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14 出立

それから10分もすれば商会の人たちで食堂はいっぱいになった。

既に全員が着席し、目の前には温かいスープとパンが置かれている。


「それでは今日を送れるという感謝をガーラン商会に込めて」


「「「感謝を込めて」」」


「感謝を込めて……?」

食事が始まると今日は一日中受付の前だの、苦手なところとの商談だのといった話が飛び交い始め賑やかになった。


「ねぇ、ノン。今のは?」


「あの挨拶のこと?それは」


ノンが何か言おうとしたところに目の前で食事していたガーランがかぶせるようにして言う。


「そいつは俺が決めた飯の時の挨拶だ。なんか喋んねぇと締りがねぇしかと言って俺たちはお行儀正しい教会の奴らのように神様に祈るわけでもない。結果毎日俺たちを生かしてくれるこの商会に感謝して飯を食ってんのさ」


「私の台詞……」


「わりぃわりぃ!許してくれ!ついつい言いたくなっちまったんだ!」


がっはっは!とガーランが笑う。


「私のところはいただきますってだけだったなぁ」


「そいつもシンプルでいいんじゃないか?」


「私が会長になったらこんな恥ずかしい挨拶からそれに変える」


「おおぅ……恥ずかしい……って……結構いいもんだと思うんだがなぁ」


「それほどでもない……ガーラン。」


何かを思い出したようにノンがガーランに声をかけた。


「ん?なんだ?」


「リグルはいつから学園に通うの?」


「さぁ、なぁ。多分今日にでも連絡が来るんじゃねぇか?……っと噂をすれば……ちょっと失礼するぜ」


ガーランはそのまま席を立って食堂を出た。


「ガーランさんどうしたんだろう?」


「【点を結ぶ者】だと思う」


「【点を結ぶ者】?」


「そう。確か銀貨数枚と引き換えに遠くの【点を結ぶ者】を持っている人と会話ができるっていう頁」


「そんな頁もあるんだ」


「えぇ、本が開けるようになると生活がとても便利になる。リグルも早く開けるといいね」


「うん!そういえばノンの本の名前はなんていうの?」


「【その身を盾に】っていうの。本の名前が何で決まるかは知ってる?」


「うぅん?わかんない」


「本は最初からある程度書かれていて、歳をとったり何か大きな出来事が起こると白紙のページが増えていく。ここにいろんな便利なページを模写していく。それと最初に書かれている頁。第一章って言うんだけどそれに合った名前が本につく。この前話したとおり本は人生と共に成長していくから、この頁は最初に本を開くまでに経験したことってところかな。」


「じゃあ【その身を盾に】って……?」


「簡単に言うと私の近くに離れたもう一つの物を転移させる力。」


「……?んー?」


「機会があったら見せてあげる。」


「?……うん」


ノンが学校で嫌われているのはこの頁の能力がえげつないからだった。

【その身を盾に】を発動すると例え人間であっても転移させることができる。

結果、相手が弓を放てば相手を盾にといった具合で遠距離攻撃に対して最強といっても過言ではないレベルの防御をすることができるのだ。

ノンは力を十全に扱った結果だと思っているので、卑怯だとは思っていない。


「すまねぇすまねぇ、待たせたな」


「あ、おかえりなさい」


「どうだった?」


「リグルは今日ノンと一緒に学園に来て欲しいそうだ。そこからはアルデミランが案内してくれるってさ」


「そう、それじゃあ何かちゃんとした服を用意しないと」


「そうだな!確かノンの予備の遠征用の服が余ってたな。貸してあげてくれ」


「わかった。それじゃ、行こ。」


「うん。ごちそうさまでしたー!」


二人は食器を下げると二階へ上がった。

既に商会は食堂以外も騒がしくなり、少し熱気を帯びている。


「これが予備。着れる?」


「うん。ちょっと大きいけど大丈夫だよ」

手が袖に隠れるのと膝のちょっと上まで隠れる以外はあまり気にならなかった。


「(小さい子に大きな服ってなんだかアリね)とても似合う」


「そう?ありがと」


えへへとはにかんでリグルが答える。


「(……破壊力がありすぎるわ)それじゃあ学園が始まるまでまだ時間があるからちょっと街を見て回る?」


「うん。そうする」


「それじゃあ荷物用意するから少し外で待っていて。すぐに行くから」


「わかった。それじゃあ待ってるね」


リグルが外に出ると街も既に動き出しているようでちらほらと屋台を組み立てている人や、職人の処の駆け出しの坊主が飯を買いに走ったりしている。


「流石に人も多いなぁ……多分こんなに大きな場所には住んでなかったなぁ」


「お待たせ。あまり無理に思い出さない方がいい。」


数分もすればノンが動きやすい服に着替え、バッグを持って出てきた。

ノンとは夜のお話で過去の記憶が曖昧であることは伝わっていた。

心配そうな顔でノンがリグルの顔を覗く。


「そうかな?」


「そういうものは思い出そうとしても思い出せるものじゃない。きっとその内思い出す。」


「・・・そういうものかな?」


「そういうものよ。行こ。」


「うん!」


前とは違い、まだ準備をしている屋台を見ながらアルデミランと一緒に歩いた道を今度はノンと歩いていった。


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