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人数が多いのは、社会見学の学生さんという団体客があったからのようだ。
服装、歳、背格好から、高校生と当たりを付ける。
となると――
本能的にリューシィを探してしまうワープであり、そして即座に見つけてしまうワープだった。
あちら側の中段席にいる。
挨拶しに行こうとして――その奥襟をドールに捕まえられてしまう。
「わっ――なにすんだよ……」
「ダメだからだ」
「なんでだよ……」
「“今”の彼女は、まだ、ボクたちを、“知らない”からさ」
「……」
いいかげん――!?!
言いたいこと、聞きたいことが、頭に渦巻くワープである。
――!
それでも、我慢して、その場は自分を抑えたワープなのであった。
引率の先生が太い声を飛ばす。
「この牛突きはなァ、約900年前だ。承久の乱(1221年)で、この隠岐島へご配流となっちまった後鳥羽上皇をお慰めするためにだ。おめぇらのご先祖様、当時の島の皆様方がおっ始めたのが、起源なのだ――」
このセリフ、リューシィにはどう聞こえたか。やきもきするワープ。
「全国的にみてもわずかに残るのみとなってしまった闘牛の伝統。当然、日本最古の歴史を持つ。だからと言って――
おまえらに“誇れ”、“楽しめ”っつったって、無理な話だろう。ぶっちゃけ先生にもとらえどころがない。現代において、文化的遺産とは、こんなものなのだろうか。
だから、無理は言わん。どういう形であってもいい。伝統の重み。1000年近くもの伝承のその、人々の思いを感じ取れ。あるいは想像しろ。そこから、現代における自分の存在を理解するのだ。わかるか?
レポート提出だからなぁ!」
エ~~ッ! それこそムリ~~! というまるでお約束な悲鳴が上がって、自由解散となる。学生の群れがバラけ、個々、動き出した。




