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100/100

100:私の事と家族の事?

 家に帰ると両親とお祖母ちゃんのみならず、お姉ちゃんと何故か美穂さんまでが待ち構えていました。


「何でお姉ちゃん達まで居るの?」


「そりゃあ愛しい愛しい妹様の報告を聞くため?」


「日向の付き添い?」


 私が思わず素でそう尋ねると、お姉ちゃんには真顔でそう返事を返されました。ただ、ニヤニヤしている訳では無く、真顔と言う所に悪意がぷんぷん感じられるのは気のせいでしょうか? 美穂さんは思いっきり苦笑を浮かべているので間違いでは無いはず。


「ご無沙汰してます。まずは椅子に座ってからで良いでしょうか?」


「うん、立ち話するのも何だし、座ろうか。ほら、お姉ちゃん達はそっち行って。そこはお父さんとお母さんの席!」


 私達の様子に藤巻君が苦笑交じりに尋ねました。そして、その言葉を受けて各々席に座りますが、邪魔なお姉ちゃん達はソファーの方に行って貰います。ブーブー言ってますが無視です。


「で~~~? 成果は~~~?」


「お姉ちゃんは黙ってて!」


 何かと茶々を入れようとしてくるお姉ちゃんを黙らせて、私達は両親に向かい合います。藤巻君も改めて姿勢を正し、お父さん達に頭を下げました。


「日和さんをお嫁に下さい」


「邦彦さんのプロポーズをお受けしました。まだ結婚自体は先だけど、結婚を前提にお付き合いする事にしました」


 藤巻君だけで、私は無言って言うのも変なので補足フォローを入れます。こういう時って実際どうなんでしょうか? 前世でも未経験な為良く解りません。


 ただ、そもそも既に外堀は埋められてるので今更反対はされないと思います。お母さんなんて早く結婚しろ! って言い続けていますし。


「駄目だ! 娘はやれん!」


「お姉ちゃん、馬鹿な事を言い出すのは止めて」


 一瞬の沈黙を破ってお姉ちゃんが馬鹿な事を宣いますが、そもそも私は貴方の娘になった覚えはありませんが?


「え~~~、お約束じゃん! お父さんが言うかと思ったけど言いそうにないから代わりに言ってあげたのに」


 思いっきり不貞腐れたような表情のお姉ちゃんの横では、美穂さんが自分の頭のこめかみを押さえています。うん、何か申し訳ない。


「まあ、日向は置いといて、おめでとうで良いのかな? 今更感はあるが、式とかは此れから決めるのかな?」


 お父さんは苦笑を浮かべて藤巻君に尋ねました。


「そうね。今更感はあるわねぇっていうか、貴方達今まで結婚前提のお付き合いじゃ無かったの? お母さんはそっちの方が吃驚なんだけど」


 お付き合いを始めてからそれなりには時間が経ってますし、藤巻家の人達とも会食とかしちゃってますからね。確かに今更っていう気持ちは分からなくもないです。


「一応、お試し期間中? 国試に向けて気が散らない様にだったっけ? 色々と考えちゃって集中出来ないから、お付き合いする事になった?」


「否定はしませんが、僕的には最初から結婚前提でってお願いしていました。ただ、日和さんなので」


「私だからってどういうことよ!」


 藤巻君が何とも言えない表情で説明してくれますが、意味が判りません。確かに最初に結婚前提と言われましたけど、その前段階のお試しを提案して同意してくれたのも藤巻君です。


「それでもお目出たい事よ。藤巻さんのご両親へのご挨拶はどうするの?」


「えっと、年末の帰省の時で良いかなって話し合ってて。結婚自体は初期研修が終わった5月のゴールデンウィークを目安に考えているから、まだ時間はあるでしょ? あと、結納をどうしようかって悩んでる」


「結納ねぇ。最近はどうなのかしら? でも、あちらのご両親は結納をしたいのでしょ? 前にお話しした時も、藤巻さんの御婆様も楽しみにしているって言ってみえたわ」


 今年の5月に藤巻君のご両親が名古屋に来られて、家族で会食をしたんです。一応、息子さんの就職祝いを兼ねてという事でしたけど、やっぱりメインは両家の顔合わせでした。


 その際にですね、結婚式は兎も角として結納くらいは藤巻君の実家と言うか、本家で出来ないかって相談を受けたんです。その時は、まだ結婚も決まってないのに早いよって藤巻君がご両親を諫めたんですが、あちらのお婆さんが楽しみにしているみたいなんです。


「僕的には、本音を言うと祖母にはお世話になっているので、もし可能ならお願いしたいと思っています。ただ、往復の時間を考えれば一泊二日でないと厳しいと思うので、そこは要相談で」


 話を聞いていた藤巻君はそう言ってくれますが、結婚式自体は交通の便も考えて名古屋駅周辺か、名古屋の人あるあるの金鯱ホテルかで考えています。その為、結納は藤巻家の意向を反映しても良いのかとも思っています。


「そうねぇ、旧家は色々とあるんでしょうし、ご親戚の皆さん全員を式に呼ぶわけにはいかないのでしょ? それなら、結納くらいは藤巻さんのご実家でってなるわよねぇ」


 結婚式に呼ぶ人数の問題ではなく、藤巻家の家業の兼ね合いがあるんですよね。前にも言いましたけど、牧場という物は年中無休ですから。


「お母さん達は比較的時間に自由があるでしょ? 近くに温泉もあるらしいし、宿泊は近くの温泉で泊まればいいかなって。ただ、問題は私達がそうそう都合よく休めるかっていう所かなあ」


「日和もだけど、私も休みが合うかって所も気にしてよ! 前回の顔合わせって私は出席できてないんだから」


 そうなんですよね。藤巻君のご両親が名古屋に来ていただいた時にお姉ちゃんは仕事で参加できなかったんです。ただ、結納の時って姉も参加する物なのでしょうか?


 その後も、家族みんなでワイワイと話を進めます。ここら辺の説明は私に任されていて、やっぱり藤巻君より私の方がお母さん達も色々と尋ねやすいですから。


「ほんと、日和ちゃんがもう結婚なのねぇ。時が経つのは早いねぇ」


 今まで横で聞いていたお祖母ちゃんが、私達をニコニコ顔で私達を見ています。お祖母ちゃんにはそれと無くお付き合いしている人が居るとは話をしてありましたけど、結婚式とかの話題になるのは驚きますよね。


「お祖母ちゃん、ちゃんと健康に気を付けてよ! 私達の結婚式に出て欲しいんだから」


「そうだねぇ、頑張らないとだねぇ」


 そもそも、お祖母ちゃんの協力無くして今の状況だってありませんでしたからね。何と言っても最初の原資をお祖母ちゃんが二つ返事で貸してくれなかったら投資すら儘ならなかったです。


「いよいよ日和も家を出るのねぇ。お母さん、だから安心してこっちに来ても良いのよ? 夫婦二人だけだったら毎日喧嘩する事になりかねないわ」


「ちょっと! まだ式まで一年以上あるんだから! でも、お祖母ちゃん、安心してこっちで暮らしてくれて良いよ? っていうかお祖母ちゃんがこっちに居てくれる方が安心出来る」


「あ、それは私もだから。ここなら私も隣で暮らしているし、何と言っても医師が身近に二人もいるんだよ! こっちで暮らそ? お母さん達だけだと喧嘩ばかりしそうだし」


 私達はお祖母ちゃん引き留め作戦を敢行する。でも、本当にこっちで一緒に暮らして欲しい。


「そうねぇ。畑とかも心配だけど、そうだねぇ。一緒に暮らすのも悪く無いのかもねぇ。お前も昔から気が強いしねぇ」


 お祖母ちゃんがお母さんの方を向いて何とも言えない表情を浮かべる。


「え?」

「え?」


「ちょっとお母さん!」


 お祖母ちゃんの思わぬ発言に私とお姉ちゃんが思わず声を上げました。そして、お母さんがすかさずお祖母ちゃんの発言を止めます。ただ、その時お父さんは何とも言えない表情を浮かべていました。


「おやまあ、上手く子供達には隠してたのかねぇ。ほほほ、凄いねぇ」


「お・か・あ・さ・ん?」


「おやおや、歳をとると口が軽くなってしまって駄目だねぇ」


 何かお母さん達が言い合っていますが、聞く限りにおいてはお祖母ちゃんが優勢? もっとも、優勢だからと言って何かある訳ではありませんけど。


「でも日和が遂に結婚かあ。早ければ再来年の5月? そっかぁ。思ってたほど余裕ないなあ」


「え? まだ一年半くらいあるし、余裕だと思うけど? 式場とかの予約は空き次第だから聞いてみないと判らないけど、此処が良い、此処じゃないとって拘っている訳じゃ無いし」


 人気の結婚式場によっては、一年半後でも予約一杯とかありそうです。でも私達にそういった拘りはないですから、空いて無ければ他のホテルとかでも問題無いかな。


「うちの家族達も名古屋の事は詳しくないし、恐らく何処になっても気にしないと思います。何なら熱田神宮とかでも良いかも? 何せ有名ですから」


 うん、確かに有名ですね。ただ、熱田神宮となると神式になっちゃうし、ウエディングドレスが着れないのがなあ。せっかくだから着たいですよねウエディングドレス。


「あ、違う違う、そっちじゃなくて。ただ、妹に先越されるのも何だし、私も結婚を早めようかなって」


「え? どういう事!」


 何やらお姉ちゃんが変な事を言い出した。私は慌てて美穂さんを見るけど、どうやら美穂さんは発言の意味を理解している? まったく驚いたような様子が無い。


「おや、日向ちゃんも良い人が居るのかい。めでたいねぇ」


「日向、お母さん聞いてないわよ!」


「あ、あ、あ、どういう」


 お姉ちゃんの突然のカミングアウトに私達はパニックです。当の本人はニヤニヤと笑っていますが、これは狙っていたのでしょうか?


「いやねぇ、冗談に決まってるじゃない。まさか日和に先を越されるとは思ってなかったから、ちょっと意趣返し?」


 ケラケラとお姉ちゃんは笑います。お母さん達は何やら文句を言っていますが、私は美穂さんの表情をジッと見詰めました。そして、私と視線が合った美穂さんは、一欠けらの邪気も感じさせない綺麗な笑顔を浮かべて私にひらひらと手を振ってくれました。


「あ、や、し、い! 絶対に何か隠しているでしょ!」


「あら? 別に何も隠していないわよ? いやあねぇ」


 お姉ちゃんは飄々とした表情を浮かべていますが、それこそ怪しさ満点です。私はソファーに並んで座っている二人の間に体をねじ込み、美穂さんの両手をとりました。


「美穂さん。で? いつカミングアウトしたんですか? 我が家は比較的理解があると思いますよ? 薄々っていうか、思いっきりそうじゃないかって思ってましたし。おめでとうございます?」


 美穂さんに視線を合わせ、私は真顔で確認というかお祝いの言葉を述べました。


「ぶふぅ! え? そっち来た! 流石日和ちゃん! う~ん、そっかぁ。見抜かれちゃってたかあ。まあ、私も日向も良い歳になってきたし、そろそろ観念しないとって、痛ぁ!」


「ちょっ! お姉ちゃん暴力反対!」


 徐にソファーから立ち上がったお姉ちゃんが、私と美穂さんに思いっきり拳骨を落としました。


「何馬鹿な事を言ってるのかなぁ? で? 美穂は何を観念するのかな?」


 正に仁王立ちです。両手を腰に当てて私達を睨みつけますが、そもそも話をはぐらかしたのはお姉ちゃんですよね?


「もう、で? お姉ちゃん。違うなら何を考えてるのか教えてくださいな!」


「う~~ん、日向が私で良いって言うなら考えちゃうよ? 何せ同棲年数も長いですし?」


「同棲って言うな! 同居でしょ同居!」


 うん、美穂さんは思いっきりお姉ちゃんを揶揄う気満々っぽいけど、恐らく美穂さんもお姉ちゃんのお相手を知っているんだろうなあ。

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― 新着の感想 ―
前世の相手は中々のダメンズらしいからなあ。種まきだけしてポイやろか?それとも父親みたいにヒモ暮らしするのか?
まさか、前世の相手!?
医療関係者同士の結婚生活はなかなか大変らしいね。
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