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魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜  作者: マグローK
第一章 勇者パーティ崩壊

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第5話 約束を果たす時

「それでは約束を果たしてもらおう」


「約束?」


 黒いのを倒して少しして、水が引いた頃、魔王パトラがそんなことを言ってきた。


 まだダンジョンの中だけど、あれ、俺なんか約束したっけ?


 魔王が出てきて、生命の危機で、生き残るのに必死だったせいか、何を言ったか思い出せない。


 なんか、重要なことを言ってしまったような。


「つい先ほどのことを忘れたとは言わせんぞ。お主は今を持って魔王軍の幹部に任命する。ついてこい」


「え、魔王軍? その幹部? 何かの間違いじゃ。俺人間だし」


「そんなわけあるか。いいから来るのだ。『テレポート』!」


「うわっ」


 俺の言葉も聞かずにパトラはテレポートを使った。


 視界が白飛びし、気づけば近くから轟くような騒音が聞こえ始めた。


 ダンジョンの不気味な静けさは全くなくなり、時折稲光が走るような不穏な天気。


 それでもダンジョンより明るい場所。


 目の前には全体的に黒い、空高くそびえ立つ城。


「魔王城……」


「なんだ。信じていなかったのか?」


「いや、そういう、わけじゃ……」


 キョトンとした表情で隣に立つパトラ。


 あれ、名前だけでなく顔もどこかで見た気がする。


 俺がジロジロと見ると、パトラはすぐに顔をそっぽに向けた。


「さあ、ついて来い。お主に担当してもらう場所へ案内する」


「魔王様。一つ聞いていいですか? もしかしてパトラ・ウォータールって言いましたよね?」


「言った」


「俺の幼馴染にパトラ・ウォータールって言う子がいたんですけど、同一人物じゃないですよね?」


「き、気のせいじゃ。我は魔王ぞ。人間の幼馴染がいるわけなかろう」


 まあ、人違いか。


 それもそうか。後から聞いた話だが、俺が村を壊滅させた時、幼馴染のパトラは見つからなかったということだった。


 死体もなく、誰かが保護したのではないかということだったが、勇者パーティの情報網を持ってしても、どこへ行ったのかほとんど情報が得られなかった。


 唯一得られた情報が、俺が力を使ったその場にはいなかっただろうという噂だけ。


 今さら会ってどうこうということではないが、まあ、期待したのは俺だけだし。


「そうですよね。魔王様が俺と知り合いなわけないですよね。俺の知ってるパトラは、なんと言うか、もっと短気でおっちょこちょいだったし」


「短気でおっちょこちょいって失礼だな! もっと言い方あるでしょ! 久しぶりに会った幼馴染にいうセリフ? あ」


「……え?」


 勢いよく振り向いてきたかと思うと、パトラが突然怒鳴りつけてきた。


 俺の言ったことを気にしているらしい。


 すぐに後ろを向くも、もう遅い。


 どういう経緯か知らないが、パトラは生きていたらしい。そして、魔王になっていたようだ。


「なあ、本当にパトラなのか? 出かけてて助かったって話は本当だったのか? どうしたんだよツノなんか生やして。それにその喋り方なに? 魔王ってそういう喋り方しないといけないの? 俺心配してたんだからな?」


「……」


 今度は睨みつけるように、顔を赤くして俺を見てくる。黙ってるのが怖い。怒らせたってことか?


 あんなでかい魔法陣で、よくわからんダンジョンのモンスターを吹き飛ばしていたんだし、魔王ってことは本当なんだろう。


 魔王城の前に来ても、誰もこないことを思うと、敵襲としてカウントされていないんだろうし。


 だが信じられない、見た目は可愛らしい。もっと昔は男の子っぽかったのに、いつの間に変わったのだろう。


「な、なあ、言い方は悪かったから、謝るからさ。無視しないでくれよ」


「バカ」


「なんだって?」


「バカって言ったの。感動の再会を誤魔化すための照れ隠しなんだから。察しなさいよ」


「無理だって!」


 胸をポカポカ叩いてくるが、俺は人の心を読む魔法は使えないぞ?


「そうよ。出かけてて助かったのよ。村が壊滅してて魔族に拾われたの。当時の魔王が物好きだったからね。人間でも保護してくれたの。ツノはほら」


「と、とれた?」


 どうやら付けツノだったらしい。簡単につけたり外したりしている。


 まじかそんなマジックアイテムがあったのか。


「で、喋り方は恥ずかしいからあんまり触れないで」


「そうなんじゃな」


「触れないでね?」


「すみません」


 笑顔で手を突き出さないでください。


 殺される気がします。


「はあ、そうか。俺がグダグダしてたせいで勇者パーティをクビされてる間に、パトラは魔王になったのか。すげえな」


「そうよ。でも、カイセイも、もう魔王軍幹部なんだから、本来の力を発揮して、実力に見合った活躍をしなさいよ?」


「でもなにしろっての? ずっと見てたなら知ってると思うけど、俺ができることは地味よ?」


 そうだ。だから、気づかれずに勇者パーティをクビにされたんじゃないのか?


「それに、過去にパトラにも迷惑かけてるしさ」


「何言ってんのよ。カイセイが暴走したのは村を襲撃に来たモンスターを撃退するためでしょ?」


「俺がモンスターを撃退? う」


 頭が痛む。


 そうだ。俺は記憶も封印していたんだ。


 俺しか助からなかった記憶を。


 だが、そうか。そうだった気がする。モンスターを撃退。みんなを守るために、俺は力を。


「大丈夫?」


「え?」


 いつの間にか息が切れている。


「ああ。大丈夫だ」


「そう。よかった。でも、カイセイが戦ってくれたおかげで、その間にみんなは避難できたんだよ。それでモンスターも倒せたんじゃない」


 しかし、パトラのおかげで思い出してきた。あれは俺が何もしていなければ誰も助からなかったのか。


「けど、カイセイだけはその場に残され、私みたいな出かけてた者は行くアテを失った。そして、一方は王都へ、一方は魔王領へ行ったのよ」


 どおりでこれまでも似た顔を見てきたわけだ。


 色々と理解が追いつき始めるが、パトラはどうやってダンジョンに来たのだろうか。


 テレポートは確か転送先の登録が必要だったはず。


「パトラはあの時なんでダンジョンにいたんだ? 魔王なら忙しいんじゃないのか?」


「それは、あれよ……見てたから」


「見てた?」


 ああ。そういうことか。監視用モンスターでもいて、俺のスカウトのタイミングでもうかがってたのか。


 それで、モンスターのいる場所をテレポート先に登録しておいて、俺のいる場所に現れたと。


 ダンジョン奥深くで勇者にクビにされるなんて状況なら、他の人間もいないし、格好のタイミングだったわけだ。


「いやあ、パトラが来てくれなかったら、俺、助かってなかったよ」


「カイセイが最初から本気出してたら、私の誘いには乗らなかっただろうけどね」


「いや、パトラが思い出させてくれたから勝てたんだよ。ありがとう」


「い、いいのよそれくらい」


 また、そっぽ向いて言ってくる。


 久しぶりで馴れ馴れしかったか?


 だが、パトラのことを小馬鹿にしたが俺も内心喜んでるのかもしれない。


 間が空いているはずなのに、つい昔の感じで話してしまう。


 まあ、そろそろ話を戻すか。


「それで、俺はここで何すんの? 魔王城の防衛なんてする力、俺にはないよ?」


「え? 何言ってんのよ。あるじゃない。ダンジョンで使った力が」


「いや、あれじゃ周りに迷惑かけるじゃん」


「もうわかった。いいからついて来なさい」


 急に手を引かれてしまった。


 俺は一体どこへ連れて行かれるんだ。

いつも読んでくださりありがとうございます。


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