第八話 行進
「シアハさーんちょっと待ってってくださいねー。」
「大丈夫ですって」
ここ、古代都市はあまりに古いものであふれている。それゆえに、壊れた住居や、荒れた道路、植物に飲まれた大きな建物など、とにかく足場が悪い。身体能力で団長とルスベリー先輩と劣っているためちょっと足を滑らせただけではぐれてしまう。
今もこうしてルスベリー先輩がすぐさま気づかなければ一人さみしく泣いていたところだろう。動いたら怪我しそうな不安定な足場のところで右往左往していた私にどんどんルスベリー先輩が近づいてくる。このままだと、二人とも怪我してしまうから何とか一人で抜けたいところだった。
「ちょっと止まってってくださいね」
がれきを華麗に飛び回りながら、私のほうに近づいてくる。これどう考えてもぶつかる勢いで近づいてくる。ビュンビュン飛び回りながら突っ込んでくる。
「ちょっと、やばい」
「動かないでくださいね」
ぐんぐんとこちらに突撃して、かっさらうように私を持っていく。その衝撃で気絶しそうになるのと同時に、元居た足場が崩れ去るところを見るに、なんであんな場所に立っていたのだろうと反省してしまう。強引な助け方だけど、何とかなった。
「ふう、これで一安心ですね。」
「安心ですけど、もうちょっと手心があるといいなと強引すぎません?」
「あんなところにいるシアハさんもですよ。」
「それはそうだけどさあ」
ルスベリー先輩と話していると、誰かが近づいてくる音がする。おそらく団長だろう。足音ともに鎧がぶつかるような甲高い音がする。そもそも、こんなところにいるのは灰生物から逃げたからなんだよね。団長が倒してくれたからもう気にも留めていないが。
案の定、足音の正体は団長でこちらに近づいてくる。
「シアハ、無事だったか。次からはルスベリーにシアハを守ってもらおうか。」
「はーい、団長の攻撃が当たらないようにすればいいんですね。」
「ルスベリー先輩、次は優しくしてくださいね。」
ニコニコのルスベリー先輩に注意するように話す。もう一回、あのボディブローみたいなの食らったらひとたまりもないから。団長も何かあったかを察したようで、苦笑いをしていた。
「まあ、守る方法はルスベリーに任せる。さて、そろそろ、私たちが向かうべき場所につく。」
「古代文明が残した碑石を読みに行くんですね。」
「そうだ、なにか有益な情報が落ちていないかを確認するためだ。」
二人とも真剣そうな顔で話始める。さっきまでの空気が霧散して、一気に圧が出る。気落とされないように引き締めて話を聞く。
「そうだな、話しながら行くか。」
そう言って、団長は歩き始める。頭の中の地図が正しければきっとそろそろつくだろうから歩きながらでも間に合うだろう。
「今までの碑石はシアハが見た、警告文が一つ、」
「私の部隊が見つけた碑石が一つありますね」
「そして、閉ざされた扉をたたき割って見つけたものが一つ」
私が見つけた碑石に書いてあったのは、”奴を目覚めさせることは。すなわち国の終わりを示さん。”だったはず。これの意味があのキメラのことならいいんだけど。そうじゃなくて何かほかの凶悪な生物とか兵器とかが眠っていて自動反撃みたいなことしてきたら最悪だなと考える。どれも、ここに封じ込めればいいと一応考えておく。
「合計3っつですね。今回は私の部隊が見つけた碑石を見に行くんですっけー。」
「そうだ、何が書いてあるかは言ってからのお楽しみってやつだな。」
「そこに古代遺物のことが書いてあることってありますかね」
あの警告文のように、決して問題解決のためのことが書いてあることはわからない。もしかしたら、遊園地の案内みたいな変なことが書いてあることだってあるだろう。それでも、不確定要素を消せるのは非常にいい。あの碑石がもしかしたらとかそんなことを考えないで済むのはとても精神衛生上いいだろう。
「それは、誰にも分らないが、ヒントでも、そうでなくてもいい。とりあえずそこにはないということが分かればいい。」
「そこにさく人が少なくなりますからねー。」
「そうですよね。」
そんなことを話していたら渦中の碑石があるところに着いた。建物は崩落しており、すでに碑石のみがあるようだった。そこは割と、生物がいたような土の色をしており木で囲まれていたのではないかと思える。
全員で近づいて、その碑石を読むために私は前に出る。とても大きく、様々な名前が書いてある。これはもしかすると。
「ええと、」
そこに書いてあったのは、”造物討伐戦戦死者ここに眠る”。大きく目次のように書いてあり、その下には様々な名前が立ち並んでいる。死んだ人があまりにたくさんいるのか、すさまじい数死者が出たのだろう。それと造物とは何だろうか。古代兵器?それとも、生物?何かはわからないが人間と敵対している何か、それとも敵国の何かのよる戦死者がここにいるのだろう。
「造物討伐戦戦死者ここに眠るか。」
「造物?って何ですか。」
ルスベリー先輩の疑問は当然だろう。なんせ、私も分からないから。ただ、直感的に生物と断定してしまう。兵器で死んだとしたら、造物討伐戦ではなく、敵国との戦争であるということが前提に書いてあるはずだから。それとも、内戦?様々な可能性が駆け巡り、思考の波に押されてしまう。
「造物か、何かわからないが大量殺戮が起こったことは間違いないだろう。もしかしたら、古代文明が崩壊した原因の可能性があるかもな。これが兵器場合だが。」
「何かは誰も分かりませんか。でも、死者が眠る場所なのは変わりないです。すぐに帰りましょう。あまり騒ぐのはよくないです」
「そうだな。シアハ、考えるのもいいがもうそろそろ帰るぞ。」
肩を叩かれて、かつ話しかけられてやっと現実に戻った。考えた結果は私は生物だと思ったのだが、まあ答え合わせはいつかできるだろう。そう思い、団長とルスベリー先輩についていき一度ベースキャンプに帰ることになった。
ベースキャンプを目の前にして、どこかそわそわした警備員が待っていることに気付いた。その警備員は私たちを見るや否やすぐさま駆け寄って話始める。どこか焦りが隠せていないようで、恐怖に落ちているようで。
「報告!、アルヴェイン所長から成果ありとのこと、次に緊急事態発生、救都に灰生物とキメラで構成されている津波が発生。以上です、中で皆さまが待っております」
彼から聞こえたのは絶望の報告であった。同時に、希望の報告もある。ここを耐えることができればより強固になれる。そう思わなければ頭がおかしくなりそうになるような報告だった。




