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91 中村さんの恋愛事情

 お母さんと二人で、中村さんからお相手情報を搾り取りました。


 自慢話や惚気話などで簡単に話してくれるかと思ったんですが、中々の抵抗でした。お母さんの援軍が無ければ撤退も止む無しだったかもしれません。しかし、そこは流石はお母さんです。堅牢な中村さんの抵抗を、言葉巧みに解きほぐしていきました。


「ほら、小母さんにとっては、良子ちゃんも自分の子供みたいなものでしょ? やっぱり色々と心配になっちゃうの。悪い虫に引っかかっちゃわないかって」


「悪い虫何て、春日さんはそんな人じゃ無いと思います。いつも朗らかな感じで、患者さんとかの評判も良くって、特に高齢の女性達には人気が高いんです!」


「あら、そうなのね。それで、どういう切っ掛けでお付き合いする事になったの?」


 前に聞きましたが、中村さんにとって私のお母さんは理想の母親らしいです。

 今もですが幾度となく鈴木家に生まれたかったと発言していますし、私どうこうというよりお母さんの信用が天元突破しています。そんなお母さんが物悲しそうに尋ねた事に、中村さんが答えないはずが無いんですよね。


「あの、えっと、まだお付き合いとかしている訳じゃ無くって。優しそうで良いなぁって感じで」


「そうね。男の人は、何と言っても優しい人じゃないとよね」


 お母さんが少しずつ聞き出しています。女性は自分の意見に同意してくれると口が滑らかになりますから。やっぱり同意して貰って少しでも安心したいですからね。


「私より2歳年上なんですけど、結構苦労しているみたいなんです」


「あら、そうなの?」


「お父さんを早くに亡くされてて母子家庭で、4歳年下の弟さんもいて」


「あらあ。家族を支えているのね。まだ若いのに大変ね」


 強固な牙城も蟻の一穴では無いですが、崩れ始めると脆かったですね。それはもう、ポロポロと出るわ出るわ、乙女の妄想と言いますか、思いっきり色眼鏡掛かってますよね? っていう感じの惚気話。


「そうなのね。ちょっと良い感じなのね」


「はい! 彼は理学療法士なので患者さんとの事で話す事もあるし、時々昼食も一緒にしてて」


 うん、まだお付き合い未満という感じでしょうか? 仕事柄というのもあるのでしょうが、年齢的にも中村さんより年上で、研修医として現在働いている整形外科と、その男性が働いているリハビリテーション科では患者さんの状態などの打ち合わせで頻繁に交流があるそうです。


「良さそうな人なのね? でも、男の人は慎重に選ばないとよ? おばさんみたいに後で後悔しないようにね?」


「え? おばさん後悔されたんですか! え! すっごく幸せそうなんですけど!」


 中村さんにとっては理想の夫婦に見えるみたいですからね。お母さんは笑顔を浮かべていますが、色々とあったんですよねぇ。


「あら、結婚生活ってそう簡単じゃないのよ? 今まで他人だった者同士が一緒に暮らすんですもの、お互いの常識のぶつかり合いなんかもあるわね」


「確かにそうですよね。何となく判ります」


 そこからは中村さんとお母さんで、結婚における闇のようなお話が?


 あれを子供達に聞かせながらも早く結婚しろは理不尽では? まあ、藤巻君とのお付き合いに於いて舞い上がらなくて良かった要因の一つがお母さんの体験談でしたが。


 中村さんが自分の家に帰って行った後、私は藤巻君に連絡を入れます。

 やっぱりお相手がどんな人かは気になりますよね? 面識が無いですし、中村さんってやっぱり箱入りで夢見がちな所がありますし。


「うん、人数が多いし、関係がない部署の人は判らないとは思うけど。うん、坂崎君辺りに聞いてみてくれる? うん、うん、お願いします」


 棚田医大は医療従事者の数だけで3000人を超えます。その為、関係のない診療科の人と面識が欠片も無いなんて事は普通にあります。その為、一応藤巻君に聞いてみたんですが、やっぱり知らないとの事でした。


「どう?」


 電話を終えた私に、お母さんが尋ねて来ます。お母さん的にもやっぱり心配なんでしょう。


「やっぱり面識はないって。だから顔の広そうな人に聞いてもらうようにした。まあ、藤巻君ってそもそも興味のない人とか覚えないし。人付き合いが良い方じゃないから」


 何方かと言えば研究職の方が向いているんじゃないかって思うんですよね。

 ただ、意外な事に本人が町のお医者さん希望なんです。あれで割と直接人に感謝される事とかに憧れがあるみたい。藤巻君のお母さん曰く、小さい頃の体験が起因しているみたいですが。


「それはそうと、理学療法士さんってどういうお仕事なの? 看護師さんとは違うの?」


 うん、今の時代だとまだ余り馴染みが無いのかな? ここ最近は個人経営の整形外科も増えてきて、リハビリを担当してくれる理学療法士さんは馴染みになって来ていると思っていたんだけど。


「ほら、腰とか足とかが痛くて整形外科に行って、診察の後ストレッチとかやってくれる人が居るでしょ? あの人達ってちゃんと国家資格を持っている理学療法士さんだからね」


「あら、整体師さんとかとは別なの?」


「うん、全然違うし、そもそも理学療法士は国家試験。整体師はそもそも資格とかないから注意が必要だよ。あ、あと柔道整復師や按摩マッサージ師だったっけ? あっちは国家資格だったはず」


 意外と知らない人が多いと思うんですが、整体師って資格が無いんですよね!


 だから、ある意味怖いのです。


 場合によっては余計に悪化してとか有りそうですよね? 勿論、昔から営業されている腕の良い整体師さんとかもいるのでしょうけど、資格ってある一定基準の目安になりますよね?


 で、理学療法士さんと医者で比べると、だいたい医者の方が高給取りですよね。

 収入面などで差が出ると夫婦間でギクシャクとか有りそうかも? もっとも、それもすべて外野からの偏見でしかないとは思いますが。


「良子ちゃんには幸せになって貰いたいものね」


「中村さんにはって、あれ? 実の娘達は?」


 思わず茶化す様にお母さんに尋ねると、お母さんは思いっきり笑い出しました。


「貴方達は、こっちの心配なんか欠片も気にせずに自力で幸せになりそうだもの。良子ちゃんの様にそういった面での心配は無さそう」


「え~~~、そんな事無いって。お姉ちゃんだって前世では結婚失敗してるし、そもそもお母さんが失敗しているじゃん! その血が私達にも流れてるんだよ」


 実際の所、お金という面だけを見れば私達は安泰なんですよね。ただ、結婚するとして、そのお相手次第では色々と厄介になる事もありえるかも。其れだけでなく、大金を持つと人って人格が変わったりするって聞きますから、結婚後にも問題点がですね。


「良子ちゃんにも言ったけど、何事も焦らない事よ。心に余裕がない中での判断って、最善を選べていない事が多いと思うわ」


「何となく言いたい事は分かるけど。でも、中村さんは恋愛に憧れすぎてるとこあるから、どうしても心配しちゃうんだよね」


 ハッキリ言って、悪い男にコロッと騙されちゃいそうな印象があります。独り立ちをしている24歳の女性に失礼な事かもしれませんけど、言ってまだ24歳なんですよ。社会経験という面ではまだまだヒヨコです。


 そんな話をした翌日、藤巻君は無事に坂崎君に情報収集依頼をお願い出来たそうです。その時の話を馴染みのレストランで聞くのかって事ですが、一応周りに配慮して個室をお願いしました。


「今度、坂崎に飯を奢れって言われたので、費用負担宜しく」


「了解、藤巻君の分も奢るから、その分しっかり情報集めてね!」


 まあ、依頼料としては妥当なところ? 二人分の飲食代なんて余程のお店に行かなければ知れていますし。藤巻君の事だから例の焼肉屋さんに行きそうですが。


 藤巻君とは付き合い始めて幾度となく食事に行ったんですが、あまりにも飲食店のレパートリーが少ないんですよね。まあ、真面目に学生やってたらそんな物かもしれませんが。


「でも、何か色々な事を疑っちゃうってしんどいね。昔はもっと素直に恋愛そのものを祝福してあげれた気がする」


 恋に恋するって言いますけど、それだって良いと思うんですよね。勿論、付き合ってから性格の不一致で別れるとかあるんでしょうけど、誰かを素直に好きになれるって重要だと思います。


「う~ん、まあ、そうなのかな? でも、僕だったらリスクも考えるよ?」


「うん、何となく判る。藤巻君ならそうだよね」


 藤巻君は、どちらかと言うとリスクを重視しそうな所があります。私に告白したのだって、このままだと国試に影響を及ぼしそうだって思ったかららしいです。


「勿論、メリットだって考えるし、そもそも好きになる事が前提だよ? 僕だって好きでもない人に告白はしない。それに、告白するかどうかで結構悩んだ」


「う、うん。ありがとう」


 私は、思いっきり照れてしまうんですが、藤巻君ってあまり照れるという事がないんです。思った事をそのまま口にしますし、疑問に思えばすぐに口に出します。


 そんな藤巻君が、告白前に悩んだっていうんだから驚きですよね。


「今も思うけど、振られてたら国試落ちてたかもしれない。それくらい色々と考えたし悩んだ」


「うん、そこはチャレンジャーだと思った。告白するなら国試の後の方が良いんじゃないのって」


 何か話している内に、話が段々とズレて行ってない? ただ、ここで私から話を切るのも変に思うかもって考えるとですねぇ。


「まあ、坂崎ならある程度は情報がはいるんじゃないかな。友人層も広いし、そもそも僕だと情報集めは無理だから」


 まあ、私が棚田医大で働いていたとしても無理でしょう。在学中に色々と騒動に巻き込まれた事もあり、私ってそこそこ有名人らしい。特に、中村さん絡みの話題では、例の一億円がねぇ。


「あ、そういえば中村さんもちょっとした有名人だよね? ほら、お父さんとの確執とか、事務局での事とか、そう考えると変な勘違いで中村さんに目を付けたとかは無いのかも」


「まあ、僕らは同期でもあるし。ただ他の学科や年齢が上だとどうかな? そこまで情報が入っているかな?」


 想像で話をしていても意味は無しですし、結局は坂崎君の交友関係から集まるであろう情報頼りになるのでした。

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― 新着の感想 ―
理学療法士の良いところは医者より残業が圧倒的に少なくて定時帰宅も可能と言うところかな?勿論人によりその分野での研究したり発表したり他の病院と掛け持ちしたりと精力的な人もいますけどね。 まあ入院中緩めの…
自分から家庭の事情や苦労を語ってくるタイプの人間だとしたら、ちょっと怪しいかなぁ。 周囲としては心配せざるを得ないかも
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