第39話 死にかけの勇者
スキルが使えないとわかった次の日から、僕たちの特訓の日々が始まった。
思い出せない以上は、それ以上の力を得るために鍛えなければいけない。
わかってはいたが、こんなことをやってきたとは思えないほど辛かった。
正直もう勇者なんてやめたい。
「ほらほら、その程度じゃ人類を守れませんよ」
「く、くそ」
相変わらずスキルは出ない。
僕は剣に電撃を纏わせ攻撃するスキルを使っていたらしい。
剣が木だったからじゃないか、そんなことをランドリアさんに言われ、剣を変えてもらった。
だが、電撃だけでも出せないのに、剣に纏わせることなんてできない。
そのせいで、スモールドラゴンも倒せない。
「グアアアアア」
普通のドラゴンより小さいドラゴンらしいが、僕たち人間よりは明らかに大きい。
体当たりされただけでも、吹っ飛んでしまいそうなほど大きく、そして速い。
これでスモールなんて、正直考えられない。考えたくない。
「ガードン。デコイというスキルを使えないか?」
「だ、だめだ。どうやるのかわからない」
「じゃ、盾を構えてドラゴンの前に構えてくれ」
「む、無理だ。そんなの」
ガードンが弱気だ。
僕に勝てそうだった時は強気になっていたのに、相手が相手だからか。
「誰かが庇わないと後ろの二人がやられますよ」
その通りだ。武器を握りしめて震えているマジュナとヒルギス。
二人は僕たちよりも肉体的には弱い。
襲われればひとたまりもないだろう。
「そうだ。ヒルギス。僕らの筋力を強化してくれないか。マッスルアップというスキルがあるらしい」
「ま、マッスルアップ!」
「どうだ? ガードン」
「な、なんか力が湧いてきたような」
よし、これで。
「スキルは発動してませんよ」
「「「「え!?」」」」
嘘だ。ガードンは力が湧いてきたって。
ガードンが嘘ついてるのか?
いや、勘違いか。
「スキルを発動して強化された時は体が光ります」
じゃ、ダメなのか? 違うのか?
「ひとまず僕が注意を引く!」
スモールドラゴンがのっそりした動きをやめ、こちらを狙い始めた。
くそう。
僕は勇者なんだ。力はなくとも仲間を守る。
前に出る。勇気ある者、になりたい。
怖い。
「誰かが前に」
「行く!」
僕は前に出た。
「マジュナ。今のうちに詠唱をしてくれ、ファイアボールでいい。頼む」
僕はドラゴンに追っかけられながらマジュナに頼んだ。
悲鳴にも似た声が僕のところまで聞こえてくる。
詠唱がうまくいっているのかは全くわからない。
「ファイアボール!」
マジュナの声が響いてきた。
しかし、ドラゴンには何も当たった様子はない。
嘘だろ。
「ぐはっ」
急に背中に重いものが当たった。
やったか?
いや、違う。やられた。
視界が揺らぐ。
ダメだ意識が。
ドラゴンと戦った後も、目が覚めると僕たちは特訓に戻った。
見えない剣の仕掛けられた中でゴブリンと戦ったり、視界を邪魔されながらスライムと戦ったりした。
弱いと言われる敵ならばなんとかなったものの、少し強いレベルの相手では力が及ばなくなった。
僕たちが勇者パーティにも関わらず不甲斐ない結果を残しているせいか、ランドリアさんの態度が少しずつ厳しくなっていった。
「そんなんじゃ人類は滅ぶぞ! お前ら!」
「はい!」
なんてのは日常茶飯事だった。
戦わされる敵も日に日に強くなり、僕らは寝ても覚めてもボロボロだった。
傷は不思議と治っているものの、精神的に参っていた。
「もうこうなったら最終手段に出る」
「最終手段?」
そしてある日、僕たちの前にいるランドリアさんはそんなことを言ってきた。
「もういいからトーナメント形式で四人で戦え、それでどうにかする」
「どうにかって。それでスキルを使えるようになるんですか?」
「知らん。いいからやれ。今まで教えたことを実践するんだ」
よくわからないが、僕たちはテキトーに戦う相手を決定した。
初戦は僕対マジュナにヒルギス対ガードンに決まった。
「あと、決めるのは最下位だ。上位じゃない」
「どうして」
「いいからやれ!」
「は、はい!」
今さら僕たちはランドリアさんに逆らえなかった。
これで敵と戦う力が手に入るのか?
僕たちは仲間と戦うためにこんなことをしていたんじゃないはずなのに。
「でも、やるからには手加減なしだ」
「ええ。そうでなくては仲間として信頼されていない気がするものね」
僕は剣を構え。マジュナは杖を構える。
掛け声は待ってもこない。
「いくぞ!」
だから僕は声を上げた。
一撃入魂。
負かすからと言って、次に影響を残したくない。
「ふはあ!」
僕は通り過ぎざまにマジュナに一撃を加えた。
マジュナの目が高速で動いた気がした。
何が起きたかわからないといった様子だ。
「……ほう。やっと少しは形になったか」
「僕の勝ちだ」
マジュナは僕の背後で倒れた。
マジュナを少し休ませての二戦目、ガードン対ヒルギス。
「始め!」
僕が声をかけると、ガードンは走り出した。
ヒルギスは動かない。
どうしたんだ。何か考えが?
「『フラッシュ』!」
「「「なっ」」」
眩しい。
ランドリアさん含め、ヒルギスを見ていた僕もガードンも同時に目をつむった。
いつの間にスキルを使えるように?
何も見えないまま気づくと倒れる音。
なんとか目を開けると、ガードンがその場で倒れていた。
続く三戦目。
「始め!」
僕の掛け声とともに、マジュナが何かを唱え始めた。
「『ファイアボール』!」
「グアアアアア!」
今度はマジュナが魔法を使い、ガードンが叫びを上げながら敗れた。
みんな、特訓は無駄じゃなかったのか。
しかし、ガードン……。
ガードンは、ランドリアさんに連れて行かれた。
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