第十六話 準備
あの後、ドークスさんから日程を聞いて、その間は準備にあたることになった。私が遠征ですることは古代都市の中にある施設や遺物がどのようなもので何をしたら危険かについてを確かめる役割になる。
今日から古代文明に関する本や資料を読み漁ってもいいと所長から許可をいただいたため、早めに部屋を出て図書館に向かっているところだった。
雨が降りそうな、湿った風が私の鼻をくすぐる。一応傘を持って行こうかと悩んだが、大丈夫だろうと楽観的に考えてそのまま図書館に向かうことにした。
研究所を追い越して、古臭く感じる建物に入ろうとする。意外にも、扉はきれいでもしかしたら改修されたのかもと考えられる。中に入ると、吹き抜けになっており、存分に本の匂いと私二人分あるのではと思うくらい積みあがった本棚たちが出迎えてくれた。
「すいません。古代文明についての文献ってどこにありますか?」
カウンターにいた司書さんに話しかける。司書さんは疑うような眼を向けてくるが何か納得したのか少し待ってくださいと言われて裏口に吸い込まれていく。
「すいません。お名前を聞いてもよろしいですか。」
「えと、シアハと申します。」
「すいませんでした。どうぞ、こちらへ」
突然、名前を聞いただけで私を案内してくれるようになった。なぜと思うが、多分、所長あたりが話を事前に通してくれたのではないかと思う。実際、疑うことは悪くないからね。司書さんについて、行きついたのはほこりが積もりあまり人が来ていないことがわかるどんよりとした場所であった。古代文明を好きに調べることはできないし、興味がない人が多いのだろう。
だけど、私や研究所にいる人たちは大勢とは違いここが宝の山のように見える。とにかく、何でもいいから読んでみる精神でその辺の本を手に取ってみる。その本は分厚く、くたびれていた。
「古代遺物基礎...うん...これにしようかな」
軽くページをぺらぺらとめくってみて中身を見てから決める。中に書かれているのは古代遺物がノームオイルを基軸として作られていること。ほかにもいろんなことが盛り込まれていること。と、既存の知識の情報しかなくてあまり役に立たなそうだなと思ってその辺に置いてしまう。
ちょっと奥に進んで、目についた本を取ってみる。
「ノーム生命体の精製?」
なんだか倫理に反するような内容だが好奇心には勝てなかった。中を読んでみると案の定、既存の生物にノームオイルを融合させて更なる生物に昇華させようという研究のものだった。これはここにおいていいのかと思ったが、そういえば司書さんに案内されなかったらこれなさそうな場所だったと納得する。
あまり、今回の遠征と関係なさそうだから一度置いて、ほかのところに行こうとしてしまう。そうしているうちに、だんだん時間がたっていき周りを見ていると床に置いた本でぐちゃぐちゃになっていた。けれど、まあ後で片づければいいやと思ってそのままにしてしまった。
そんな夢中になって本を読んでいた私の肩を叩く誰かによって現実に引き戻された。
「うひゃあぁ」
「シアハさん?これは何でしょうか。」
ぎぎと音が鳴りそうな首の回し方をするとそこには切れ気味のアネモネが散らかった本を指さしながらこちらを見ていた。まずい、後でと思ったのだが思った以上に散らかっている。言い訳はあまりにも遅すぎた。
「夕方になってもシアハさんだけ帰ってきていないと心配になってきてみたもののこれはどういうことか教えてくださいまし。」
「えっと、その。後で片づけようかなと思って...でもやる気はありましたよ。」
「ダメです。今すぐその本をもとの場所に戻して、片づけてから帰りますわよ。」
「はい...わかりました。」
あまりの剣幕にすぐに持っていた本を片づけて、周りにある本を片づけようとする。アネモネの言った通り散らかり具合が子供が遊んだ後みたいにひどく、さっさとやんないとご飯が食べられるか心配になる時間だった。それにしても、心配させるほどここにいたのかと時間感覚がおかしくなっているように感じたが集中してたしなと納得する。
「わたくしも手伝いますから。ほら、もっと手際よくやりなさいな。」
「はうぅ」
「全く、これじゃああいつとかわらないですわ。」
ここに初めて来たはずなのに私よりも丁寧で素早く本を片づけてくれるのはありがたすぎる。こうなるとまだ読みたかったなと思ったが、まあまた明日来ればいいかと思い片づけに専念せする。
「終わったーぁ。」
地面にへたれ込んでしまう。部屋は入ってきた時よりきれいになっており、ほこりっぽい部屋ではなくなっていた。きれいに片づけたから、これで明日も読み漁れるかなと思いながら、アネモネのほうを見る。
「ありがとうアネモネ。次は気を付けるから今日のことは秘密にしてほしいなーって。」
「仕方ありませんわね。シアハさんの癖は秘密にしておきますよ。」
「ありがと!!」
「ちょっと」
ふう、なんとかなったと思いながらアネモネに抱き着く。思った以上に私よりでかいし、背が高い。なんか、負けた気もするけど、散らかる癖があるのをばらされること...どっちもどっちか。そう思いながらアネモネのおなかに顔を埋めていると突き放される。さすがに恥ずかしかったのかなと思うけど、顔を赤くしているからあまり嫌いじゃなさそう。
「もう、仕方ないですわね~。お子ちゃまですか。」
そう言って私の頭をなでてくれる。なんだかお母さんのように見えてしまう。母親はきっといたのだろう。だが今は、その記憶すらないのだ。複雑な気持ちにさらされながらちょっとずつ恥ずかしくなって手をどけようとしてしまう。
「まあ、シアハさん戻ってご飯食べましょうか。」
「うん、そうしよう。」




