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因縁①

 私は再び神器を作り出す。次の神器は【怠惰の魔導書】。


「冥府に座する支配者よ 悪夢を体現する闇の眷属よ

 我、契約に従い死せる肉体を捧げる【召喚:悪魔】」

「っ何⁉︎」


 目の前に転がる4号の死体を贄に悪魔を召喚した。

 悪魔はその全てが人間にとって敵対的な存在では無い。

 あの伯爵二位の悪魔の様に人間と敵対的な悪魔以外は積極的に人間と関わろうとしない為、悪魔は邪悪な存在だと思われているのだ。


 4号の死体が消えて代わりに現れたのは細身でスラっとした体躯でモノクルを掛けた知的な雰囲気の紳士だった。

 両のこめかみから伸びた山羊の様な角を持つ悪魔だ。

 召喚された悪魔はキョロキョロと周囲を見回し、私の姿を認めると、胸に手を当て恭しく礼を取る。


「これはこれはエリザベート嬢、お久しぶりですね。

 お会い出来て光栄で御座います」

「お久しぶりですわ、リスティアード卿。

 それと私、名を改めましたの。

 コレからはエリーと呼んで下さいな」

「畏まりました、エリー嬢」


 敵国の兵士に囲まれていると言うのに、私とリスティアードは、まるで貴族の夜会での一コマの様に優雅に挨拶を交わす。


「それで、此度の召喚はどの様な御用件で御座いましょうか?」

「リスティアード卿の御手をお借りしたいです」


 私がジーク宰相達に視線を向けると、リスティアードも納得した様に頷いた。


「成程、承知致しました。

 しかし、わたくしはあまり戦闘に長けている訳では有りません。見たところかなりの強者揃いの様ですし」

「勝つ必要は無いですわ。

 私があそこの銀髪と戦う間、邪魔をさせないで欲しいのです」

「時間稼ぎですか。なら問題有りませんね」


 リスティアードとの相談を終えた私はハルドリア王国軍に向かい合う。

 彼らは悪魔であるリスティアードを警戒している様だ。

 ハルドリア王国の精鋭と言えど、悪魔との戦闘経験がある者は少ないだろうし、それすらも恐らくは悪魔が操る傀儡であるレッサーデーモン、良くて爵位を持たない悪魔だろう。


 リスティアードが一歩前に踏み出し、優雅に腰を折る。

 儀礼に則った丁寧な礼だ。


「お初にお目に掛かります、皆様方。

 わたくしの名はリスティアード・サンゼルマン。

 魔界にて子爵四位の位を賜っております」


 リスティアードの言葉に私はふと思い至る。


「あら、リスティアード卿、確か貴方は男爵だったのでは?」

「はい、有り難い事に最近陞爵致しました」

「まぁ、おめでとうございます」


 照れ臭そうにはにかむリスティアードに祝福の言葉を贈る。


 だがハルドリア王国軍の一部の兵士達はその言葉に警戒を強めた。

 彼らは知識としては悪魔を知っているのだろう。

『悪魔の陞爵』と聞いて警戒したのがその証拠だ。

 悪魔にとっての陞爵とは、人間の様に功績を挙げたり、王への忠誠心を見せたりしてなる物ではない。

 悪魔が陞爵する方法は1つ、自分より上位の悪魔を倒す事。

 それを知っている兵士達は、先程のリスティアードの戦闘は得意では無いと言う言葉を信じる事なく剣を構えている。


「では、エリー嬢。兵士達はわたくしにお任せを【召喚:下級悪魔】」


 リスティアードは詠唱も無く、空中に魔法陣を描き出すと、大量のレッサーデーモンを召喚した。


 その光景を横目に、私はフリューゲルを構えてジーク宰相に向かって駆け出した。


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