第27話、入会。
月明かりの深夜、砂乗船の甲板である。
砂上船はデザートデビルレイから逃げ切り、マナバッテリーを停止して、流動術式はとまっている。
砂の上にのっているような状態だ。
砂漠に暮らす者の不文律として、お互い過去や事情は詮索しないというものがある。
厳しい環境であっさりと全滅するからだ。
それとは別に、水や食料や装備は共有されるのが鉄則だ。
が、
「それは…黒曜石かい?」
ワイルダーキャラバンの商会長であるチャールズが聞いた。
「そうだ」
自分が黒曜石の刀を見せながら言う。
「ふう、これの価値……はわからないか」
チャールズがあきれるようにため息をついた。
「価値?」
シャル殿が聞く。
ガンドーラ台地の周りに山のように落ちているものだ。
「ガウ?」
ロボも不思議そうにしていた。
「それはな、”終末の黒曜石”と呼ばれるものだ」
「海砂のほとりに奇跡的に流れ着くものだ」
もう一人いた三十代の男性が言う。
確か、名前はオルソン、チャールズの弟のはずだ。
「その切れ味は金剛石すら切り裂くという」
実際にダイヤモンドのカットに使われている。
六十代の男性だ。
名前はアイク、この二人の父である。
その隣には、チャールズの嫁のキャリー。
そして、オルソンの嫁のメアリー。
アイクの嫁の、グレイス。
それから、チャールズの子供が五人、オルソンの子供が四人。
計、十五人がキャラバンの人数である。
「ふむん」
自分が話の続きを促す。
「大体、包丁くらいの大きさで貴族の館が買えるな」
「えっ」
「その大きさなら値段はつかん」
巨兵クラスの大きさに刀だ。
「小さな国くらいなら手に入るかもしれんな」
「じゃあ隠したほうが?」
「いや、誰も信じんよ」
「自分たちも目の前でデザートデビルレイを切り裂かなかったら偽物と思っていたよ」
「そうですか」
「あなた達は世間(下界)を知らなさすぎる」
「ほかにも、ガンド帝国の亜人獣人狩りのこともある」
遥か西方の強力な軍事国家、”ガンド帝国”。
自らを、”ガンドーラ王国”の末裔と言い、人類の守護者を名のる大国だ。
亜人や獣人を《《全て》》奴隷として扱うのが有名である。
砂漠にもガンド帝国の軍艦が派遣されているのだ。
「我がキャラバンに入会しないか」
「入会したら我らの家族だ、守ることができる」
「商売で砂漠のオアシス都市を回るから、旅をするという目的にも合うわよ」
チャールズの嫁のキャリーが言う。
「……どう思う」
「ふむ、徒歩で砂漠の旅は無謀か」
シャル殿だ。
「ガウ」
ロボがうなずく。
「わかった、入会させてくれ」
「うむ、デザートデビルレイを倒せるんだ歓迎するよ」
チャールズが腕を出した。
自分とシャル殿とロボが順番に握手をした。




