
――などと応酬しあい、トンネルを出て。
ついに左の法面、山壁が切れ――
青のひと筆――
来タ。
二人して叫んだのだった。
「海だーーーーーッ!!!」
あとはもう――!
興奮の、身を突き動かすままに、スクーターを走らせて。
きれいな小川、代川橋手前で左折! 港へ至る小道に進み。
川の流れに沿いながら、この川の水の流れ行く先――
代港へ、小さな、大ゴールへ向けて。
二人とも歓声を上げっぱなしで!
港の施設、といっても小屋みたいなものだけど、施設が見えてきて。
その横を素通りし、小規模ながらも埠頭の立派なコンクリ面の上をどん詰まりまで。
スクーターを降り、息弾ませ、二人競うように石段を登り防波堤にあがる――
そこに――
「!」「!」
堂々と、風吹き青く広がる、夏の大日本海! 祝福するように日の光にきらめき、これこそ日本の海、強情なまでに実直に、力に満ちたその海流の太き姿を、惜しげもなく二人に開き見せてくれていたのだった。嗚呼、その誇り高き光景よ――ッ!
二人してバンザイして吠えた!
「うおおおおお――ッ!!!」
――!
到着タイム、12:31。TT以降、60分!
記念すべき二人のコンビ走は、ここにゴールを真っ当に迎えたのであった!
ぴこ~~ん……。
ピコ~~ン……。
両方のパムホが同時に鳴る。ワープが声に出した。「得点――」
「――基本点16pt、ボーナス点10pt、スペシャル点10pt、合計36pt……」
「意外に付いたな、おい?!」声が弾んでる。
「牛突きドームの画像が効いたんだろうねぇ……」
「海から海へのコース取りもよかった。ウフフ!」
そしてこのとき、またしても二人のパムホが鳴ったのだ。
ピロピロリ~~ン……。
二人してそれぞれ画面を覗き込み、そして顔を上げ、そのほどけそうになる顔を我慢して、精一杯に厳粛に、言葉を掛け合ったのである。
「おめでとう、“MI”ランク……ドール!」
「おめでとう、“MI”ランク、ワープ!」
そして晴れやかな笑顔だ。
「遠い道のりだった……!」
「過ぎ去れば、一瞬!」
おお――!
あとで思い返すたびに赤面することになるのだが、このときは、純真に――相方を称えるハグを、しあったのである――
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