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魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜  作者: マグローK
第一章 勇者パーティ崩壊

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第40話 操り人形と化した勇者パーティの戦士

「……ガードン?」


 壁の外に変な気配を察知し、俺は魔王城の地下に来ていた。


「俺がどうしたって?」


「俺? ガードン今俺って言ったか?」


「うっ。わ、私がどうかしました?」


 ガードンが言葉遣いの矯正を受けているが、そんなものを見に来たのではない。


「やっぱりガードンはここにいるな」


「だから俺がどうかしたのかって。聞いてるんだ」


「ガードン?」


「や、やめっ。わかりましたから」


 少しは意識が戻ったらしいガードンだが、先代魔王様の扱いは慣れていないようだ。


 見た目が女の子になったということで、かなり遊ばれているようだ。


 俺はあそこにぶちこまれなくてよかった。じゃなくて。


「外にガードンと似た気配を感じたから、脱走できたのかなって思って来たんだけど、気のせいだったか」


 でも、今も壁の外にはガードンと似た気配がある。


 ガードンだけってのもおかしな話だが、これは一体どういうことだ?


「あーもう! 小っ恥ずかしいったらありゃしないぜ。俺はずっとここにいた。ここにいるやつらがそれを証明してくれるぞ」


 先代魔王様から逃げ回りながら、ガードンが答えてくれた。


 そりゃそうだよな。


 あんな見た目の勇者パーティじゃ、先代魔王様をどうにかできるはずもない。


 もし可能性があるとすれば、何か理由をつけて全員でお出かけみたいになる以外には外に出られない気がする。


「にしても気になるね。ガードンはここにいたのに、反応があるなんて」


 うまいこと喋り方を責められないような言い方でバドンが言った。


「バドン様も気になりますか?」


「まあね」


「でも、私たちは何もできませんよ?」


「そうだね。一応立場は囚人だからね。どうするかは決められない」


「なあ、カイセイ。俺を連れて行ってくれよ。やめてっ。くすぐらないで」


 喋り方とマッチしない男らしい喋り方でいつまでもガードンは話しかけてくる。


 そろそろ観念した方がいい気もするけど、長年の癖は抜けないか。


「いや、ガードンは連れてけないよ。戦えないだろ?」


「俺だって戦士だ」


「今はただの女の子だろう? カイセイ、行くなら幹部でも連れて行くといい」


「そうします」


 俺はガードンたちに背を向けた。


「カイセイ。頼む! ここから出してくれ! ここにいたらおかしくなっちまう。助けてくれ! いやあああああ!」


 悲鳴はどう聞いても女性のものにしか聞こえなかった。


 恐ろしいことするな。先代魔王様は。




 俺はひとまず魔王城を出た。


 魔王城の防衛を魔王様から直々に任せれていることもあり、一人でガードンの気配に近づいてみることにした。


 まだ現れてから時間が経っていない。何をしたかったのかよくわかっていない、神出鬼没の人物のヒントが得られるかもしれない。


 そう思って、俺はレーダーの精度を上げてみた。


「あれ?」


 しかし反応は増えない。


 もう消えてしまったのか、はたまた精度を上げるだけでは反応を感知できないのか。


 いずれにしても、相手は霧の魔竜とは違うスキルの使い手ということだろう。


「だが、この雰囲気ガードンか?」


 近づいてみて、レーダーの精度を上げてやっとわかったことだが、ガードンと似ていたものの、全く同じ気配ではなかった。


 いわば兄弟のような、似ていて違う雰囲気。


 しかし、ガードンに兄弟がいるなんて話、俺は聞いたことはない。


 いてもわざわざ一人で魔王城までやってくるか?


「ま、直接見てみればわかるか」


 俺はいざという時のために嵐の鎧を装備して壁を出た。


「うおっ」


 いきなりの投げナイフ、出だしで攻撃するのは勇者たちの必勝パターンなのか?


 攻撃は鎧によって砕け散ったからよかったものの、相手は話をするつもりがないってことか。


「でも、壁も壊せない、と。……は?」


 俺の目の前にはガードンが立っていた。


 表情こそないが、その見た目は明らかにガードンだった。


 力なく肩を下ろした立ち方は、どうもガードンと雰囲気が違うが、ガタイのよさや顔立ちはガードンそのものだ。


 もしかすると、死体がなくなっていたことと関係があるのか?


「うっ。ぶな」


 俺が状況を整理している間にも、ガードンは大剣を猛スピードで振り下ろしてきた。


 あんなスピード、ガードンじゃ出せなかったはずだ。


 俺だって勇者パーティでサポートをしていたんだ。しかも、その役割はただの補助じゃない、仲間に合わせた環境操作。


 どれくらい動けるかんて頭に入っていなければ戦えない。


 当時の俺が全力でできたのは、ちょっと空気を変えるだけだ。自分で一撃必殺なんて芸当はできなかった。だからこそ工夫と知恵は必須だった。


「もしかして、死んでるから限界突破とかか? じゃなんで動けるんだよ」


 生き返った? 確かに、魂だけは分離して今も牢屋に入れられている。


 じゃ、こっちはなんだ? 魂の抜けた肉体だけの存在?


 痛みを感じずに動ける? しかし、そんなスキル使えるやつ。


「まさか、ここまで込みのスキルにやられたってことか?」


 自爆した方か、消えた方かわからないが、俺たちと戦い弱った勇者を襲った?


 いくら恨みを買ってても、こんなやり方あんまりだろ。正々堂々と戦うべきじゃないのか?


「なんとか言えよ。ガードン!」


「……」


 反応はなし、攻撃を続けるだけの操り人形のように感じられる。


 これは俺を馬鹿にしてるのか? そのうえ、かつての仲間まで馬鹿にしてるのか?


 俺だって殺されかけて憎んでるさ。


 今、先代魔王様に遊ばれるのを見て、気持ちは少し晴れてる。


 だが、今のスキルを使って、自分で苦しめようなんて思えなかった。


「あいつらだって生きてるんだ。苦しむんだよ。そんなの嫌いなやつでもわざわざみるような価値はないだろ。後悔すらしないようなクズなのか? こんなことやってるやつは!」


 筋肉も骨格も無視する動きに、時折攻撃が当たってしまう。


 だが、攻撃がぶつかってやられているのはガードンの方。


 それでも、動きが鈍ることはなく、ただ無心で攻撃を続けてきている。


 俺を見つけた時点で、動けなくなるか、俺が動かなくなるまでこうなるってことなんだろ。


「こいつは危険人物だ。次こそ対策しなくては。また、俺の大切な仲間が襲われるかもしれない。今の大切な仲間を守るために」


 俺はそこでガードンを地面に貼り付けにした。


 粘着質な地面を作り、動きを無理やり止めた。


「思考できないようなやつには俺を倒せない。わかったか?」


 俺はガードンを引きずり、魔王城の地下に戻った。


 物言わぬガードンの姿を見ても、誰も何も言わなかった。


 ガードンは牢屋に入れ、鎖に繋いでも前に進もうとするのをやめなかった。

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