第2話 侵入者だ
「カイセーイ!」
いつものことのように魔王パトラは俺の仕事場までやってくる。
理由はわからない。
それでも気づけば俺にも部下ができてしまった。
魔王軍には幹部をラクさせる文化でもあるのか、ダラダラしてもいいとか言われている。だが、そういうわけにもいかず、俺はしっかりと検問の見張りをしている。
なぜこんなことをしているのか、それは俺が好きでやっていたことにパトラが次第に要望を出すようになったからだ。
と言っても魔王城の外にいる魔物たちを保護すること以外、特に生活は変わっていない。俺の役割は魔王城を囲む壁の維持が最優先だ。
「パトラ。なにしに来たのさ」
「なにしに来たってひどいなー。見回りだよ。見回り! 私の部下たちがしっかりと仕事をしているかなーって視察? に来たんだよ」
「ほう? ならなんでいつもここに来るんだ? 視察なら他の場所も見に行く必要があるだろう?」
「え? そ、そりゃ……とにかく! これが私の仕事なの!」
沸点の低い魔王様を怒らせてしまったらしい。顔を赤くして怒鳴ってくる。
ここ最近毎日のように視察に来ている気がするが、きちんと説明しないとか?
「ほら、言いがかりつけてないで部下なら部下らしく私に報告して! 私魔王だよ?」
「わかりました」
これでもパトラは俺の上司。
幼馴染なんてのはプライベートでの関係だ。
「仕事はしっかりやってますよ。外の魔物の受け入れ、壁の維持、増強。最初はいろいろと好きでやってたのに、最近は整備してたら要望を出すように、おっと」
「なにかな? カイセイ?」
「なんでもないですよ?」
途中から本音が漏れていた。
まあ、パトラにものを頼まれるのは嫌いじゃないからいいのだが、いかんせん量が多い。
もちろん、スキルの成長になりどれも面白くはある。
「敵対者は今のところいないけど、しっかり安全確認してるし、天気だって子どもへの被害もなく、怪我人もいないだろ? 最近は作物も育ってて順調じゃないか?」
「そうだね。本当になにも育たなかったからねー。感謝感謝だよ」
「どうも。で、おかしな飛竜や野蛮な人間が入ってこないようにしてるし、俺の部下たちもよく働いてくれてる。敷地も増えてるだろ?」
「うん! 文句なし、私の要望全部やってくれてるね!」
「あはは」
全部はできてるのか知らないけどな。
覚えてないみたいだしいいだろう。
他にも俺のスキルの範囲外のことまでいろいろ頼まれているが、それはそれだ。
「……本当は二人きりがいいけど恥ずかしいんだもん。魔王としての仕事もあるし」
「ん?」
「ううん。なんでもない」
急にボソボソ言って変なの。
いつものことか。
「なあ、これ毎日してるけど、本当に必要なことか? 別で報告は受けてるんだろ? そもそも魔王ってどかっと椅子に座ってればいいんじゃないのか?」
「そんなの私には似合わないよ。それに、話を聞く係はしっかり玉座にいるから。前に連れて行ったことあったよね」
「ああ」
でも、誰も座ってなかったような気がするんだが。
「うーん。そんなのいたのか?」
「ふふふ。私を誰だと思ってるの? 雨の魔王だよ? 水を集めて分身を作り、その子からの情報を自分に伝えるなんて朝飯前だよ。カイセイほどじゃないけど」
「俺だって分身は作ろうと思えば作れるだろうが、俺はそんなサボり方してないぞ」
「サボりじゃないもん。お仕事だもん」
「へーへー」
まったく、部下の話を真剣に聞いてやれと言ってやりたい。
あれ、俺の話は聞いてくれてるのか。
そもそも話半分で聞いて全力と同じだけ理解できるくらい優秀ってことでもあるんだろうが。
「というか、分身作れるなら余計ここに来なくてもいいんじゃないか?」
「ふふん。私はどこにでもいてどこにもいないのだから、どこにいても一緒でしょ?」
「ん?」
よくわからない論理で鼻を鳴らしているが、今はそれより城内の気になる気配。
壁の内側がどうなっているのか、俺はすべて把握している。
最近はどこがどこなのか完全に理解して、だいたい誰がどこにいるかもわかる。
だが、今は違う。確実に見知らぬ人間が入ってきている。
いや、理解はしていた。魔物のフリをして入った人間がいる。それでも、魔王軍に助けを求めないと生きていけない人間ならとせっかく入れてやったのだが、宝物庫の前にいる。これは……。
「ねえ、カイセイ。話聞いてる?」
「あ、悪い」
「もう! 部下なら話聞いてよ」
「それは横暴だ。そんなことより」
「そんなこと!?」
「そんなことだ。宝物庫の前に知らないやつがいる。人間だ。パトラなにか許可したか?」
「ううん。してないけど」
本当になにも知らないらしい。
ということはこれは俺が入れた人間で間違いない。
ここで暮らしていくなら、わざわざ盗みを働く必要がないことを思うと、外に出て売り物にでもする気か?
「話は終わりだ」
「どうして!?」
「今話しただろ。宝物庫に知らないやつがいる。俺が対処するからパトラはどこでもいいから報告を待っててくれ」
「えー。でも宝物庫なんて入ってもいいものないよ?」
「宝物庫なのにか?」
「売れるものがあるだけで、強力なアイテムは一つもないし、そういうのはしっかり使ってるはずだし」
「売ったら金になるものがあるだけで理由は十分だろ」
「そうかな?」
「そうだ」
「じゃあ私も行くよ」
「いい」
「ええ!?」
「一人で十分だ。俺に任せてくれ」
パトラとの話は聞いてやりたい気持ちもあるが、防衛を任されているのは俺だ。
近くにパトラがいたほうが力は出せるが、わざわざパトラにいてもらうほどの相手ではない。
そもそも、最近は勇者パーティにいた頃と違い、全力でスキルを伸ばすことができている。
「わかった。カイセイに任せる。無事に戻ってきてね」
「当たり前だ。そもそも遅れを取るようならこんなところで防衛なんて任されてない」
「それもそうだね。カイセイの子たちには私から伝えておくから」
「んー。まあいいか。頼んだ」
「なにその反応」
「それじゃ」
「なにその反応っ!」
パトラに任せるとしっかり伝わるかわからないが、大丈夫だろう。
あれでも俺が来る前から魔王してたのだ。
さて、相手はどんなやつだろうか。
魔王城に乗り込んでまで悪事を働こうとするなんて相当な実力者でありながら、相当な変わり者のはず。
久しぶりに全力で戦えるかもしれない。
いつの間にか周りに感化されて好戦的になっている。
「いかんいかん。あくまで実力の範囲で、な」
新作書きました。
「寝たふりして机に突っ伏していると近くから僕の配信について感想を言い合う美少女たちの声が聞こえてくるんだが!?〜あれ、僕をいじめてた彼はどうなったんだろう〜」
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よければよろしくお願いします。




