七章3
ビルとビルの間に破片が滑り込んだ。
まるで何かに誘導されているかのように、そいつはそこに滑り込んだ――僕は空中でバイクに逆噴射の急ブレーキを掛けて、その破片のところへとバイクを噴かせて突っ込む。
すると、そこには結界が張り巡らされていた。
その中に入ると探知不可能になる結界。
現に、入っていった破片が探知不可能となっている――バイクはそのままそこへと突進。魔卦銃で紡いだ攻撃系雷電魔爻術〈雷攻一式[デジンア]〉の紫電が直撃、それにより、結界が姿を保てなくなり、正六角形のプログラム塵となり飛び散り電子塵へと戻ってゆく。
バイクで突っ込むと、そこには三人の人の姿があった。
一人は破片を包み込んで回収しようとしている者、もう二人はそいつの警護のための戦闘員といったところだろう――その戦闘員の一人が舌打ちし、「見られたからには脳を焼かせてもらうぞ」と映画に出てくる悪役のような台詞を吐きながら攻撃してくる。
紡がれたのは――攻撃系火焔魔爻術〈火攻二式[メラルラ]〉。
それがバイクに直撃、盾となったバイクが弾けると同時にその後ろから魔卦銃で紡ぐ――攻撃系雷電魔爻術〈雷攻二式[デジンラ]〉のプラズマ弾とバイクの破片が、火焔魔爻術を放った術者たちに襲いかかる。
僕は迅速に決断した。
こいつらはブラックドラゴンを隠し持っていたテロリストの一員、もしくはまたそのようなところに売り捌こうとする外道だろうと――ならば、脳を焼かれても文句は言えまい。
魔卦銃の出力を最大にする。
すべてを弾丸に付加して、攻撃に特化させる。
素早く二人の間に這入り込み、まずは防壁が損傷した右の火焔術者の胸に二発、左から魔卦剣が振り抜かれるのをしゃがんで避ける。この距離だと魔爻術は使えまい。しゃがんだ姿勢のままそちらに三発同箇所に叩き込み、電子防壁に罅をいかせる。後ろからあ背中を斬りつけられる。激痛に耐えつつ、振り返ってそいつの胸倉を摑み、顎下から二発頭にぶち込んでやる。強制ログアウトとなったそいつの電脳は、多かれ少なかれ殺傷性のある攻撃でそうなったのだから、電脳の回路が焼かれていることだろう。その攻撃している背中に魔卦剣が突き刺さる。
ズブッ――――。
その血に濡れた剣先が腹から出ており、切っ先に魔爻術の気配――僕はそれでも冷静にその紡がれている魔爻術に割り込んで、それに過負荷を与えて自爆させる。鍔元にある薬莢が破裂して、術者は腕と胸、顔を損傷――僕が息も絶え絶えに振り返って銃を構えると、
「や、やめてくれ――カネで雇われただけなんだ。頼む、見逃し――」
その頭にダンッと強烈な一発を叩き込む。
それにより、そいつは強制ログアウトとなった。
電子塵へと還元されている仲間を見ながら、回収していた男が「くそ、くそ――あとちょっとだってのに!」と悪態をつきながら、魔卦剣を構えた。
まずいな。
腹部の出血で視界が霞む。
そのとき――
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「余と世界を分かちたい者は誰ぞ」
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その言葉とともに、その言葉を放った奴は目の前にいた回収していた男を腕で串刺しにする。
「貴様は違うであろう? 余を捕縛しようと目論む輩が、余と同格なわけがあるまい」
そういって斬り捨てて、こちらを見遣る。
「お主が、余と世界を分かちたい者か?」
その問い掛けに、僕は迷った。
だが――それは昔、父さんが問い掛けられていたものだと思い出した。
だから、僕は閃いたままに言葉を紡ぐ。
「あ、ああ、そうだ」
そう、これはゲーム内の遣り取りだ。
ラスボスであるブラックドラゴンは、勇者に向かってそう問い掛ける。
断れば戦闘に、受け入れればバッドエンドのエンディングへとなる。
だが、ここは現実だ。ゲームの世界とは違いバッドエンディングはない。
「よかろう。余とお主で世界を割譲しようぞ」
人化した魔術師のブラックドラゴンが嬉しそうに笑む。
そして後ろを向いて、「さあ、世界の割譲を――」と続くゲーム内台詞を言っている、その後頭部に――魔卦銃を据えて叩き込む。
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――一発!
――――二発!
――――――三発!
――――――――四発!
――――――――――五発!
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ブラックドラゴンは振り返る――が、そこには頭は跡形もない。
アポートシス弾による自殺因子により、完膚なきまでに滅殺するプログラムにより、ブラックドラゴンが電子塵へと還元されてゆく。
「残念だったな」
血をはき捨てて言い放つ。
「ハナからテメェとはフェアにやり合うつもりなんてないんだよ、クソ戯魔が」
もう一発叩き込むと――ブラックドラゴンは、完全に電子塵へと還元された。
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復讐は――終わったのだ。
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「ねえ、旭人君」
父さんの葬儀を終え、母さんの容態も安定した頃――久し振りに逢って二人して寝転がったときに、実加子は少し真剣な眼差しでこちらを瞶めていた。
沈黙のあとの開口。
少し前に僕は電戯士を目指すと告げ、猛反対されたあとの言葉は優しかった。
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「もし私たちが道を違えたとしても――お互いの道を突き進みましょう」
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本当は分かっていたんだ。
これが本当の別れの言葉だということは。
彼女が猛反対した理由――それは年の離れた従弟のお兄さんが電戯士になって間もなく、戯魔との戦いに敗れて亡くなったことが原因だという。
また失うのが怖かったから、と。
そのお兄さんが初恋の想い人だったから、と。
僕が無言のままでいると、実加子が僕の頭を包むように抱きしめてくれた。
「ごめんなさい。私は臆病者だから――だから、命を懸ける旭人君を見送り続けることはできないの。だって、いつ帰ってこなくなるか分からないから。でも――」
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私は幸せだったよ、ありがとう。
愛しているわ。ずっと――ずっと――――。




