第二十話 発見?
「つかれた~」
そうガベーラントは地面に横たわってしまい服を汚してしまう。それを気にすることが何ほどに疲れているのではと思った。あれからしばらく歩き回ったが思った以上に民家が多く、一度ベースキャンプに戻るべきではと思ってしまう。同じ景色ばかりで飽き飽きしてきたところだし。
「シアハさん。疲れていませんか。」
「大丈夫まだ動ける、よ」
言い淀むように返事をしてしまう。実際疲れてはいるけどまだ何も見つけていないことが私を動かす。これほど、時間をかけたのに何も得ることができないのはまずいと思う。何より、私が成果を持ち帰ることができなければ、救国都市は手放す可能性は否定しなければならない。
うつむきながら考えていると、ふとほっぺを持ち上げられて強制的にまえを向くことになる。
「だめですわ。疲れているときは休みませんと。」
そう言って、彼女は私のほっぺを持ち上げながら胸へと持っていき、抱きしめてくれた。その温かい心に疲れが取れるようだった。少し眠くなるが、さすがにこんな場所で寝るわけにはいかないと思う。
「ありがと...アネモネ。ちょっと楽になったよ」
「なら一度帰って寝ませんとね。」
言い返す言葉はない。やっぱり帰って寝るべきなのかなと思う。洞窟の中なのか今が何時わからない。空を見上げてもただ真っ黒な虚無が広がっているだけで何も得ることはない。そうしていると寝ていたはずのガベーラントが民家の屋根にいた。見たところ見渡しているようにも見えるし何か筒のようなものを持っていた。
「おーい。そろそろ帰るぜ。帰還命令が出ているからな。」
そう言って彼は民家から降りてきた。器用に民家の突起のようなところや窓枠をうまく使って。自由自在な身体能力が彼を上に持って行ったと納得させるほどに華麗だった。
「早めに帰らないと捜索部隊が出る羽目になるぜ。だから早く帰ろう。」
「そうですわね。シアハさん歩けますか?」
「うん、全然いけるよ。」
迷惑をかけまいと虚勢を張る。ちゃんと一人で立っているし、疲れているようには見えないはず。胸を張っているが、彼らにはそう見えないっぽい。ガベーラントとアネモネは騙せ佐奈そうだった。
「シアハ。最初だから疲れるのは仕方ないって、ほら運んでやるから来な。」
ガベーラントはそう言ってしゃがんで背中に乗るように言ってくる。
「わたくしではシアハさんを運ぶことはできませんので」
「じゃあ、失礼します。」
申し訳なさそうにアネモネは言っているが、緊張が抜けてきたのか眠くなってきてしまった。私はガベーラントの背中に乗って運んでもらうことになった。揺られているときに眠くなって半分寝ている状態で運んでもらってちょっと申し訳なかった。
私が次に目にしたのは自分のテントの中であろう布が目の前に広がっている景色だった。あの後、寝てしまったのであろう。寝ぼけてまだ思考が定まっていないので、ふらついて危ないと判断して起き上がってからは何もしないようにしている。
だけど、本当に何もしないのは暇で仕方がないので持ってきた資料を読み直そうかなと思ったところだった。
だが、そとから何やら怒号のようなものが飛び出ており、救国騎士団の誰かと誰かが言い争っているように聞こえた。ものを破壊する音こそないがかなりの喧嘩が発展していると思われる。私は止めるためにテントの布に手をかけたところで外の景色を見て硬直してしまった。
「貴様ら帝国騎士団の意見には賛同できかねん。」
威圧感を出しながら、相手方と話をしているのはルスベリー先輩だった。そこまではいいのだが、相手が問題であった。まさかの帝国騎士団だったのだ。ただ、他国の人であればなんであれ、帝国騎士団となると話が変わってくる。彼らは事実上私を殺そうとしたのだ。もしかしたら、死体がなく私を探しているのではないかと考えてしまう。悪い方向に考え始めるときりがないがそれでもだ。
「話になりませんね。私たちは協力をしましょうよと言っているのです。」
高圧的な態度でルスベリー先輩と話し合っている彼は見たことないがきっと帝国騎士団なのだろう。
「残念ながら私たちと貴殿方は協力関係にありません。」
「だから言っているだろう。協力関係を築こうと。」
「それはあり得ませんね。」
互いに互いを信用していないことがよくわかる。距離も離れてしゃべっているし、周りに護衛がついていていつでもやりあうことが可能だぞと脅しているようにも見える。決して、建設的な話し合いなどはできそうになかった。
「はあ、ではこれではどうだ。貴殿らが見つけたものの三割を徴収する。代わりに、我々が安全を保障しようではないか。」
「あり得ないですね。不干渉で頼みたいところですが。」
「それでは後から来た我々が不利ではないか。」
「早い者勝ち。このルールを決めたのはどこの誰でしたっけ?」
「貴様!」
帝国騎士団側が剣の柄に手をかける。今にも抜刀して彼らと戦わんとしていて一触即発だった。ルスベリー先輩とその周りの人も武器に手をかけている。いつ、ここで争いが起こるかがわからない状況になっていた。
そうするといきなり帝国騎士団側のリーダーが手をおろして降伏のように両手を挙げた。
「仕方がありませんね。あなたたちのように目の前の獲物に食いつくような理性のない獣ではないのでここらで撤退させてもらうとしますよ。」
「それはありがたいですね。不干渉と行きたかったですがこの場を収めるだけでもいいでしょう」
帝国騎士団は背を向けて、周りの団員とともに帰っていく。ある程度、離れてルスベリー先輩や周りの攻撃が通らないところまで来た時になぜかリーダーは振り向いてきた。
「そうそう、噂によると帝国が処刑したはずの天使がまだ救国騎士団で生きているとのことでしたね。」
「それがどうした?」
「彼女を引き渡すと約束するなら我々は撤退しますよ。これは確実に遂行しますから。」
「!!こr.」
危なかった。絶対、「殺す」って言おうとしていたでしょ。隣にいたアネモネがとっさに口をふさいで冷静にさせたからよかった。だが、かなりルスベリー先輩たちの神経を逆撫でするような発言だった。人柱があれば私たちは納得しますよ、と言われてもそれに賛同する人間は少ないと思いたい。それに、ばれていないとは言え、恐怖で足が動かなかったもん。もしあの場に私がふらっと表れて、帝国騎士団にとらわれたら相当に厄介なことになっていたに違いない。
あいつらがどこかに消えていったのを確認した後に、まだキレているルスベリー先輩のところに行くことにした。一緒にご飯でも食べて気を紛らわしてほしいなと思う。テントの布を上げてさっきまで雨が降っていたであろう土臭い匂いを嗅ぎながら周りの人に聞きながらルスベリー先輩がどこにいるかを聞く。
皆が言う限り、
「あんなにキレるのは珍しい。」
「穏やかな人がキレると怖いってマジなんだな」
「信仰心が高まりますわ~」
とのことだった。一人なんだかおかしな人がいたけれどきっと大丈夫だろう。なんとかなるはず。やはりルスベリー先輩がキレるのは珍しいの一言に尽きる。ある程度ベースキャンプを回ったのだが、それらしい人物はいなく、曰く外に出て行ったと聞いた。
めったに夜には出ないのだが外に出てみることにした。ルスベリー先輩を探すためにね。どこにいるのだろうかと考えながらとりあえず道なりに歩いて居たらそこにいた。月明かりに照らされて、赤く光る抜き身の剣を手入れしている。垂れた前髪やその引き締まった体の美しさから見とれてしまうほどにきれいだった。
彼女は一瞬警戒態勢のようなものを取ったのだがすぐに私と理解したのだろう。おいでというように手招きをされたので私はそれに乗っかることにした。
「どうしたのシアハちゃん。もう、ご飯食べて寝る時間だよ?」
依然、彼女は剣の手入れをしながらこちらを見ている。さっきとは打って変わって冷静で、やさしさと尊敬が含まれたいつものルスベリー先輩だった。だからよけいに、あの時のことが脳裏に張り付いて仕方ない。
「心配だったですか?この言葉遣いを手に入れるのに時間かかりましたからね。頭が沸騰して切れてしまうとあまりていねいに対応できないんですよ。」
彼女はそう言いながら背を向けて、月に向かってしゃべり始める。その姿は哀愁漂う姿だった。何があったかまでは聞くことはできないけれど、ただ私がやるべきことはただ一つだけだった。
「ねえ、ルスベリー先輩?」
「なんですか?」
振り向いてくれた。話を聞く気はあるようだった。私は一度息を整えて、胸に手を当ててしゃべり始める。もちろん、ルスベリー先輩の顔を見てね。
「一緒にご飯食べましょう?ちょっとはすっきりすると思うんです。」
私がそういうと彼女は驚いた顔をしていて、ちょっと変顔にも見えた。そんなに珍しいことだったかなと思うのだが。
「もちろん行きましょう」
”こうして、人にご飯を食べようといわれたのはいつぶりでしょうか。”
かき消すような大きな声でもちろんいきましょうと言っていたのだがその後ろが小さすぎてなんて言っているかがよくわからなかったがおそらく飯に誘われたのが久しぶりとのことだからこんな感じのことでも言っているのではと推測した。
彼女は私の手を取って、ベースキャンプまで戻ることになった。今日は迷惑かけたり、帝国騎士団来たりしたけど明日はきっといい日になるといいな。




