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決戦①

 ブラート王に率いられたハルドリア王国軍が全軍を以て攻め込んで来たのは、帝都からイーグレットとグレン、オウルが戻って来た翌日の事だった。


 見張り用の尖塔からレクセリン砦の正面、魔法の届かないギリギリの位置(ブラート王はこう言う所が非常に巧い)に整然と並んだハルドリア王国軍を見渡しながら昨日戻ったばかりのイーグレットと携帯食を水で流し込みながらお互いの情報を交換した。

 イーグレットは帝都で商会の拠点となる建物を購入し、人脈作りの為に貴族や商人などの有力者との顔つなぎに勤しんでいたそうだ。

 このレクセリン砦に戻る際にも大量の物資を運んで来てくれたので、食料や武具、矢玉なども十分に余裕がある。


「俺の方はこんな物だな。特に変わった事はしていないが、商人としては今が面白い所さ」

「あら、それならこんな最前線に戻らなくても帝都に残った方が良かったんじゃないの?」


 私が揶揄う様に問いかけると、イーグレットは肩を竦めて苦笑いを浮かべた。


「揶揄うなよ。今更放り出したりしないさ。

 帝国でここまでの下地を作れたのはエリーのおかげだからな。商人としてそんな不義理はしないよ」


 戯けるイーグレットに笑みを返した私の耳に地響きの様なハルドリア王国軍の雄叫が轟いて来た。


「始まったわね」

「ああ、俺達の出番も直ぐに来るだろう」


 私達は来る決戦に向けて体を休めるのだった。



 ◇◆☆◆◇


 ハルドリア王国軍が支配している都市の元代官の屋敷、現在はブラート王が残した文官が統治していた。

 都市に到着したアデルは、直ぐに文官に都市を解放してブラート王とフリードを征伐に向かう自分の軍に加わるように命令した。

 その命令に戸惑う文官を背後に引き連れながら、代官の屋敷の廊下を歩く。


「お、お待ち下さいアデル殿下⁉︎」

「邪魔をしないで欲しいな」

「しかし、ブラート陛下に……」

「父王は乱心された。此度の帝国侵攻は条約に反した義の無い暴挙だ。

 僕はハルドリア王国の女王として乱心した父王を討つ。

 既に王都で諸侯の同意を得て戴冠を済ませている」

「それではクーデターではないですか⁉︎」

「そうだ」


 文官が息を飲む音がやけに大きく聞こえた。

 思わず足を止めた文官に、アデルは振り返り問う。


「君は何方に付くんだい?」

「何方に…………」

「ブラートに付いてこの大儀なき侵略を続けるのか、僕に付いて共に平和を求めて戦うのか。

 思案する時間は無い。今すぐ決めて」


 覚悟を決めたアデルの瞳は一切揺るがない。

 まだ幼さが残るアデルだが、文官はその堂々とした振る舞いに確かに王としての姿を見た気がした。


 悩んだのはほんの数秒、文官はその場に跪くと臣下の礼を取るのだった。

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