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「まず始めに、サイゴー家と島家(1)の間で、金銭の貸し借りがあったらしいんだ。
その額を、仮に5ptとする。
島家(1)の資産であるホテルの価値を、仮に10ptとしよう。
サイゴー家は借金の形に、そのホテルを寄越せと言ってるわけで、これが基本構図となっている」
ドールは一口飲んで続けた。
「島家(1)にしてみりゃ、5のものに10。そんなの飲めるわけない。かと言って他に手はなく、どうにも困ってしまったんだけど、そんなとき囁かれたのが、リューシィの存在ってわけ。
親戚、リューシィの島家が(2)ね。
島家(2)が、リューシィのため貯金してた学費の額を、仮に3ptとする。
サイゴー家はその3ptをくれたら、残金はとりあえず猶予する、ともちかけたんだ。
そりゃ、島家一党、いろんな思いが錯綜してぐらつく。動揺するだろう……。
現在、そんな状況らしい」
「島家(1)には現金はないの……?」
「動かせる現金を支払ってのちの、残金5ptさ」
「なるほろ……」
ドール、一つ頷く。口を結ぶ。
そして開く。
「で、以下ボクの予想だけど――
島一族は結局、サイゴー家に、3pt差し出すと思う」
「むむ……」
「その代わり、ホテルは、地元に残ることになる、リューシィが、継ぐことになる、と思う」
「そりゃそうだろう。そうなったら、そうならないと、誰もが釈然としない……」
だがドール、冷徹に続けた。
「そのあと――
サイゴー家は手のひらを返すと思う。ただちに残金2ptを支払え、と言い出す。
そして、できないのなら、リューシィを嫁に寄越せ――となる。
サイゴーの兄ちゃんは、リューシィとホテルを2ptでゲットすることになるわけだ」
「……」
ワープは物も言えず、両手で顔を覆ったのだった。
顔を上げた。
「――そもそもの始め、なんで島家(1)は、サイゴー家からお金を借りるコトになったのさ?」
ボトルを処理ボックスに捨てて、チャッ、と自分のパムホをかかげるドールだ。
「ズルワザだけどお金をかけたよ。“ニュース・ラボ”と“うわさチャンネル”に、検索をかけてみた。10ptかかった。今回は赤字だ」
「半分だすよもちろん……。で?」
「本土資金にM&Aを仕掛けられたらしい。敵対的買収の意味でだ。
表だった直接的攻撃のほか、“地元金融”を覆面にした、迂回攻撃も喰らったらしい。意味、わかるよな?」
ワープ、またもや言葉を失う。
「成功すれば、サイゴーの兄ちゃんは、本土に召喚。それくらいは裏取引してるかもね。
そうなったら、リューシィはていのいい“現地妻”だ。島から、一生、逃れられない。
サイゴーの兄ちゃん一人だけウハウハ。“これが、ゲームだ”の、クリア状態……」
「……」
「……」
かんかん照りの青空に、迷いの海猫が飛んでいく。
そんな一時だったのである……。




